ダマスカス郊外県で反体制武装勢力がドゥワイラ基地を「長期にわたる包囲の末」制圧、シリア国民評議会は新評議会設置の動きを「一部の当事者の時期尚早な試み」と評する(2012年11月3日)

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国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装勢力が山岳部の基地からの撤退を進めた。

撤退は「基地および周辺地域への軍の空爆が行われた場合、その維持が困難である」ことが理由だという。

一方、反体制武装勢力はタフタナーズ航空基地への攻撃を開始した。

これに対して、SANA(11月3日付)によると、反体制武装勢力がタフタナーズ航空基地を襲撃したが、軍・治安部隊がこれを撃退した。

またハーリム市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア革命総合委員会によると、反体制武装勢力がドゥワイラ基地を「長期にわたる包囲の末」制圧し、地対空ロケット弾などの武器弾薬を確保した。

また、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市で、反体制武装集団が軍・治安部隊との戦闘の末、警察署、県庁、フライマ病院橋を制圧した。この戦闘で、軍兵士21人が殺害され、多数が拉致された。

一方、SANA(11月3日付)によると、フジャイラ村、ハラスター市、ディヤービーヤ市(サイイダ・ザイナブ町近郊)で軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殺傷した。

Kull-na Shuraka', November 3, 2012

Kull-na Shuraka’, November 3, 2012

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ナイラブ航空基地周辺で、軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦した。

またアクス・サイル(11月3日付)は、アレッポ市スィルヤーン地区が砲撃を受け、ラフマーン・モスクに迫撃砲が着弾した、と報じた。

一方、SANA(11月3日付)によると、フライターン市、タッル・リフアト市、バーブ市、カフルハムラ村、アレッポ市ブスターン・カスル地区、サーリヒーン地区などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、外国人戦闘員を含む戦闘員多数を殺傷、装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、マヤーディーン市で軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のアフマド・ラマダーン広報局長はドーハで4日に予定されている評議会会合に先立って、イスタンブールで『ハヤート』(11月4日付)のインタビューに応じた。

インタビューのなかでラマダーン広報局長は、米国主導のもと、リヤード・サイフ元議員が進めている新評議会設置の動きに関して、「シリア国民の友(欧米諸国、アラブ連盟、トルコ)の同意を得ていない一部の当事者の時期尚早な試み」と批判した。

またラマダーン広報局長は、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣が、シリア国民評議会を批判したヒラリー・クリントン米国務長官の発言を批判、「米大統領選挙の行方と関係があるのだろう」との見方で評議会と一致した、と述べた。

さらにラマダーン広報局長は、ダウトオール外務大臣が、シリア国民評議会に対して国内の反体制勢力との接触強化などを通じてその役割を増大させるよう促した、と述べたうえで、評議会が反体制勢力の「主柱であるべき」と明言し、暫定政府発足に向けたイニシアチブを発揮するよう評議会に求めた、と述べた。

そのうえで、トルコ側と、シリア人学生のトルコへの受け入れ、「解放区」へのトルコからのディーゼルの供与などが協議された、という。

ラマダーン広報局長によると、ドーハでの会合では、420人の反体制活動家、13の組織(ブロック)が新たにシリア国民評議会に参加する予定だという。

新規参加を予定している組織は、シリア・クルド国民行動戦線、スィルヤーニー連合党、シリア自由人党、新生活党、未来建設潮流、尊厳潮流、シリア自由人連合、自由尊厳連合、クルド民主諸勢力連合、トルクメン国民ブロック、トルクメン運動、シリア部族評議会、自由人民潮流。いずれも泡沫組織で、過去の活動実績はない。

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国内で活動する民主的変革諸勢力国民調整委員会の執行委員会は声明を出し、11月8日にドーハで予定されている反体制武装勢力の大会に関して、シリア人の独立した意思を代弁しておらず、反体制勢力統合に向けた建設的なステップとみなし得ない、との理由で、欠席を表明した。

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パリで活動するシリア民主世俗主義諸勢力連立は声明を出し、米国が後押しするリヤード・サイフ元議員のシリア国民イニシアチブ構想に関して、反体制勢力統合の動きとして歓迎の意思を示しつつも、シリア国民を実質的に代表していない、と非難した。

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リヤード・ファリード・ヒジャーブ元首相の報道官を務めるムハンマド・アトリーは声明を出し、ヨルダンの首都アンマンで反体制勢力の指導者25人が一同に介して、「日曜日(11日)にドーハで開催される拡大会合の準備」を行ったと発表した。

声明において、アトリー報道官は、「リヤード・サイフ元議員がドーハの会合で、シリア国民イニシアチブを発表する」ことを明らかにした。

声明によると、このイニシアチブは、「シリアの反体制勢力の新たな政治的母体の生成を表明しており、そのなかには、シリア国民評議会、シリア・クルド国民評議会、地元評議会、国内の革命評議会、歴代の政治的指導者、イスラーム教徒ウラマー委員会、イスラーム教徒ウラマー連盟などすべての政治勢力からなる」という。

またアンマンの会合では、「出席者は、アサドの退任が対話を行ううえでの妥協できない前提条件であること」、また「自由シリア軍、革命運動を体制打倒のための合法的な方法」とすることで合意したという。

諸外国の動き

UNHCRは声明を出し、レバノン国内に106,280人のシリア人が避難していると発表した。

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イスラエル国防軍報道官は、11月3日にシリア軍の戦車3輌が、ゴラン高原(クナイトラ県)内の非武装地帯に侵入、国防軍は国連に抗議を行った、と発表した。

ロイター通信(11月4日付)が報じた。

AFP, November 3, 2012、Akhbar al-Sharq, November 3, 2012、‘Aks al-Sayr, November 3, 2012、al-Hayat, November 4, 2012、Kull-na Shuraka’, November 3, 2012、al-Kurdiya News,
November 3, 2012、Naharnet, November 3, 2012、Reuters, November 3, 2012,
November 4, 2012、SANA, November 3, 2012などをもとに作成。

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