2012年8月14日のシリア情勢

シリア政府の動き

国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長はシリアを訪問し、ワーイル・ナーディル・ハルキー首相、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣、シリア赤新月社高官らと会談し、民間人への緊急支援増大などについて協議した。

al-Ḥayāt, August 15, 2012

al-Ḥayāt, August 15, 2012

 

反体制勢力の動き

『ハヤート』(8月14日付)は、ハマー県郊外の自由シリア軍の士官が、「ああ、(シャームの民の)ヌスラ戦線や(対トルコ国境のバーブ・ハワー国境通行所を占拠するとされる)シャーム自由人大隊のなかにシリア人以外の戦闘員がいるが、外国人の割合は前者で20%、後者で5%に過ぎない」と語ったと報じた。

同紙によると、戦闘員をシリア人かどうか見分けるのは困難だという。

同紙は、イドリブ県サラーキブ市でシャームの民のヌスラ戦線幹部への取材を申し入れ拒否されたが、同幹部入り口にいるシリア人戦闘員たちは、リビア人、ヨルダン人、サウジ人の戦闘員がいる、と証言した。

またファールーク大隊司令官のハサン・アブドゥッラッザークもまた、外国人戦闘員に関する取材を拒否した。

なお同紙によると、外国人戦闘員の参加、とりわけバーブ・ハワー国境通行所の占拠は、地元住民の間で非難の的となっている。

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ロイター(8月14日付)は、リビア人を父、アイルランド人を母に持つフサーム・ナッジャールなる戦闘員の話として、リビアの反体制活動に参加していた民兵がシリアに入り、シリアの反体制武装勢力の教練・組織を行っている、と報じた。

ナッジャールは、カタールの支援のもとムアンマル・カッザーフィー政権に対する反体制運動に参加したリビア系アイルランド人のマフディー・ハラーティーが率いる民兵の狙撃兵で、5ヶ月前にダブリンから呼び寄せられ、シリアで活動している、という。

ハラーティーが率いる民兵(ウンマ旅団)は、約20%の兵士がリビア人からなっており、残りの兵士はシリア人だと述べる一方、「アラブ世界出身の数千人のスンナ派戦闘員が周辺諸国におり、(シリアの)問題に関与する準備をしている」という。

ナッジャールは、反体制武装勢力が自由シリア軍の名の下に活動しているが、地元の指導者どうしの調整が弱く、「革命が遅れている最大の要素は反体制勢力の統一の欠如だ」と指摘するとともに、問題は「もはやアサド打倒ではない。シリアのスンナ派イスラーム教とが国を取り戻し、数世代にわたって彼らを弾圧してきたマイノリティを排除することだ」と強調した。

なお『アイリッシュ・タイムズ』(7月28日付)によると、ハラーティーは2011年11月頃、人道的な活動を行うためにシリアに入ったが、その後リビアでの反体制運動の経歴ゆえにシリア人反体制活動家が接近し、ウンマ旅団を結成したという。

同報道によると、ウンマ旅団は6,000人以上の兵士を擁し、うと90%がシリア人、残りがアラブ人やアイルランド人だという。

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リヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相はヨルダンの首都アンマンで記者会見を行った。

記者会見で、ヒジャーブ前首相は、アサド政権を「アッラーの敵」と評し、「物的、道徳的、経済的に崩壊しつつあり、軍事的に分裂している」と述べ、同政権が「国土の30%しか掌握していない」と断じた。

また軍の将兵に「シリア・アラブ軍の自由人」と呼びかけ、「君たちが偉大なる国民の側につき、その神聖さ、領土、そして賢明なる国民の血を護るだろうと確信する」と述べた。

一方、サウジアラビア、カタール、トルコに対して「国民の革命支援のための努力継続」を呼びかけるとともに、「現在も将来も、解放されたシリアにおいていかなる地位に就くことも求めていない」と述べ、自身の離反が政権の抑圧激化への反発であることを強調した。

自身のヨルダンへの逃走については、「8月5日に離反し…、出国には3日を要した」ことを明らかにした。

Kull-nā Shurakā', August 15, 2012

Kull-nā Shurakā’, August 15, 2012

反体制勢力に対しては「在外の反体制勢力諸派はこれまで以上にその努力を結集することを求められている」と述べ、自身が「国民の正当な要求を擁護する献身的な一兵卒として国民の革命以外の何ものも支持しない」と主張した。

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国内で反体制活動を行う民主的諸勢力国民調整委員会が声明を出し、イード・フィトル前にすべての当事者に一時停戦に応じるよう呼びかけるとともに、停戦発効を受けて、すべての逮捕者、人質の釈放、食料・医療物資の配給を行い、そのうえで政治プロセスを通じて政権移行を行うよう提案した。

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反体制活動家のハイサム・マーリフ暫定政府首班(シリア革命評議会)は『ハヤート』(8月15日付)に対して、イスラーム諸国会議機構の主導のもとイスラーム諸国合同軍を発足し、シリア人保護のために派遣することを提言する一方、国際社会にアサド政権の正統性を否定するよう呼びかけた。

シリア国民評議会との関係について、「メディアでの会見に活動を限定していた執行委員会と対立していただけ」と述べ、反体制勢力が共通の政治的ビジョンを持っていると主張した。

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シリア国民評議会のサダード・アッカード広報センター長は、『ハヤート』(8月15日付)に対して、「反体制勢力の統一は不可能だが、シリア国民評議会は100カ国以上に承認され、シリアの友連絡グループの会合も4度開催された」と述べた。

