アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線がアレッポ県のトルコ国境地帯で米軍の教練を受けた「穏健な反体制派」司令官ら8人を拉致する一方、ダーイシュ(イスラーム国)、YPGと交戦(2015年7月30日)

アレッポ県では、シリア人権監視団、ARA News(7月30日付)によると、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線が、トルコで米国の軍事教練を受けた「穏健な反体制派」を拉致した。

拉致されたのは、第30師団司令官のナディーム・ハサン大佐以下8人で、トルコで米軍の軍事教練を受けた「穏健な反体制派」54人を構成するメンバーで、バーブ・サラーマ国境通行所を経由して、トルコからシリア領内に潜入していた。

彼らはこの日、アアザーズ市での会合に参加していたが、会合を終えて、本拠地であるマーリキーヤ村に帰還する途中、アアザーズ市郊外のサジュー交差点でヌスラ戦線によって拘束されたという。

しかし、クッルナー・シュラカー(7月30日付)は、複数の地元活動家の話として、ハサン大佐らが、マーリキーヤ村の本部に帰還後、マーリキーヤ村に進入したヌスラ戦線によって拉致、連行されたと伝えるとともに、第30師団メンバーのほかにも、タウヒード旅団の元司令官アブー・ハーディー氏も逮捕されたと報じた。

第30師団は、トルコで米軍の軍事教練を施した「穏健な反体制派」が米国の支援を受けて、最近創設した武装集団で、戦闘員の多くはトルクメン系シリア人だという。

一方、アレッポ県マンビジュ市一帯を拠点とし、「自由シリア軍」幹部のファルハーン・ジャースィム氏と近しいという活動家アブー・ウマル・マンビジー氏は、フェイスブックで、ハサン大佐らが「3日前にヌスラ戦線の本部で会合を行うための調整を行っていた」としたうえで、「米国の工作員だと疑われて、逮捕された」と綴った。

また、会合参加前にも「彼らとヌスラ戦線の間には問題が発生していた…。第30師団司令官らは(トルコの)キリスからアアザーズ市に入ってきたため、ヌスラ戦線の検問所は意表を突かれ、彼らは国境通行所にある…ヌスラ戦線の本部に連行された」とも付言した。

なお、クッルナー・シュラカーによると、第30師団のハサン大佐は、シリア国内での任務(ダーイシュ(イスラーム国)との戦闘)などについての調整を行うため、シリア派遣前にカタールを訪問していたという。

クッルナー・シュラカーは、西側諸国が、第30師団などの武装集団を「シリア国民軍」の中核を構成することで合意していたが、この方針が、各地でファトフ軍を主導するヌスラ戦線の政策や活動との軋轢を生んだのだとの見方を示している。

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シリア人権監視団によると、スーラーン・アアザーズ町近郊のバッル村一帯で深夜、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団がダーイシュ(イスラーム国)と交戦した。

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ARA News(7月30日付)によると、アレッポ県アフリーン市郊外のジンディールス町およびイドリブ県のトルコ国境地帯に位置するアティマ村一帯で西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊とシャームの民のヌスラ戦線が交戦した。

人民防衛隊に近い複数の消息筋によると、戦闘はヌスラ戦線が両村近郊のクルド人の村落を襲撃したことをきっかけに発生したという。

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米中央軍(CENTCOM)は、7月30日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して41回の空爆を行ったと発表した。

このうちシリア領内での空爆は24回におよび、ハサカ市近郊(7回)、ダイル・ザウル市近郊(17回)のダーイシュに対して攻撃が行われたという。

AFP, July 30, 2015、AP, July 30, 2015、ARA News, July 30, 2015、Champress, July 30, 2015、al-Hayat, July 31, 2015、Iraqi News, July 30, 2015、Kull-na Shuraka’, July 30, 2015、al-Mada Press, July 30, 2015、Naharnet, July 30, 2015、NNA, July 30, 2015、Reuters, July 30, 2015、SANA, July 30, 2015、UPI, July 30, 2015などをもとに作成。

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