2012年10月27日のシリア情勢

国内の暴力

シリア軍・武装部隊総司令部は声明を出し、武装テロ集団が26日に続き、27日も休戦違反を続けている、と発表した。

同声明によると、反体制武装勢力は、ダマスカス郊外県のドゥーマー市、ハラスター市、フーシュ・アラブ村、カタナー市、ヤブルード市、ダルアー県ターミル市、ヒムス県ヒムス市(バーブ・フード地区)、マフラム地方、ハマー県ハマー市、アレッポ県アレッポ市旧市街、カフルハムラ村、ハーン・アサル村、イドリブ県ワーディー・ダイフ地点、ハーミディーヤ市、ハーリム市、サルキーン市、アッラーナ村、ダイル・ザウル県ダイル・ザウル市などで検問所襲撃、仕掛け爆弾爆破などを26日晩以降行った。

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アレッポ県では、『ハヤート』(10月28日付)によると、アレッポ市アシュラフィーヤ地区で、反体制武装勢力(自由シリア軍)と民主連合党の民兵(人民防衛部隊(YPG)が交戦し、双方に合わせて8人の死者が出た。

アシュラフィーヤ地区は、クルド人が多く住んでいるが、アレッポ市内では比較的戦闘が少なく、避難民が押し寄せていた。

戦闘は26日晩/27日未明に始まった。

AFP(10月28日付)は、住民などの話として、反体制武装勢力の戦闘員約200人がアレッポ市アシュラフィーヤ地区に潜入し、人民防衛部隊と交戦した、と報じた。

これに関して、ユーフラテス通信(10月27日付)は、アレッポ市シャイフ・マクスード地区、アシュラフィーヤ地区の制圧を試みようとする自由シリア軍と、両地区のクルド人住民を保護する民主連合党の人民防衛部隊(YPG)との間で戦闘が発生したと報じた。

この戦闘は、アシュラフィーヤ地区でのデモに自由シリア軍が発砲することで発生した、という。

また自由シリア軍の発砲により、民間人10人が死亡、女性3人を含む25人が負傷、またYPGの兵士1人も重傷を負ってその後死亡した。

シリア人権監視団によると、この戦闘で、双方の戦闘員22人を含む30人が死亡した。

一方、SANA(10月27日付)もアレッポ市アシュラフィーヤ地区、マルジャ地区での市民のデモに反体制武装勢力が発砲し、2人が死亡したと報じた。

デモでは、反体制武装勢力の退去が求められていたという。

このほか、シリア人権監視団によると、アレッポ市サイイド・アリー地区などで激しい砲撃と交戦があった。

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クルディーヤ・ニューズ(10月27日付)は、自由シリア軍がハサカ県ハイヤーン町で約300人の身柄を拘束した、と報じた。

身柄拘束は、アレッポ市アシュラフィーヤ地区での人民防衛部隊(YPG)の応戦を停止させることが目的だという。

これに関して、自由シリア軍副司令官を名乗るマーリク・クルディーは、クルディーヤ・ニューズ(10月27日付)に、アレッポ市アシュラフィーヤ地区での人民防衛部隊(YPG)との戦闘激化を回避するために民主連合党と交渉している、としたうえで、ハイヤーン町で身柄拘束したクルド人をただちに釈放する、と述べた。クルディーはまた、アレッポ市アシュラフィーヤ地区への自由シリア軍の侵攻が、「民主連合党の実効支配を終わらせようとするサラーフッディーン・アイユービー大隊ら一部の政治勢力によって」行われたと述べた。

その後、クルド友愛調整は声明を出し、自由シリア軍がハイヤーン町で身柄拘束したクルド人全員を釈放したと発表した。

声明によると、自由シリア軍はフライターン市・ハイヤーン町間の検問所で公共交通機関を使って移動していた一般市民多数を身柄拘束していた。

またシリア人権監視団も、クルド人120人以上が釈放された、と発表したが、民主連合党も反体制武装勢力の戦闘員20人を捕捉していた、と付言し、自由シリア軍による市民の拉致を正当化しようとした。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装勢力がシャームの民のナスラ戦線とともに攻略を続けるワーディー・ダイフ基地近くのマアッラト・ターミル村が軍の空爆を受けた。

また『ハヤート』(10月28日付)によると、対トルコ国境に近いハーリム市で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦し、トルコ赤新月社の車輌が領内に入り、負傷者の搬出を行った。

戦闘は、同市近くで反体制武装勢力戦闘員が逮捕されたことをきっかけに発生した、という。

その後、自由シリア軍はハーリム市を制圧したと発表した。

一方、SANA(10月27日付)によると、イドリブ市で反体制武装勢力が軍・治安部隊に発砲、軍・治安部隊がこれに応戦した。

また同市内にカールトン・ホテルのゴミ集積所で反体制武装勢力が仕掛けた爆弾が爆発し、子供2人が負傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市に軍が空爆し、8人が死亡した。