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シリア国民評議会のバッサーム・イマーディー氏は、ミシェル・サマーハ元情報大臣の逮捕に関して、『ナハール』(8月14日付)に対して、「アサド政権はレバノンで最も危険なカードを切る危険を冒そうとしている」と評した。

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離反した外交官ラミーヤー・ハリーリー女史はAKI(8月14日付)に対して、自身の家族が政権から「復讐的措置」を受けている、と述べた。

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ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団は、2011年3月以降の死者数が民間人16,142人、離反兵1,081人、軍兵士5,842人に上ったと発表した。

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シリア国家建設潮流は声明を出し、ダマスカスで開催を予定していたシリア国民救済大会を8月28日に延期すると発表した。

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Kull-nā Shurakāʼ, August 15, 2012

Kull-nā Shurakāʼ, August 15, 2012

シリア・クルド国民評議会事務局が定例会合を開き、ファイサル・ユースフ氏(シリア・クルド進歩民主党政治局メンバー、同党改革運動報道官)を同評議会事務局長に選出した。

これまで同評議会の代表はシリア・クルド民主党パールティーのアブドゥルハキーム・バッシャール書記長が務めてきた。

なおこれに合わせて、以下のメンバーからなる新事務局を選出した。

ファイサル・ユースフ事務局長
ハーリド・ジャミール・ムハンマド(クルド作家連合)
ダルシャー・アイユー

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フェイスブック(8月14日付)で、アレッポ市中央郵便局で反体制武装勢力が殺害した政権協力者(シャッビーハ)の遺体を投げ捨てる映像が公開された。

http://www.youtube.com/watch?v=0y0gKfoCJ8w

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イスラーム旅団アンマール・ブン・ヤースィル大隊なる反体制武装勢力はユーチューブ(8月14日付)でクナイトラ地区局長のフサーム・ハイダル准将を拉致したと発表した。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団などによると、アレッポ市サイフ・ダウラ地区に対する軍・治安部隊の砲撃が行われる一方、反体制武装勢力が依然立て籠もっているサラーフッディーン地区などで散発的な戦闘が続いた。

一方、アレッポ市バーブ街道地区、理学部地区、ブスターン・カスル地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の追跡を継続し、多数の戦闘員を殺傷した。

またアレッポ市サラーフッディーン地区で仕掛け爆弾を解除したほか、大量の武器弾薬を押収した。

このほかアターリブ市、アッサーン村、アンダーン市などで反体制武装勢力への掃討作戦を継続した。

ロイター(8月15日付)は、反体制武装勢力が占拠するアレッポ市シャッアール地区にあるダール・シファー病院を軍・治安部隊が砲撃し、1人が負傷した、と報じた。

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ダマスカス郊外県では、シリア国民評議会によると、タッル市、ハジャル・アスワド市、スバイナ地区に軍・治安部隊が激しい砲撃を加えた。

一方、SANA(8月14日付)によると、タッル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力の掃討作戦を継続し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダマスカス県では、AFP(8月14日付)によると、マイダーン地区、シャーグール区で治安部隊による大規模な逮捕・摘発が行われた。

地元調整諸委員会によると、アサーリー地区が砲撃に曝されたという。

シリア人権監視団によると、カフルスーサ区で仕掛け爆弾が爆発した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、タファス市が砲撃に曝され、女性1人が射殺された。

一方、SANA(8月14日付)によると、反体制武装勢力がダルアー市でマアムーン・ズウビー県保険局次長を暗殺した。

またハーッラ市などでは、軍・治安部隊が反体制武装勢力の掃討作戦を継続し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ヒムス県では、SANA(8月14日付)によると、クサイル地方で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。

諸外国の動き

米財務省は、ヒジャーブ前首相の資産凍結解除を決定した。

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レオン・パネッタ米国防長官はAP(8月14日付)に対して、米国がシリア領空での飛行禁止空域の設置を「緊急事態」として検討しているとしつつ、実施には「非常に重大な政治決定が必要となるが、そうした決定はなされてない」と述べた。

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マーティン・デンプシー米陸軍参謀長は記者会見で、イラクでマフディー軍を教練した例に倣い、イランがシリアで民兵の教練を行っている、と指摘した。

デンプシー参謀長は、「シリア軍は18ヶ月も戦っている。どんな軍でもこのような状態では崩壊する…。それゆえイランがゲームに参加し、民兵を教練している」と述べた。

また反体制武装勢力によりMiG23撃墜に関しては、「対空ミサイルを保有していると考えることは現段階では間違いだ」と述べ、軽火器で撃墜されたのだろうとの見方を示した。

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スイス政府は、シリア・アラブ航空、綿販売公社、ドゥライキーシュ・テクノロジー社に対して追加制裁を行うことを決定、スイス国内での操業を停止した。

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スウェーデンのストックホルムにあるシリア大使館前で反体制デモが行われ、スウェーデン警察がデモ参加者10人を拘束した。

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国境なき記者団は、自由シリア軍のリヤード・アスアド司令官、シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長に宛てた公開書簡を発表し、政府系メディアの記者・職員への攻撃エスカレートへの懸念を表明した。

AFP, August 14, 2012、Akhbār al-Sharq, August 14, 2012, August 15, 2012、AKI, August 14, 2012、al-Ḥayāt, August 14, 2012, August 15, 201, August 16, 2012、The Irish Times, July 28, 2012、Kull-nā Shurakāʼ, August 14, 2012, August 15, 2012, August 17, 2012、al-Nahār, August 14, 2012、Naharnet.com, August 14, 2012、Reuters, August 14, 2012、SANA, August 14, 2012、Youtube, August 14, 2012などをもとに作成。

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