Contents
国内の暴力
クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、ブライカ地方、ビイル・アジャム地方、ハルシュ地方で、軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦し、双方に合わせて3人の死者が出た。
軍は、同地方に潜伏する反体制武装勢力の掃討をめざしている、という。
**
ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ムウダミーヤト・シャーム市の市役所前で爆弾が仕掛けられた車が爆発し、4人が死亡した。
またダーライヤー市で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と激しく交戦した。
一方、SANA(11月9日付)によると、サイイダ・ザイナブ町で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
**
ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、クーリーヤ市への砲撃で12人が死亡した。
しかし、SANA(11月9日付)は、クーリーヤ市での砲撃を否定した。
またSANA(11月9日付)によると、ダイル・ザウル市内で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
**
ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カフルスーサー区で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と激しく交戦した。
一方、SANA(11月9日付)によると、軍・治安部隊がタダームン区で殺戮・破壊活動を行う反体制武装勢力と交戦し、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷、米国製の武器などを押収した。
**
アレッポ県では、SANA(11月9日付)によると、カフルハムラ村・ライラムーン地区間の街道、ダイル・ハーフィル市、バーブ市・ラーイー街道、カフルハムラ村、フライターン市、ズィルバ村、アレッポ市シャイフ・サイード地区、ライラムーン地区、スッカリー地区、カッラーサ地区などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、アジトなどを破壊した。
一方、ダマス・ポスト(11月9日付)は、バアス党アレッポ支部指導部のヒラール・ヒラール書記長が、バアス党員の志願者約5,000人から編成される「バアス大隊」が軍・治安部隊とともに反体制武装勢力との戦闘に参加していることを明らかにしたと報じた。
**
ヒムス県では、SANA(11月9日付)によると、ハウラ地方、ヒムス市ワアル地区、アルメニア地区などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
**
ハマー県では、SANA(11月9日付)によると、ガーブ地方のジブリーン村などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
国内の動き
インターネットなどでは、「ダマスカスへの進軍の時」と銘打った反体制デモが呼びかけられた。
ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団などによると、デモは、ダマスカス郊外県ドゥーマー市、ダマスカス県カーブーン区、ジャウバル区、バルザ区、アサーリー地区、ハマー県カフルヌブーダ町など各地、ダルアー県、アレッポ県、ハサカ県、イドリブ県、ダイル・ザウル県でデモが発生したという。
デモでは、RTでのアサド大統領の発言(「シリアで死ぬ」を受けるかたちで、「バッシャールよ、我々は今度こそ嘘をつかないことを願っている」といったシュプレヒコールをあげて、退陣と体制打倒を呼びかけた。
**
『ティシュリーン』(11月9日付)は、2011年3月以来、シリア国内で12,461台の自動車が盗難に遭った、と報じた。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会の事務局は、カタールの首都ドーハで執行部選挙および事務局長選挙を実施した。
執行部選挙に先立って、シリア革命最高評議会のワースィル・シャマーリーが事務局メンバーの地位をジョルジュ・サブラーに譲り、またサブラーがシリア革命最高評議会に加入した。
これに関して、シャマーリーは、「よりよい役割を果たすものを優先すべく、事務局におけるポストをサブラーに譲った」と述べた。
**
執行部選挙での当選者および獲得票数は以下の通り。
- ジョルジュ・サブラー(35)
- ヒシャーム・ムルーワ(36)
- ファールーク・タイフール(30)
- アブドゥルバースィト・スィーダー(27)
- サーリム・アブドゥルアズィーズ・ムスラト(31)
- アブドゥルアハド・アスティーフー(30)
- ハーリド・サーリフ(29)
- ジャマール・ワルド(25)
- フサイン・サイイド(29)
- ナズィール・ハキーム(22)
- アフマド・ラマダーン(21)
なお執行部選挙には20人が立候補した。落選者は以下の通り。
- ハーリド・ナースィル
- バッサーム・イスハーク
- アブドゥルカリーム・アーガー
- バドル・ジャームース
- ウサーマ・シュルバジー
- ハリール・ハーッジ・サーリフ
- ズィヤーダ・アブー・ハムダーン
- ムラッヒム・ダルービー
- スライマーン・ヒラーキー
**
執行部選出を受け、事務局長の選挙が実施された。
**
事務局長選挙には、ジョルジュ・サブラーとヒシャーム・ムルーワが立候補し、投票の結果、ジョルジュ・サブラーが8票を獲得して、事務局長に選出、かくして事務局選挙人落選した活動家が一転、シリア国民評議会の第3代事務局長に就任した。
