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国内の暴力
自由シリア軍の「ムハンマドの末裔旅団」を名のる反体制武装勢力がダイル・ザウル県で、軍のMiG23を14.5ミリ対空砲で撃墜したと発表し、映像を公開した。
http://www.youtube.com/watch?v=VSyTcvkvD_o&feature=youtu.be
しかし『ハヤート』(8月14日付)によると、撃墜された戦闘機の映像が一撮影されたものかは明らかではない。
一方、自由シリア軍国内合同指導部(カースィム・サアドッディーン大佐)はAFP(8月14日付)に対して、「14.5ミリ対空砲でMiG21を撃墜したことを確認した」と述べた。
また『ハヤート』(8月14日付)は活動家の話として、MiG21がムー・ハサン市に墜落したと語った。
その後、撃墜された戦闘機のパイロットだというムフィード・ムハンマド・スライマーン准将が、兵士3人に取り囲まれてビデオに出演し、「ムーハサン市空爆の命令を受けた」ことを認める一方、「この悪党から離反」するようシリア軍兵士に呼びかけた。
http://www.youtube.com/watch?v=2VIanTZ2uG0
スライマーン准将はまた、顔のあざの原因を聞かれ、「墜落の結果だ。風が強かったため、石や砂利が当たった」と答え、拷問による傷でないことを強調させられた。
しかしスライマーン准将は軍服を着ておらず、軽装に着替えていた。
これに対してSANA(8月13日付)は、軍消息筋の話として、「シリア北部で戦闘機が通常の訓練飛行中に…技術的な故障により操縦装置が故障し、飛行続行不能となり、パイロットは脱出用パラシュートで脱出した」と報じた。
反体制武装勢力が撃墜したとされるMiG23のパイロットのムフィード・ムハンマド・スライマーン准将の妻子がアフバール・バラド(8月13日付)で、自由シリア軍に対して、「シリア・アラブ軍の道徳を体現した」同准将の任務が「無実の市民の殺戮などということはあり得ない」と主張、解放を求めた。
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ヒムス県では、SANA(8月13日付)によると、ヒムス市シャンマース地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジト(爆弾製造所)に突入し、大量の爆発物を押収した。
またクサイル地方でも軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに突入し、戦闘員多数を殺傷した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団などによると、アレッポ市サイフ・ダウラ地区に軍・治安部隊が突入した。
またシリア革命調整連合によると、アレッポ市のブスターン・カスル地区、サイフ・ダウラ地区、マサーキン・ハナーヌー地区などに対して軍・治安部隊が砲撃を続けた。
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イドリブ県では、SANA(8月13日付)によると、アリーハー市で軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」の追跡を行った。
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ラタキア県では、SANA(8月13日付)によると、ラタキア市で軍・治安部隊が反体制武装勢力を摘発した。
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ダルアー県では、SANA(8月13日付)によると、サナマイン市など各地で軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」の追跡を継続し、戦闘員多数を殺傷した。
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ダマスカス県では、シリア情報センター(8月13日付)によると、マッザ区で激しい爆発音が聞こえ、また、タダームン区では軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ジュダイダト・アルトゥーズ町での砲撃で1人が死亡した。
反体制勢力の動き
クルディーヤ・ニュース(8月13日付)は、ハサカ県で離反兵が革命軍事評議会の結成を宣言した、と報じた。
同報道によると、離反兵の多くはクルド人で、ムハンマド・アリー・ハマド大佐が司令官を務めている。
同評議会はアサド政権の打倒をめざすとともに、ハサカ県の社会的統合の維持、同県のシリア・アラブ地域の一部としての維持を掲げている。
レバノンの動き
アラビーヤ(8月13日付)は、シリアの反体制武装勢力がヒズブッラーの戦闘員を拘束したとし、その映像を放映した。
映像ではハッサーン・サリーム・ミクダードを名のる人物が、ハサン・ナスルッラー書記長の指示のもと、250人のヒズブッラーの戦闘員とともにシリアに潜入し、ダマスカス郊外県サイイダ・ザイナブ町に駐留し、「シリアのシーア派体制」を支援した、との証言を行った。
http://www.youtube.com/watch?v=CJAQRzctWF0&feature=player_embedded
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アラビーヤの報道に関して、ヒズブッラーは声明を出し、事実は異なると否定した。
諸外国の動き
『ハヤート』(8月14日付)によると、複数の消息筋の話として、サウジアラビアのメッカで開催されているイスラーム諸国会議機構の特別首脳会議で、加盟国外相がシリアの加盟資格停止を提言し、これが閉幕声明で宣言されることが決まった。
同消息筋によると、シリアの加盟資格停止をめぐっては、複数の加盟国が、国連憲章第7章に基づく介入を招きかねない安保理へのシリア問題の付託を拒否した。
またパキスタン、カザフスタンは、シリア国内の暴力の責任を自由シリア軍と軍の双方に対して追求することを提案した。
さらにイランは加盟資格停止の提言を拒否した。
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AFP(8月13日付)によると、ヨルダン領内のザアタリー・シリア人避難民キャンプで暴動が発生し、ヨルダンの警察が強制排除した。
匿名の高官が語ったところによると、約60人のシリア人避難民がキャンプを離れ、対シリア国境のラムサー市に戻ろうとして警察と衝突したという。
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イランの反体制組織、イラン国民抵抗評議会はパリで声明を出し、ダマスカス郊外県で拉致されたイラン人巡礼者のなかにイラク革命防衛隊のメンバー1人が含まれていると発表した。
AFP, August 13, 2012、Akhbar al-Balad, August 13, 2012、Akhbar al-Sharq, August 13, 2012、Alarabia.net, August 13, 2012、al-Hayat, August 14, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 13, 2012、al-Kurdiya News, August
13, 2012、Naharnet.com, August 13, 2012, August 14, 2012、Reuters, August
13, 2012、SANA, August 13, 2012などをもとに作成。
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