Contents
国内の動き(シリア政府の動き)
シリアのドゥルーズ派のシャイフ・アクル、フサイン・ジャルブーウの国葬がスワイダー県スワイダー市で執り行われた。
SANA(12月21日付)が報じた。
国内の暴力
アレッポ県では、ロイター通信(12月21日付)によると、反体制武装勢力がアレッポ空港でシリア航空機RB201便を攻撃した。
ハルドゥーンを名乗る反体制活動家はロイター通信に対して、威嚇射撃によりRB201便のタイヤを破壊し、離陸不能にしたとしたうえで、「我々は政府に、軍用機も民間機もすべて我々の手の届くところにあるというメッセージを送りたかった」と述べた。
またハルドゥーンは「ダマスカス空港で行われたことは、どんなに高い代償を払おうとも、アレッポでも行われるだろう」としたうえで、「今後、(旅客機は)標的になるだろう」と述べ、民間人にアレッポ空港をしないよう警告した。
『ハヤート』(12月22日付)は、反体制武装勢力が「政府が民間機によってイランの武器や兵士を送り込んでいる」とこうしたテロ行為を自己正当化している、と報じた。
またAFP(12月21日付)によると、アレッポ市ザフラー地区で、反体制武装勢力が空軍情報部に隣接する軍の拠点と武器庫を攻撃したが、軍の反撃を受け、複数の戦闘員が負傷した。
一方、SANA(12月21日付)によると、ハイヤーン町、ズィルバ村の街道沿い、カフルダーイル村、アルバイド村、アレッポ市ブスターン・カスル地区、マルジャ地区、旧市街などで軍が反体制武装勢力の拠点を攻撃し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーを含む多数の戦闘員を破壊、装備を破壊した。
他方、シリア人権監視団は声明を出し、スペイン人記者がアレッポ市ブスターン・カスル地区でのデモの最中に何者かに発砲され、野戦病院で治療を受けている、と発表した。同地区は反体制武装勢力の支配下にあるという。
**
ダマスカス県では、AFP(12月21日付)などによると、ヤルムーク区での戦闘激化を受けて避難していたパレスチナ人数千人が同地区に戻った。
複数の住民によると、地区内には、反体制武装勢力も、PFLP-GCの民兵もいないという。
同地区に至る主要幹線道路は車両通行止めとなっているが、マイクロバスの往来、脇道の車輌通行は許可されている、という。
しかしシリア人権監視団によると、ヤルムーク区内でパレスチナ人民兵と反体制武装勢力が交戦した。
同監視団によると、反体制武装勢力と交戦したのは、アサド政権を支持する人民諸委員会とパレスチナ諸派の民兵。
また同監視団によると、タダームン区などで、軍と反体制武装勢力が交戦した。
**
ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市、ムウダミーヤト・シャーム市、ハジャル・アスワド市などで軍が反体制武装勢力と交戦した。
またルハイバ市では、反体制武装勢力が軍を襲撃した、という。
一方、SANA(12月21日付)によると、ダーライヤー市、ドゥーマー市郊外、ズィヤービーヤ町などで、軍が反体制武装勢力の追撃を継続し、多数の戦闘員を殺傷した。
**
ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス県ジャウバル区、スルターニーヤ地区を軍が空爆、また両地区では軍と反体制武装勢力が交戦した。
一方、SANA(12月21日付)によると、ハウラ地方で、軍が反体制武装勢力の爆弾製造工場を攻撃、破壊した。
**
ハマー県では、シリア人権監視団によると、ガーブ地方のラスィーフ村、ジャニーン村などで、軍が反体制武装勢力と交戦した。
一方、SANA(12月21日付)によると、ヒルバト・ハジャーマ村などで軍が反体制武装勢力と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら多数の戦闘員を殺傷した。
**
イドリブ県では、SANA(12月21日付)によると、ガッサーニーヤ村、アーリヤ市、ビンニシュ市、タフタナーズ市、サラーキブ市などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら多数の戦闘員を殺傷した。
一方、SANA(12月21日付)によると、タマーニア町などで軍が反体制武装勢力と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら多数の戦闘員を殺傷した。
反体制勢力の動き
シリア民主フォーラムのミシェル・キールーはパリで、『アフバール』(12月17日付)が全文掲載したファールーク・シャルア副大統領の発言を「体制、個人ではなくシリアという祖国の国益を踏まえた高官の初の発言」と評価し、「反体制勢力が合意すれば、移行期を監督するかもしれない」と述べた。