**
ジョルジュ・サブラーは1947年、ダマスカス郊外県カタナー市生まれ。ギリシャ正教徒。元教師。シリア民主人民党(旧シリア共産党政治局派)の書記長を務める。2012年春に海外に逃れた。
**
トルコでの避難生活を終え、対トルコ国境のシリア領内に潜伏する自由シリア軍最高軍事評議会議長のムスタファー・シャイフ准将は、AFP(11月10日付)に対して、自由シリア軍を組織再編し、反体制武装勢力の統合を行い、近く新指導部の「選挙」を行うと述べた。
シャイフ准将によると、自由シリア軍は過去10日での再編作業により、北部旅団、南部旅団、東部旅団、西部旅団、海岸地上旅団の5旅団に再編された、という。
また近く、新指導部を「選挙」によって選び、組織的活動を行うことで、国際社会の信用を得たいとしている。
さらに、シリア国外を拠点としている非難に反論するかたちで、「司令官や士官は、前線から離れていてはならない」としたうえで、200人の士官を「解放区」の一つにトルコから派遣したと述べた。
シャイフ准将によると、国軍兵士の半数が離反したが、離反兵の半数は当局に逮捕され、自由シリア軍が約70,000人の兵士からなる、と述べたうえで、「自由シリア軍はすべてのシリア人を代表している」と豪語した。
一方、シリア国民評議会を指導するシリア・ムスリム同胞団に関して、シャイフ准将はシリア国民を代表していないと非難した。
**
トルコ当局によると、少将2人を含むシリア軍士官26人が離反し、トルコに逃走した。ロイター通信(11月9日付)などが報じた。
**
クッルナー・シュラカー(11月9日付)によると、地元調整諸委員会がシリア国民評議会からの脱会を決定したことに対して、評議会に参加する「地元調整諸委員会ブロック」代表および同ブロックの半数以上のメンバーが、脱会を拒否した、と報じた。
**
ヤーラー・ナスィールは声明を出し、シリア国民評議会からの脱会を発表した。
評議会が革命を指導するすべての勢力を代表し得なかったことがその理由。
**
シリア国民評議会事務局選挙に落選したアディーブ・シーシャクリーは声明を出し、評議会からの脱会を発表した。
評議会が組織改編に失敗し、国内外での信頼醸成に失敗したことが理由。
**
シリア救援医療機構のタウフィーク・シャンマ報道官はジュネーブで記者会見を開き、シリア赤新月社宛に送付されている国際人道支援物資の90~95%が、シリア政府、とりわけ軍を支援するために横流しされている、と指摘・非難した。
**
自由シリア軍バッラー大隊はフェイスブック(11月9日付)に、捕捉した軍・治安部隊兵士の映像を公開した。
http://www.youtube.com/watch?v=16TRP0zKeak
クルド民族主義勢力の動き
『ハヤート』(11月10日付)によると、シリア・クルド民主党(アル・パールティー)のムハンマド・イスマーイールは、ラアス・アイン市に潜入した反体制武装勢力の戦闘員のほとんどが「ジハード主義者」だったことを明らかにした。
**
クルディーヤ・ニュース(11月9日付)は、ハサカ県ラアス・アイン市への自由シリア軍の潜入に関して、大多数の住民が市外への避難を余儀なくされるなか、一部の住民が自由シリア軍とともに、軍・治安部隊を襲撃していた、と報じた。
**
クルディーヤ・ニュース(11月9日付)は、ハサカ県ラアス・アイン市で、民主統一党の人民防衛隊(YPG)が、シリア・クルド国民評議会によるデモに発砲し、少なくとも5人が負傷したと報じた。
デモは平和的に行われたが、参加者は委任統治時代のシリアの国旗を掲揚するなどして、民主統一党支持者を挑発した、という。
**
クルディーヤ・ニュース(11月9日付)は、ハサカ県のアームーダー市、ダルバースィーヤ市から軍・治安部隊が撤退し、民主統一党人民防衛隊(YPG)が両市を掌握したと報じた。
**
クルディーヤ・ニュース(11月9日付)は、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣が、反体制勢力の大会に参加するためにドーハに滞在中のシリア・クルド国民評議会使節団と会談し、「クルド人テロ組織に反対の立場をとる」と述べ、民主統一党の排除を求めた、と報じた。
これに対して、使節団は、民主統一党を「テロ組織」とみなすダウトオール外務大臣の姿勢に異議を唱え、民主統一党がPKKの下部組織ではないと反論した。
諸外国の動き
アフバール・シャルク(11月9日付)は、イスラエルが占領するゴラン高原での迫撃砲着弾や非武装地帯へのシリア軍戦車の進入に関して、イスラエルの複数の消息筋の話として、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が、米国のユダヤ人を通じて、「高原内のイスラエル入植地への攻撃を許さない」とのアサド大統領の確約を得たと報じた。
アサド大統領はまた、占領地に着弾した迫撃砲が軍ではなく「破壊分子」が発射したものだと伝えた、という。
**
国連難民高等弁務官によると、過去48時間で約11,000人がシリア国外に避難した。うち約9,000人がトルコへ、約1,000人がヨルダンへ、約1,000人がレバノンに入国した、という。
AFP, November 9, 2012、Akhbar al-Sharq, November 9, 2012、Damas Post, November 9, 2012、al-Hayat, November 10, 2012、Kull-na Shuraka’, November 9, 2012、al-Kurdiya News,
November 9, 2012、Naharnet, November 9, 2012、Reuters, November 9, 2012、SANA,
November 9, 2012、Tishrin, November 9, 2012などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.