Contents
国内の暴力
イドリブ県では、『ハヤート』(2月12日付)などによると、バーブ・ハワー国境検問所で、シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長らを乗せた車列が通過する数分前に、バスに仕掛けられた爆弾が爆発した。
『ハヤート』(2月12日付)によると、この爆発によって、7人が死亡、アフラール・プレス(2月11日付)によると、20人が死亡、数十人が負傷した。
その後、各紙はシリア人、トルコ人の死者が14人に達したと報じた。
アフラール・プレス(2月11日付)は、アブドゥルバースィト・スィーダー前事務局長の話として、爆発時に、サブラー事務局長らシリア国民評議会使節団が乗った車列は、バーブ・ハワー国境通行所に面するトルコ領内(ハタイ県レイハンル市郊外)を走行中で、反体制武装勢力の合同司令部とシリア国内で会合を行う予定だったという。
アサド政権による犯行かとの問いに対して、スィーダー前事務局長は「詳細は分からないが…、調査しなければならない問題だ」と応えたという。
一方、シリア国民評議会のアフマド・ラマダーン執行委員会メンバーは『ハヤート』(2月12日付)に対して、バーブ・ハワーでの爆発が、国民評議会指導部を狙ったものだ」としたうえで、「執行委員会のメンバーは全員無事だ」と述べた。
使節団は、自由シリア軍参謀委員会と会談を予定しており、ラマダーンらが国境通行所で出迎えようとしていた、という。
またラマダーンによると、シリア国民評議会使節団は、2月11日からシリア国内を回り、アレッポ県アアザーズ市、マンビジュ市、ジャラーブルス市などで自由シリア軍、現地の医療チームなどと会談を続けてきたという。
そのうえでラマダーンは「政府が爆破の背後にいる…。2日前にも(シリア国民評議会の)指導部を狙った未遂事件があった…。我々は今シリア国内にいる」としたうえで、「政府はこのイニシアチブ(シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長による条件付きでの対話イニシアチブ)を改めて挫折させようとしたことは明白だ…。政府は力と血という言葉以外理解しない」と批判した。
『ハヤート』(2月12日付)によると、使節団は、サブラー事務局長、スィーダー前事務局長、ファールーク・タイフール(シリア・ムスリム同胞団)、アブドゥルアハド・アスティーフー、サーリム・ムトラク、ジャマール・ワルド、アフマド・ラマダーン、バッシャール・ヒラーキー、ムハンマド・シャルマニーからなっていた。
他方、トルコ外務省は、爆発がジルヴェギョズ国境通行所から40メートルしか離れていないシリア領内の駐車場で発生したことを明らかにした。
また、トルコのハタイ県レイハンル市長は、NTV(2月11日付)に対して、爆破テロに使用された車がシリアのナンバー・プレートを付けていたと述べた。
その後(11日)、シリア国民評議会は声明を出し、爆発がサブラー事務局長らの現地訪問の3日目に発生し、事務局長、同行した執行委員会メンバー全員が無事だと発表した。
**
同じく、イドリブ県では、SANA(2月11日付)によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺、ラーミー村、ナイラブ村、ジャーヌーディーヤ町、アブー・ズフール市、マジャース市、タッル・サラムー市などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
ラッカ県では、「シャームの民のヌスラ戦線、タブカ自由人大隊、ウワイス・カルニー大隊が、タブカ市のユーフラテス・ダムの管制室に侵入し、その後軍の攻撃を恐れ、ダムの入り口に再結集した」とシリア人権監視団が発表した。
同監視団によると、ダムは稼働中で、「ダム制圧は…シリア政府にとって革命以来最大の経済的敗北だ」という。
**
ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ハサカ市の総合情報部と軍事情報局に対して自爆攻撃が行われ、治安要員14人が死亡した。
また同市では、軍と反体制武装勢力が交戦した、という。
**
ダマスカス県では、『ハヤート』(2月12日付)によると、ジャウバル区に反体制武装勢力が再び突入し、検問所の一つを制圧、これを受け、軍が同地区に増援部隊を派遣した。
クッルナー・シュラカー(2月11日付)によると、ティシュリーン・スポーツ・シティで、シャリーフ・シハーダ人民議会議員の車に仕掛けられた爆弾が爆発した。
シハーダ人民議会議員は無事だった。
**
ダマスカス郊外県では、SANA(2月11日付)によると、ドゥーマー市郊外、ウタイバ村、ザマルカー町、アルバイン市、ダーライヤー市、ザバダーニー市などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
ハマー県では、SANA(2月11日付)によると、ハマーミーヤート村で、軍がシャームの民のヌスラ戦線とハマーの盾旅団の残党を殲滅し、同市の治安を回復した。
**
ヒムス県では、SANA(2月11日付)によると、タッルドゥー市、アービル村、アッシュ・ウルール村、タイバ村、ラスタン市郊外、ジューバル市、クサイル市郊外などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
**
アレッポ県では、SANA(2月11日付)によると、バーブ市、マンスーラ村、カフルハムラ村、タッル・ラッハール村、ザハビーヤ村、クシャイシュ市、ナッカーリーン村などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市バーブ・ナイラブ地区、マサーキン・ハナーヌー地区、ブスターン・カスル地区、カッラーサ地区などで、軍が反体制武装勢力を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
国内の動き(シリア政府の動き)
アサド大統領は、ヨルダンのアラブ弁護士連合サミーフ・フライス書記長補を団長とするヨルダンの政治家、弁護士、医師、技師からなる使節団とダマスカスで会談した。
SANA(2月11日付)によると、使節団は、陰謀に立ち向かうシリアを孤立させないため、ヨルダン国民がシリア国民のさまざまな階層と連帯する意志を伝えた。
