2012年11月10日のシリア情勢

反体制勢力の動き

『ハヤート』(11月11日付)によると、国内の反体制組織・活動家らがシリア国民諸勢力が共同声明を発表し、「ドーハでの反体制勢力の会合の計画を拒否する」との意思を示した。

この共同声明には、12の組織が参加、それらの代表者である自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐、シリア・レジスタンス現地大隊のサアド・ウカイディー、バヒーヤ・マールティーニー(クルド人)、シャーム自由人党のイブラーヒーム・ズウビー、国民変革潮流のアンマール・カルビーらが署名している。

同声明は、ドーハでの会合に参加する反体制勢力を「革命の誠実な申し子たちを排除する」者と批判し、会合で「準備された争点そのものに疑義を呈する」としたうえで、「革命成就後に、我々国民が望まないことを誰も押しつけることはできない」と主張した。

そのうえで、「祖国のなかで、民間人と軍人の対話を始め、国内で真の国民議会を設置し、長きにわたる苦しみを終えるべく、あなたたち(国民)の望みを代弁する」と締めくくった。

**

米国とリヤード・サイフ元議員の主導のもと11月8日にドーハで開会された反体制勢力の大会(「共にシリアのために」会合)に、シリア国民評議会の新執行部が参加、他の反体制組織との協議に入った。

『ハヤート』(11月11日付)によると、両陣営は、体制打倒と自由シリア軍支援において原則合意したが、リヤード・サイフ元議員が提示したシリア国民イニシアチブに代えて、反体制勢力の「連立」に向けた議論が進められ、「シリア国民評議会が連立において大きなウェートを持つ」かたちの調整がめざされている、という。

会合には、カタールのハーリド・アティーヤ外務担当国務大臣、UAEのアブドゥッラー・ブン・ザーイド外務大臣、ロバート・フォード在シリア米大使らも同席した。

『ハヤート』(11月11日付)によると、アティーヤ外務担当国務大臣は、カタールがシリア国民評議会の存続を支持し、シリア国民イニシアチブ委員会をその代替とみなさない、と明言した。

**

シリア国民評議会のアフマド・ラマダーン執行部メンバーによると、大会で評議会は「自らのビジョン」を提示する一方、サイフ元議員によるシリア国民イニシアチブ委員会の設置の是非に向けて協議を行っている、という。

ラマダーンは、サイフ元議員の提案に基づいてシリア国民イニシアチブ委員会が設置されることを妨げないが、このことはイニシアチブそのものに同意したことを意味せず、また評議会はシリア国民イニシアチブ委員会が設置されても参加しないだろう、と述べた。

**

AFP(11月10日付)によると、シリア国民評議会は、ドーハで開催中の反体制勢力の大会で、暫定政府発足などを骨子とする新提案を提示するという。

同提案は、①暫定政府、②シリアの友連絡グループの呼びかけに応え、その支援を受け入れるためのシリア国民支援基金、③国内軍事司令部合同指導部、④シリア司法委員会、という四つの組織からなる。

また、「シリア国内での反体制勢力の大会によって暫定政府が樹立されるまで」、この暫定政府が施政権を担うことが定められている、という。

**

シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー新事務局長は就任後初の記者会見で、米国の後援のもとにリヤード・サイフ前議員が提案したシリア国民イニシアチブ構想に関して、「シリア国民評議会はシリア国民イニシアチブをはじめとするいかなるイニシアチブよりも古い。我々に求められているのは、国民的な構想に向けて進むことで、別の路線の旗のもとに集うことではない」と述べた。

また「我々は同胞と開かれた対話に入り、彼らのイニシアチブを精査した。しかし、我々には我々の見方、考え方があり、それを提示するだろう」と付言した。

SANA, November 10, 2012

SANA, November 10, 2012

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がマアッラト・ヌウマーン市周辺部での進軍を続け、付近の国際幹線道路や周辺の多くの村々を奪還した。

しかし、マアッラト・ヌウマーン市は、反体制武装勢力が占拠している、という。

**

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市で連続爆破テロが3件発生し、少なくとも兵士20人が殺害された。

