2012年11月19日のシリア情勢

国内の暴力

ハサカ県では、シリア人権監視団などによると、ラアス・アイン市で、反体制武装勢力が民主連合党人民防衛部隊(YPG)の検問所を襲撃、同部隊の戦闘員4人を含む9人が負傷した。

シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、戦闘に先立って、市内では自由シリア軍の退去を求めるデモが発生していた、という。

AFP(11月19日付)は、クルド人活動家の話として、自由シリア軍の兵士が民主連合党の検問所と知って、故意に発砲し、交戦が始まったと報じた。

またシリア人権監視団は、反体制武装集団の狙撃主が西クルディスタン人民議会のアービド・ハリール・ラアス・アイン地方議会議長を暗殺した、と発表した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、「反体制武装勢力が約90%制圧した」アレッポ市郊外の第46大隊拠点に、軍が空爆を加えた。

AFP(11月19日付)はシリア軍筋の話として「大隊は日曜日(18日)晩から完全に制圧されている」と報じた。

一方、SANA(11月19日付)によると、ハンダラート・キャンプ、サフィーラ市、アターリブ市、アレッポ市ブスターン・バーシャー地区、アンサーリー地区、アシュラフィーヤ地区などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ナバク市で反体制武装勢力がアブドゥッラー・ダルアーウィーナバク地区局長と警官4人を殺害した。

一方、サイイダ・ザイナブ町、ハラスター市、ダーライヤー市、ハジャル・アスワド市などに軍・治安部隊が砲撃を加えた。

またSANA(11月19日付)によると、軍・治安部隊がダーライヤー市、フジャイラ村郊外などで反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、アサーリー地区、タダームン区が軍・治安部隊の砲撃を受けた。

一方、SANA(11月19日付)によると、反体制武装勢力がマッザ区の住宅地を襲撃、アラブ文化センター近くなどに迫撃砲4発が着弾した。死傷者は出なかった。

またウルード地区では、反体制武装勢力が旅客バスに仕掛けた爆弾が爆発し、市民1人が死亡、女性を含む10数人が負傷した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市南部で軍・治安部隊が反体制武装勢力と激しく交戦した。

一方、SANA(11月19日付)によると、反体制武装勢力がイドリブ市・マストゥーム村間の街道に仕掛けた爆弾が爆発した。死傷者は出なかった。

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ハサカ県では、SANA(11月19日付)によると、反体制武装勢力がハサカ市の中央銀行前に仕掛けた爆弾が爆発し、子供1人が死亡、その母親が負傷した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(11月19日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が「軍事評議会」の拠点などを攻撃し、多数の戦闘員を殲滅した。

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ヒムス県では、SANA(11月19日付)によると、ヒムス市バーブ・トゥルクマーン地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、サウジ人、ヨルダン人などを含む戦闘員を殲滅した。

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ラタキア県では、SANA(11月19日付)によると、カサブ町郊外の農園で破壊略奪行為を行う反体制武装勢力を軍・治安部隊が殲滅した。

国内の動き

SANA(11月19日付)は、反体制勢力が攻撃・制圧したと主要各紙が報じる「ハムダーン農業用空港」(ブーカマール市郊外)が、フランス委任統治時代に作られたシリアとイラクの中継点に由来している地区名であり、同地には空港は存在しない、と報じた。

反体制勢力の動き

アレッポ地域で反体制活動を行うイスラーム主義の大隊・旅団からなる編隊は、ユーチューブ(11月19日付)を通じてビデオ共同声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立を拒否すると発表、イスラーム国家の建設をめざすとの意志を示した。

al-Hayat, November 20, 2012

al-Hayat, November 20, 2012

タウヒード旅団のフェイスブック(11月19日付)上のページを通じて発表された声明において、彼らは「アレッポおよびその郊外の現地戦闘を行う我々の組織は…、いわゆる国民連立という陰謀的計画を拒否し、公正なイスラーム国家を樹立することで合意に達したことを宣言する」と明言した。

