アサド大統領が中国の民間衛星テレビ局「鳳凰衛視」の単独インタビューに応じる:「テロを打ち負かさない限り、具体的な政治的ステップを講じることはできない」(2015年11月22日)

アサド大統領は、中国の民間衛星テレビ局「鳳凰衛視」(フェニックス・テレビ)の単独インタビューに応じ、テロを打ち負かさない限り、具体的な政治的ステップを講じることはできないと述べるとともに、紛争発生当初から、テロと戦い、国民をまもる立場を取ってきたと強調した。

インタビューは英語で行われ、その全文は、SANAがhttp://sana.sy/en/?p=62206で、またアラビア語全訳はhttp://www.sana.sy/?p=300555で公開した。

またインタビュー映像はSANAがユーチューブ(https://youtu.be/1q3wmxX8CCI)を通じて公開した。

SANA, November 22, 2015

SANA, November 22, 2015

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インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

「今時の危機の定義に関して、これは内戦ではない。ある社会を分断する線があれば、内戦と言えるが、そうしたものはシリアにはない。内戦は国内的な要因によるものであって、国家、ないしは体制の転換をめざしているなどと公言し、テロリストを支援する国々が存在はしない…。つまりこれは戦争だ」。

「ロシア空軍がテロとの戦いに参加して以降、状況は改善している。シリア軍はほぼすべての前線で進軍していると言える」。

「米国、より正確に言うのなら米国の同盟がテロリストに対する戦いを開始してから1年以上が絶つ。しかし、その結果、テロリストは領土を拡大し、世界中からより多くの戦闘員をリクルートした。これに対して、ロシアが参加してから1ヶ月で、このテロ組織は数千人がシリアからトルコに撤退・逃走し、その一部は欧州、そしてイエメンなどに逃げていった。これが現実だ。第2に、(有志連合とロシア軍の空爆の違いは)方法論がある。空爆だけでテロと戦うことはできない。地上部隊が必要だ。だが、米国は航空機のみで戦っている…。これに対して、ロシアは地上で、シリア軍の支援を受けている。ロシアは我々と協力している。つまり、主な違いは、米国がいかなる地上部隊とも協力していないのに対して、ロシアは地上部隊と協力していることにある」。

「米軍とシリア政府との間には何らの協力関係もない。一度たりともコミュニケーション、連絡をとってはいない…。(ロシアと米国の連携は)公式に発表されているが、それはロシアと米国の航空機の衝突を避けるためだ」。

「米国は実際のところ、テロとの戦いで共闘してはいない。米国は一部の地域で一部のテロリストに対して行動を起こし、攻撃に曝されたくないと考えている一部の地域への攻撃を阻止しているだけだ…。しかし、テロリストがパルミラを攻撃しても…、米国は何もしなかった」。

「二つの意味で「反体制派」は実態として存在しない。まず、「反体制派」を定義する場合、それは民兵を意味しない…。マシンガンを持っていようと、民兵であろうと、テロリストであろうと、武器を持った者は反体制派ではない…。こうしたグループの大多数は、ダーイシュであれ、シャームの民のヌスラ戦線であれ、アル=カーイダとつながりがある…。穏健な反体制派について、国内外に政治的な反体制派がいると言うこともできる。こうした反体制派の一部は政治的にテロリストを支援しているが、テロに立ち向かい、政府を支援している者もいる」。

「(ロシアが空爆しているのは)反体制派ではない。彼らは一部の民兵とともに活動している。我々は一部の民兵とやりとりをしているが、それはシリアにおいて和解が必要だからだ…。こうした和解に関してシリアとロシアの間で連携がなされている。ロシアは最近になって連携をするようになったし、我々はロシアにそうするよう求めている。なぜなら、事態を改善し、将来平和をもたらすのにもっとも効果的だからだ」。

「ダーイシュもヌスラ戦線も、アフガニスタンで活動するアル=カーイダの分派だ…。彼らはソ連と戦うため、サウジアラビアの資金と米国の監督・教練のもとにアフガニスタンで結成された…。彼らのイデオロギーはワッハーブ主義、ワッハーブ・サウジ的イデオロギーだ…。サウジ王家がワッハーブ主義を正式に支援してきた…。兵站面において、ダーイシュへの支援は、人的資源であれ、資金であれ、石油の販売であれ、サウジアラビアとトルコの協力のもと、トルコを通じて行われている。もちろん米国と西欧諸国もこれを見て見ぬふりをしている…。こうした兵站面の空間、あるいは裏庭とでも言うべき場所がなければ、ダーイシュは生き延びることはできない。なぜならダーイシュはシリア国内に温床を持っていないからだ」。