爆破テロのうち2件は爆弾を積んだ車による自爆テロで、将校クラブを標的となった。また残る1件は市内のスタジアム近くで発生した。

SANA(11月10日付)によると、反体制武装勢力によるこのテロで7人の市民が犠牲となった。

SANA, November 10, 2012

SANA, November 10, 2012

**

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ザーヒラ地区で、車に仕掛けられた爆弾が爆発した。

またタダームン区では、反体制武装勢力が軍・治安部隊の検問所を襲撃し、両者が交戦した。

一方、SANA(11月10日付)によると、反対武装勢力がダッフ・シューク地区で爆弾を車に仕掛けて爆発させ、複数の市民が負傷した。

またジョルジュ・フーリー広場に面する民家に、反体制武装勢力が迫撃砲を発射し、複女性2人が負傷した。

**

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市郊外で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。

一方、SANA(11月10日付)によると、ハラスター市郊外などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、複数の戦闘員を殺傷した。

またナバク市で、反体制武装勢力が仕掛けようとしていた爆弾が誤爆し、戦闘員全員が死亡した。

このほか、クッルナー・シュラカー(11月10日付)は、ジュダイダ・シーバーニー調整の活動家の話として、反体制活動家のムハンマド・バッシャール・スンウーバル医師が数度にわたる逮捕のち、11月6日にラマール検問所で殺害された、と報じた。

**

クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、イスラエル占領地近くで、軍・治安部隊が反体制武装勢力掃討のために砲撃を行った。

また反体制武装勢力2人が、フッリーヤ村の治安部隊の検問所を襲撃した。

**

アレッポ県では、SANA(11月10日付)によると、アナダーン市、バーブ市、ハンダラート・キャンプ、アレッポ市フィルドゥース地区、アグユール地区、ライラムーン地区などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジト、拠点などを攻撃し、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

**

ダイル・ザウル県では、SANA(11月10日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力(ターリク・ブン・ズィヤード旅団)と交戦し、複数の戦闘員を殺傷した。

**

ヒムス県では、SANA(11月10日付)によると、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区、バーブ・フード地区、タルビーサ市、ラスタン市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殲滅、装備を破壊した。

クルド民族主義勢力の動き

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、民主連合党と住民の要請により、ダルバースィーヤ市とタッル・タミル市から軍・治安部隊が退去、同党が両市を掌握した。

シリア人権監視団のアリー・アブドゥッラフマーン代表によると、人民防衛隊と住民が「両市の警察、軍事情報局、総合情報部などの治安施設を長時間にわたって包囲」、アイン・アラブ市と同様の戦闘を回避するための交渉を軍・治安部隊と行い、軍・治安部隊は両市から退去した、という。

なお民主連合党の人民防衛隊はこれをうけ、ダルバースィーヤ国境通行所も掌握した。

クッルナー・シュラカー(11月10日付)によると、このほかにも、アブー・ラースィーン市、タッル・バイダル村からも軍・治安部隊が退去した、という。

**

『ハヤート』(11月11日付)によると、この退去を受け、ハサカ県はハサカ県、カーミシュリー市、カーミシュリー国境通行所以外が、クルド民族主義勢力と反体制武装勢力のいずれかに掌握された、という。

**

『ハヤート』(11月11日付)は、クルド人活動家の話として、民主連合党人民諸委員会が、クルド人避難民に対して、軍・治安部隊が退去したハサカ県ラアス・アイン市に戻るよう呼びかけている、という。

複数のメディアによると、自由シリア軍のラアス・アイン市襲撃により、住民のほとんどは市外に避難、うち約5,000人がトルコ領内に逃れていた、という。

レバノンの動き

シリアの複数の反体制筋によると、ヒムス市サフサーファ地区で、ヒズブッラーの民兵の司令官の一人バースィル・ハマーダが反体制武装勢力との戦闘中に死亡した。

スカイニュース(11月11日付)によると、この戦闘では、ヒズブッラーの戦闘員複数が負傷した。

諸外国の動き

『クドス・アラビー』(11月10日付)は、シリアの信頼できる複数の消息筋の話として、10月10日にトルコのアンからに強制着陸させられたモスクワ発シリア・アラブ航空旅客機の積荷のなかに、ADE651(英国製爆発物探知機)などが含まれていた、と報じた。

AFP, November 10, 2012、Akhbar al-Sharq, November 10, 2012、al-Hayat, November 11, 2012、Kull-na Shurakā’, November 10, 2012、al-Kurdīya News, November 10, 2012、Naharnet, November 10, 2012、al-Quds al-‘Arabī, November 10, 2012、Reuters, November 10, 2012、SANA, November 10, 2012、Sky
News, November 11, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.