また「外国による連立の計画、国内で我々に対してあらゆる勢力が押し付けようとする評議会を拒否する」と付言した。

上記の合意に達した組織は、声明によると、シャームの民のヌスラ戦線、タウヒード旅団、シャーム自由人大隊、シリア自由人大隊、灰色のアレッポ・イスラーム旅団、イスラームの夜明け運動、ウンマの盾、アンダーン旅団、イスラーム大隊、ムハンマド軍旅団、ナスル大隊、バーズ大隊、スルターン・ムハンマド大隊、イスラームの盾旅団。

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一方、アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐はAFP(11月19日付)に対して、「この組織は、アレッポに存在する軍事勢力の一部に過ぎず、極論を表明しているだけだ…。これがすべての軍事勢力でない」と述べ、「アレッポ軍事評議会はシリア革命反体制勢力国民連立を支持し、協力する」と述べた。

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また、シャーム自由人大隊は声明を出し、タウヒード旅団などイスラーム主義者の編隊が出した共同声明に関して、「イスラーム国家をめぐるアレッポの戦闘編隊の声明に関して…、承認したことに根拠はない」と否定した。

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エジプトなどを主な活動拠点とする反体制勢力が共同声明を出し、11月23日から25日にカイロで大会を開催すると発表し、内外の反体制組織に参加を呼びかけた。

共同声明を出したのは、シリア民主フォーラム、自由人党、国民変革潮流、自由愛国主義者連合、シリア民主連立、シリア・クルド・ムスタクバル潮流、シリア革命統一戦線、無所属活動家ブロック、首都ダマスカスおよび同郊外革命統一評議会、新クサイル自由人調整、シリア自由人潮流、シリア正教連合党。

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国内最大の反体制勢力である民主的変革諸勢力国民調整委員会がダマスカスで記者会見を開き、シリア革命反体制勢力国民連立への否定的姿勢を明示した。

記者会見には、ハサン・アブドゥルアズィーム代表、ラジャー・ナースィル書記長が出席し、ナースィル書記長が声明を読み上げた。

アブドゥルアズィーム代表は、記者会見で、連立の結成に関して「反体制勢力の統合に向けたステップだが、すべての反対勢力を代表してない」と批判した。

そのうえで、連立結成のためのドーハでの大会に参加しなかったすべての反体制勢力と協議を重ね、「反体制勢力統合に向けたビジョンの統一」に至るよう呼びかけた。

一方、連立を「シリア国民の唯一の正統な代表として承認」したフランスの姿勢に関して、「現実に反している」と批判、それがフランスの国益から発した姿勢だと指弾した。

ナースィル書記長は、自らが読み上げた声明において、国内の反体制勢力の主要な基礎をなす民主的諸勢力国民調整委員会を「削除することにいかなるバランス感もないと強調した。

またドーハ会議への調整委員会の不参加が「民主的変革同様、反体制勢力の統合が、根本的・本質的に「国産」でなければならなず、外国の意思によるものであってはならない」との立場に起因することを明らかにした。

さらに、「投票箱を通じてすべての市民を支配する能力が確立されていないなかで、国民や革命の正統な代表だと主張することは、いかなる陣営にも認められない」と主張した。

その一方で、「ドーハ会議への不参加は、我々が反体制勢力の統合を断念したことを意味しない」と付言した。

このほか、アブドゥルアズィーム代表は、カイロでの反体制勢力の大会への参加を発表し、暴力停止と平和的な紛争解決をめざすとの意思を示し、シリア革命反体制勢力国民連立を含むすべての反体制勢力に参加を呼びかけた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長は『ハヤート』(11月20日付)に対して、「連立の内規は他の反体制勢力への組織の拡大や参加を認めている」と述べ、近く14の新たな組織の参加が総会で諮られることを明らかにした。その一方で、他の反体制組織との意見の相違があることを認めた。

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パリで活動するシリア民主世俗主義諸勢力連立は声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立の結成を、反体制勢力の枠組化と、自由、尊厳実現という革命の目的に向かったステップとして評価し、支持を表明した。

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自由ダマスカス運動なる武装組織が声明を出し、ダマスカス県の人民宮殿近くでアサド大統領の車列を襲撃し、20台の車輌を破壊し、乗っていた全員を殺害したと発表した(未確認情報)。