この空爆に関して、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表は「休戦宣言後初の空爆だ…。この空爆で休戦は葬り去られた。もはや我々は休戦などと言っていられない」と述べ、「人権組織」であるにもかかわらず殺戮再開を容認し、武力紛争を煽る反体制組織としての実態を露わにした。

また、同監視団によると、ドゥーマー市などが砲撃を受け、2人が死亡、複数が負傷した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市のレストラン近くで爆弾が仕掛けられた車が爆発した。

しかしシリア人権監視団は、反体制武装勢力によるこうしたテロに対しては非難の意を示さなかった。

一方、シリア・アラブ・テレビ(10月27日付)は、このテロに関してシリア正教会前で自動車爆弾が爆発したと報じ、「武装テロ集団が休戦に違反した」と報じた。

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ダマスカス県では、SANA(10月27日付)によると、ジャルマーナー市で反体制武装勢力が通行人に発砲し、1人が死亡した。

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ヒムス県では、SANA(10月27日付)によると、アーティフィーヤ村、タッルカラフ市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。

国内の動き

ムハンマド・アブドゥッスィタール・サイイド宗教関係大臣がタルトゥース県タルトゥース市シャイフ・バドル地区での殉教者慰霊祭に出席し、反体制武装勢力との戦闘での戦死者の遺族を慰問した。

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サアド・ナーイフ保健大臣は、26日のダマスカス郊外県ダッフ・シューク市での爆破テロで負傷した市民を慰問した。

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アリー・アブドゥッラー・アイユーブ副参謀長がダマスカス県ティシュリーン軍事病院を訪れ、反体制武装勢力との戦闘での負傷兵を慰問した。

反体制勢力の動き

自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐は、イード・アドハーの休戦に関して「どの休戦のことか?休戦など嘘だ。体制は犯罪者なのに、どのように休戦を尊重できるのか?これはブラーヒーミーにとって失敗だ。彼のイニシアチブは死産だった…。軍は砲撃を止めていない」と非難した。

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シリア人権監視団は、休戦発効後の死者数(27日正午時点)が、民間人50人、兵士16人、反体制武装勢力6人にのぼると発表した。

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地元調整諸委員会は、26、27日両日で死者数が151人に達したと発表した。

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シリア国民評議会は声明を出し、10月26日に軍・治安部隊が各地で292件の停戦違反を犯したと発表した。

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シリア記者連盟は声明を出し、反体制武装勢力が拉致しているレバノン人記者フィダー・イーターニーの釈放を求めた。

クルド民族主義勢力の動き

民主連合党のスィーバーン・ハムウ人民防衛部隊(YPG)報道官は、クルディーヤ・ニューズ(10月27日付)に対して、アレッポ県アイン・アラブ市(コバーニー市)のクルド民族主義政党7党に対して、反体制武装勢力などが使用するフランス委任統治時代のシリア国旗を掲揚しないよう要請した。

またハムウ報道官は、シリアの反体制勢力がクルド民族の生存権を認めようとせず、自由シリア軍がクルド人市民を殺害している、と非難した。

レバノンの動き

NNA(10月27日付)は、レバノン人ジャーナリストのフィダー・イーターニーがアレッポ県アアザーズ市の反体制武装勢力に拉致された、と報じた。

イーターニーは『アフバール』、LBCIなどの記者を務める。

アアザーズ調整はフェイスブック(10月27日付)で、拉致の理由に関して、「彼の活動はシリア革命の路線に一致しない…。イーターニーが反革命勢力に関与していることは証明されていないが、革命勢力が制圧した地域で彼の記者としての滞在はもやは認められない」と綴った。

ジャディード・チャンネル(10月27日付)は、ムスタクバル潮流のウカーブ・サクル議員がイーターニー記者の釈放の仲介を行っている、と報じた。

諸外国の動き

トルコ軍参謀長は、米軍が対シリア国境地域に軍を派遣したとの一部トルコ紙の情報を否定した。

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ハマースのイスマーイール・ハニーヤ首相は、イード・アドハー礼拝後に演説を行い、シリア情勢に関して、「自由、尊厳、安心できる国家を求めるシリア国民から不正の手を引くべき」と述べ、アサド政権を批判した。

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イラク・イスラーム教ウラマー委員会のハーリー・ダーリー事務局長は、シリア情勢に関して、「(アサド政権は)アラブ諸国と国際社会のあらゆるイニシアチブを利用すべきだ…。なぜならそこに危機の出口があるからだ」と述べた。

AFP, October 27, 2012、Akhbār al-Sharq, October 27, 2012、al-Ḥayāt, October 28, 2012、al-Jadīd, October 27, 2012、Kull-nā Shurakā’, October
27, 2012, October 29, 2012、al-Kurdīya News, October 27, 2012, October 29,
2012、Naharnet, October 27, 2012、NNA, October 27, 2012、Reuters, October
27, 2012、SANA, October 27, 2012などをもとに作成。

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