クッルナー・シュラカー(12月21日付)が報じた。
シャルア副大統領は「我々は個人や体制を擁護しているのではなく、シリアの存在を擁護している…。解決は地域の主要諸国と国連安保理を含んだかたちでの歴史的関係正常化を通じてなされねばならない…。関係正常化はすべての暴力の停止、挙国一致内閣の発足が保障されねばならない」と述べていた。
**
シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長は、「ハウラーン地方およびアラブ山地方の民」(ドゥルーズ派)に対して、民間人の誘拐、脅迫を行わないよう呼びかけた。
**
シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、イラン外務省による紛争解決のための6項目提案を「沈没不可避のシリアの体制という船に命綱を投げる絶望的試み」と批判、拒否した。
**
クッルナー・シュラカー(12月21日付)は、シリア情報通信センターの情報として、シリア国民評議会執行委員会は近く、ハサカ県のアラブ系部族、クルド系部族、アッシリア政党の代表者約60人を一同に介して、国民和解会合を開催する予定だと報じた。
執行委員会のアブドゥルアズィーズ・ムスラトによると、この会合ではハサカ市からの軍の撤退、離反した警官や民間人などからなる自警団の設置などがめざされるという。
諸外国の動き
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はEUロシア首脳会談後の記者会見で、「シリアは我々の国境から遠くない。我々はシリアで混乱が拡がることを望んでいない」と述べた。
プーチン大統領はまた「我々にとって重要なのは、シリアの体制であり…、シリア政府の擁護ではない…。長期的合意に至るため、まずシリアの将来について合意せねばならない…。すべての当事者が対話のテーブルに着かねばならない」と強調した。
**
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、RT(12月21日付)に対して、「地域のプレーヤーのなかには、なぜアサド大統領に退任を求めて、亡命先を提供しないのか、と我々に言う者がいる…。答えは単純だ。そうしたことを提案する者がそうした思いをめぐらすなら、それをアサド大統領に直接伝えるべきだ…。なぜ彼らは我々を配達人として利用するのか?」と述べた。
**
アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長はジプチ首相との会談後、記者団に対して、「スカッド・タイプのミサイルの発射を我々は監視でき、そうした行為を遺憾に思う…。それは絶望的な体制が崩壊に近づいていることを示すものだ」と述べた。
NATOに近い消息筋によると、ラスムセンNATO事務局長はシリア軍が20日にスカッド・ミサイルを発射したと認識している、という。
**
国連総会は、シリア政府および政府を支持する民兵(シャッビーハ)による重大かつ体系的な人権侵害を非難し、シリア政府に暴力停止を求める声明を採択した。
決議は135カ国が賛成したが、ロシア、中国など12カ国が反対、36カ国が棄権した。
同決議は、すべての当事者による暴力停止も補足的に求められている。
**
UPI(12月21日付)によると、日本政府は、シリアでの戦闘激化を踏まえ、UNDOFに参加している自衛隊の撤収命令を発した。
ゴラン高原派遣の自衛隊の部隊は来年3月に交代する予定だったが、政府は今日(金曜日)の安全保障会議で近日中に任務を終了させることを決定した。
森本敏防衛大臣は関係機関高官らと会談し、自衛隊をゴラン高原から撤退させることを決定したという。
森本大臣は撤退決定に関して、地域の治安状況が重要な任務の続行を困難にしたと述べる一方、国際社会が日本のゴラン高原における17年間の活動を高く評価しているが、このようなかたちで任務を終了することを期待していなかったと指摘した。
AFP, December 21, 2012、Akhbar al-Sharq, December 21, 2012、al-Hayat, December 22, 2012、Kull-na Shuraka’, December 21, 2012、al-Kurdiya News, December 21, 2012、Naharnet, December 21, 2012、Reuters, December 21, 2012、SANA, December 21, 2012、UPI, December 21, 2012などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.