「ダーイシュは我々の国において異質な存在だ…。実際にその部隊は、エルドアンとダウトオールの個人的な支援を受け、トルコからやって来ている…。(石油密売は)主にトルコを通じて行われている…。その資金はカタールとサウジアラビア経由でやって来ている…。ダーイシュはイラクを経由して石油を密売はできない。なぜなら、イラク政府はダーイシュと戦っているからだ。しかしトルコ政府はダーイシュを支援している。つまり、ダーイシュにとってのライフライン(生命線)はトルコのみを経由している」。

「トルコの現大統領の心はムスリム同胞団だ…。彼はアラブ世界でオスマン帝国をイスラームの名のもとに再興しようとしている。じぶんが世界を支配できると考えている。その唯一の障害がシリアだった…。サウジアラビアはワッハーブ主義的だ…。サウジアラビアはサウジ王家とワッハーブ主義が混ざり合ってできている…。しかし、これらの国がテロリストへの支援を止める用意があれば、我々との間に問題はない」。

「すべてのシリア人が反対している、あるいはすべてのシリア人が賛成しているというようなことを言うことはできない。人々は多様だ」。

「我々、そして私にとってもっとも重要なのは、憲法、そしてシステム全体、そして総じて国そのものが世俗的であるべきだということだ。世俗的というのは宗教に反対するという意味ではない。世俗的というのは信仰の自由を意味する。それは、すべての宗教の信者、すべての宗派、すべてのエスニック集団を一つの傘の下、すなわちシリアという傘の下に包摂できるシステムのことだ…」。

「(大統領への出馬は)私に与えられている権利だ。だが、「私は出馬します」とかしないとか言うのは時期尚早だ。それは私がシリア国民にどのような感情を抱いているかと関係している。つまり彼らが私を欲するかどうか、そして私がそれを受け入れるかどうかということだ。数年先のことについて話すことはできない。時期尚早だ」。

「ウィーン(での会議)は、選挙、新憲法などについて言及している。しかし最終的にシリア人が何を合意するかが重要で、そのためには対話が行われなければならない。だから、私はモスクワで(モスクワ電撃訪問時に)「モスクワ3会議に参加する用意がある」と述べた。なぜなら我々には対話が必要だからだ」。

「ロシアも我々も、テロを打ち負かさなければ、いかなる具体的な政治的ステップも講じられないと言ってきた。なぜならテロが最大の障害だからだ。すべてのシリア人にとってそれは主要な関心時だ。シリア人は治安と安全を欲している…。テロとの戦いと並行して、我々は対話を行う必要がある。しかし、具体的なステップは、テロリストを敗退させ、政府が主要な地域を制圧してからだ」。

(政治プロセス開始までの行程はあるかとの問いに関して)「ない。なぜならテロリストを打ち負かすための工程表がないからだ。これは戦争で、いつ敗北させられるかを定義などできない。なぜならそれは我々の進捗に関わる問題ではなく…、彼らが諸外国から受けている支援に関わる問題だからだ。しかし、西側、そして我々の地域の多くの国は政治的解決に何の関心を示していない。これらの国は、テロリストを支援すれば、(シリア)政府が転覆し、シリアが政治的に崩壊すると信じているだけだ。彼らは長引かせようとしているだけだ。

「しかし、もしテロリストを敗退させたあとのプロセスについて話すのであれば、すべては最大でも2年で完了すると言えるだろう」。

「中国との関係は悪化していないし、コミュニケーションも途絶えていない…。中国はシリア危機をめぐって4度にわたり拒否権を発動し、シリア政府、シリア国民を支援し、そして国際法や国連憲章に従ってきた。シリアと中国の関係は確固たるもので…、危機の影響を受けていない」。

「何よりもまず、(危機発生の)最初の日から、我々はテロと戦う決意をしていた。我々はそれ以外のいかなる姿勢もとっていない。我々はテロと戦い、国民を守りたい。次に、対話に関して、最初の日から、我々はあらゆる対話に対して門戸を開いてきた。これを受け入れた反体制派もいれば、拒否した者もいた…。我々は対話に向けて門戸を開き、テロと戦い続ける必要があると考えている。この姿勢を変えることはない」。

AFP, November 22, 2015、AP, November 22, 2015、ARA News, November 22, 2015、Champress, November 22, 2015、al-Hayat, November 23, 2015、Iraqi News, November 22, 2015、Kull-na Shuraka’, November 22, 2015、al-Mada Press, November 22, 2015、Naharnet, November 22, 2015、NNA, November 22, 2015、Reuters, November 22, 2015、SANA, November 22, 2015、UPI, November 22, 2015などをもとに作成。

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