これに対して、アサド大統領は謝意を示し、「シリアが鼓動するアラブの心臓であり続け、いかなる圧力を受けようとも、またシリア、さらにはアラブ人への陰謀がいかなるものであろうと、この原則と基礎を譲歩することはない」と明言した。
**
アサド大統領は、10日に就任したギリシャ正教アンタキア総主教区のヨハネ10世ヤーズジー総司教とダマスカスで会談した。
SANA(2月11日付)によると、アサド大統領は会談で、総司教就任への祝辞を述べるとともに、ギリシャ正教会が、シリアの現下の危機において国民統合強化に果たしている役割を賞賛した。
これに対し、ヨハネ10世ヤーズジー総司教は、シリアが危機を脱却し、国民統合が強化されることを強く信じていると応えた。
**
ムハンマド・ジハード・ラッハーム人民議会議長と、ウムラーン・ズウビー情報大臣は、エジプト・ナセル党のアフマド・ハサン書記長が率いるエジプト政治家の使節団とダマスカスでそれぞれ会談した。
**
ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣は、PLO執行委員会使節団とダマスカスで会談した。
**
アレッポ県では、SANA(2月11日付)によると、アレッポ市シャイフ・ナッジャール地区で、武装テロ集団退去を求めるデモを市民が行った。
反体制勢力の動き
AFP(2月11日付)は、複数の目撃者の話として、イドリブ県の対トルコ国境地域で、シャームの民のヌスラ戦線と地元住民との衝突が最近少なくとも4件発生し、外国人サラフィー主義戦闘員への市民の不満がこれまで以上に増している、と報じた。
衝突が起きたのはイドリブ県カーフ村、アティマ村、ダーナー市など。
住民らによると、カーフ村での衝突は、交通事故を起こし、宗教を冒涜するような罵倒を吐いた住民をヌスラ戦線戦闘員がアレッポ県ダール・イッザ市の「イスラーム法廷」に連行しようとして発生した、という。
2人の男を車で連行しようとしたヌスラ戦線の車に、武装集団が発砲し、タイヤをパンクさせ、ヌスラ戦線の司令官の一人を身柄拘束した、という。
この司令官は事件の2日後に釈放された。
またアティマ村では、ヌスラ戦線メンバーのヨルダン人シャイフが、モスクでの金曜礼拝時に説教を行おうとしたが、住民が阻止し、両者が衝突したのだという。
ダーナー市でも、ヌスラ戦線メンバーのクウェート人シャイフが、モスクで説教を行おうとし、住民と衝突した事件が発生したという。
**
シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長はカイロでアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表とそれぞれ会談した。
会談後、アフマド議長は記者団に対して「国民の苦しみを解消するためすべての方法を試みる」と述べ、10日を猶予期間と設定した対話イニシアチブ継続する意思を示した。
アフマド議長は、対話イニシアチブに関して、シリア政府が「今のところ明確な回答をしていない」と批判する一方、政府との対話をめぐって反体制勢力内の対立が激化していることに関して「革命期の民主主義の一種だと考えている」と述べた。
アフマド・ベン・ヒッリー事務次長は会談後に声明を出し、アフマド議長が、自身の対話イニシアチブへの連盟の支援を要請したことを明らかにしたうえで、「シリア政府内ではなく、政府と反体制勢力の対話が行うかという点に関して、シリア政府側からの明確な反応が求められている」と付言した。
**
リヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相が、カイロでアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長と会談し、シリア情勢について協議した。
会談に関して、ヒジャーブ前首相は、アラビー事務総長がシリア革命反体制勢力国民連立にアラブ連盟の代表権を与えることを約束した、と述べた。
**
ラアス・アイン市で民主統一党と自由シリア軍(ハサカ県革命軍事評議会)の停戦調停を行う「和解平和使節団」団長のミシェル・キールー(シリア民主フォーラム代表)はクルディーヤ・ニュース(2月11日付)に対して、両当事者が意見の相違を克服しようとしている、と述べ、停戦に向けた協議が依然続いていることを明らかにした。
**
民主的変革諸勢力国民調整委員会は声明を出し、アレッポ市アシュラフィーヤ地区での軍と民主統一党人民防衛隊の戦闘に関して、「住民が…ありとあらゆる重火器の砲撃に曝されている」と政権を非難し、「同地区の人民防衛隊は住民とともに自衛を行っている」と民主統一党への支持を表明した。
諸外国の動き
カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は訪問先のクウェートで、シリアのアサド政権はアラブ世界に悪いイメージを与えている、と述べた。
カタールはシリアへの外国人テロリストの潜入を支援している。
**
『ワタン』(2月11日付)は、イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣が「シリア政府が倒れると賭け、そう考える者がもしいるなら、その考えは誤りだ」と述べた、と報じた。
サーレヒー外務大臣はしかし「同時に反体制勢力は現存する事実であり、それを無視することはできない」と付言、「穏健で知的な声が高まりつつある」として、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長による条件付きでの対話イニシアチブを暗に評価した。
AFP, February 11, 2013、Ahrarpress.com, February 11, 2013、Akhbar al-Sharq, February 11, 2013、al-Hayat, February 12, 2013、Kull-na Shuraka’, February 11, 2013, February 12, 2013、al-Kurdiya
News, February 11, 2013、Naharnet, February 11, 2013、Reuters, February 11,
2013、SANA, February 11, 2013、al-Watan, February 11, 2013などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.