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在北京シリア大使間の書記官を名乗るフダー・ウルファリー女史がジャズィーラ(11月19日付)に出演し、政権からの離反を発表した。

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反体制活動家がユーチューブ(11月19日付)に映像を投稿し、「シリア革命総合情報機関(国民治安局)」と称する新たな治安・諜報機関を発足したと発表した。

映像では、「ウサーマ大佐」を名乗る活動家が機関を「支配集団、地域および国際社会におけるその同盟者の諜報システムに対抗するシリア革命の一勢力となるべく発足した」と発表した。

同機関の局長を自称するウサーマ大佐によると、同機関は、現地で活動するすべての政治・軍事勢力と「等距離」で諜報部門での支援と、シリア革命の民を保護する治安活動を行う、という。

映像では、ウサーマ大佐とともに、7人の武装した男たちが移っており、全員が黒服をまとい、机のうえにはコーランと銃が置かれていた。

クルド民族主義勢力の動き

民主連合党のサーリフ・ムスリム共同党首は「我々は自由シリア軍と衝突したくない。しかし、ラアス・アイン市でクルド人と戦う彼らは、トルコから命令を受けており、トルコから同市に進入してきた」と述べた。

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シリア・クルド・ムスタクバル潮流と同組織に近い諸調整は、「クルド青年運動総評議会」を結成した。

クルディーヤ・ニューズ(11月19日付)によると、同評議会は、アサド政権の打倒と新政治体制の構築をめざすという。

諸外国の動き

テヘランで開催中のシリア国民対話大会で、アリー・ハーメネイー最高指導者は、「すべての国の反体制活動家が外国からの武器で重装備したら、政府がそうした反体制活動家に対抗するのは当然だ…。シリアの反体制活動家が武器を放棄すれば、政府が反体制勢力の主張に耳を傾ける可能性が生じるだろう」と述べた。

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シリア革命反体制勢力国民連立の使節団(アフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長ら)がエジプトを訪問し、ムハンマド・アムル外務大臣と会談した。

会談で、アムル外務大臣は、連立とそれ以外の反体制組織の対話を求める一方、カイロに連立本部を設置することへの歓迎の意を示した。

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アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長はシリア革命反体制勢力国民連立への協力のありようを検討するためのEU外相会議(ブリュッセル)に出席、「もし我々がトルコからそうした防衛(パトリオット・ミサイル)の正式な要請を受け取ったら、我々はそれを緊急の要請とみなす…。必要な場合、(トルコを)防衛するのに必要なあらゆるプランがある」と述べた。

しかし「我々は航空禁止空域について議論しなかった。もしパトリオット・ミサイルの配備を余儀なくされた場合も、トルコを防衛するための純粋な自衛措置にとどまるだろう」と付言した。

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EU外相会議は、シリア情勢について協議し、シリア革命反体制勢力国民連立を「シリア国民の意思の正統な代表」とみなすことを承認した。

「シリア国民の正統な代表としての承認」と比べ、限定的な支持表明である。

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イタリアのマリオ・モンティ首相はカタールを訪問し、ハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣と会談した。

会談後の記者会見で、モンティ首相は、「シリア国民の正統な代表であるさまざまな反体制勢力が属するシリア革命反体制勢力国民連立を承認した」と述べた。

「シリア国民の唯一の正統な代表として承認」というフランスの姿勢に比して若干トーンダウンしたかたちでの承認。

一方、ジャズィーラ(11月19日付)のインタビューに対して、モンティ首相はシリア革命反体制勢力国民連立の「承認プロセスを直接に反映しない」と述べ、連立への武器供与に消極的な姿勢を示した。

AFP, November 19, 2012、Akhbār al-Sharq, November 19, 2012、Aljazeera.net, November 19, 2012、al-Ḥayāt, November 20, 2012, November 21, 2012、Kull-nā Shurakā’, November 19, 2012,
November 20, 2012、al-Kurdīya News, November 19, 2012、Naharnet, November
19, 2012、Reuters, November 19, 2012、SANA, November 19, 2012などをもとに作成。

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