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国防大臣、副大統領補佐官、副参謀長爆殺(ダマスカス県)
SANA(7月18日付)は、ダマスカス県中心に位置するラウダ地区の民族治安局(バアス党地域指導部国家安全保障局)で「爆弾テロ」があり、ダーウド・ラージハ国防大臣、ハサン・トゥルクマーニー副大統領補、アースィフ・シャウカト副参謀長が暗殺されたと報じた。
また各紙によると、ムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣、ヒシャーム・ビフティヤール・バアス党シリア地域指導部メンバー(国民安全保障会議メンバー)が負傷した。
爆発は、国内治安対策を話合う会合を狙ったものと見られ、AKI(7月18日付)によると、爆発は建物の外ではなく内部で起きた。
『ハヤート』(7月19日付)は、シリアの治安筋の話として、閣僚や治安関係者が集まっていた民族治安局ビル内のホールで「自爆犯が爆弾の仕掛けられたベルトを爆発させた」と報じた。
またマナール(7月18日付)は、治安機関高官と関係のある人物がビルに入ったあとに爆発があった、と報じた。
ロイター通信(7月18日付)は、治安消息筋の話として、実行犯がアサド大統領に近いサークルに属する守衛だったと伝えた。
爆発が起きたビルは米大使公邸やトルコ大使館から数百メートルの場所にある、という。
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またこの暗殺事件と時を一にして、各地で軍・治安機関の施設襲撃、高官暗殺の情報が錯綜した。
そのほとんどは事実関係が明らかとなっていないが、主な報道は以下の通り。
『クッルナー・シュラカー』(7月18日付)は、自由シリア軍の複数の消息筋の話として、爆発現場にマーヒル・アサド大佐もおり、重傷を負ったと報じたが、事実関係は明らかでない。
アラビーヤ(7月18日付)などは、マーヒル・アサド大佐が事実上の司令官を務める第4(機構)師団で爆発があったと報じたが、その後否定した。
『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、総合情報部内務課ダマスカス班長を務めるハーフィズ・マフルーフ准将の執務室長のユースフ・イブラーヒーム大佐が任務遂行中にドゥーマーで殺害されたと報じた。
ジャズィーラ(7月18日付)は、シリア空軍のアブドゥルムンイム・ハリーリー大佐とズィヤード・トゥラース准将が離反し、ヨルダンに逃走したとの速報を流した。
シリア・ステップス(7月18日付)は、爆発で負傷したヒシャーム・ビフティヤール少将が両脚に重傷を負い、切断したものと思われると報じた。
アラビーヤ(7月18日付)は、総合情報部内務課のハーフィズ・マフルーフ准将も爆発に巻き込まれて死亡したと報じた。
しかしマヤーディーン(7月18日付)は、総合情報部内務課のハーフィズ・マフルーフ准将が会議に出席していなかったと報じ、死亡報道を否定した。
【解説】
「爆弾テロ」の標的となった民族治安局ビルは、バアス党シリア地域指導部内の民族治安局の施設である。同局は1960年代末にシリアにおいて活発な治安維持機関、諜報機関として活動したが、ハーフィズ・アサド前政権以降は影響力を低下させ、2009年7月の国民安全保障会議(ないしは国民治安会議)の発足をもって解体された。
国民安全保障会議の構成員・活動については不明な点が多いが、発足時のメンバーはファールーク・シャルア副大統領、ムハンマド・サイード・バヒーターン・バアス党シリア地域指導部副書記長、ヒシャーム・ビフティヤール同指導部メンバーで、ムハーバラートの活動を調整・統括することが主な任務だと考えられる。
「爆弾テロ」の標的になったのは、国民安全保障会議の会合だと考えられる。
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ラージハ国防大臣、トゥルクマーニー副大統領補、シャウカト副参謀長の死亡により、アサド政権の軍・治安体制は大きな打撃を被ったものと考えられるが、そのいずれもが「閑職」ないしは「上がり」として職務に就いており、政権におけるその役割は誇張されるべきではないだろう。
例えば、シャウカト副参謀長は、アサド大統領の姉のブシュラー・アサド女史の夫で軍事情報局長を務めたこともある「大統領の右腕」を目された人物であるが、2007年7月のイスラエル空軍機によるキバルの核疑惑施設空爆や、2008年2月のヒズブッラーのイマード・ムグニーヤ氏のダマスカスでの暗殺の責任を追及されるかたちで失脚し、副参謀長職に甘んじていた。
またトゥルクマーニー副大統領補は、軍の定年に伴い国防大臣職を解かれたのち、「副大統領補佐官」という新設ポストを与えられ、政権に協力し続けてきた。
さらにラージハ国防大臣は、トゥルクマーニー副大統領補の退役に伴い、「エスカレーター」式に参謀長から国防大臣に就いた経緯があり、アサド政権が重視する「制度的思考」に基づき機会的に登用されていたに過ぎない。
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残された軍・治安機関の高官が、今後どのようなかたちで政権運営に参与するかは依然として不透明であるが、その多くが治安対策に関しては強硬な主張の持ち主、ないしは強硬な政策の実施者であることを踏まえると、シリアにおける暴力はこれまで以上に大規模化・激化する可能性が高い。
残された主な軍・治安機関の高官は以下の通り以下の通り。
ルストゥム・ガザーラ准将:軍事情報局ダマスカス郊外県課長。
アブドゥルファッターフ・クドスィーヤ少将:軍事情報局長。
ヒシャーム・ビフティヤール少将:バアス党シリア地域指導部メンバー。
アリー・マムルーク少将:総合情報部長。
ムハンマド・ナースィーフ:副大統領補。
ジャミール・ハサン少将:空軍情報部長。
ディーブ・ザイトゥーン少将:政治治安部長。
ムハンマド・サイード・バヒーターン:バアス党シリア地域指導部副書記長。
マーヒル・アサド大佐:共和国護衛隊。アサド大統領の実弟。
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シリアのムハーバラートについてはhttp://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/syria/m/02.htmを参照。
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なおSANA(7月18日付)などシリア公式筋は、シャウカト副参謀長を「国防副大臣」としているが、彼が「副大臣」に任命された事実は確認できない。
その他の国内での暴力
ダマスカス県では、SANA(7月18日付)によると、マイダーン地区での反体制武装集団の「残党」に対する掃討作戦が継続され、多数のテロリストを殺害、逮捕した。
またカーブーン区、ティシュリーン地区でも逃走する反体制武装集団戦闘員の追跡が行われ、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市、スバイナ町では治安部隊が反体制武装集団と交戦した。
『ハヤート』(7月19日付)も、アサーリー地区、タダームン区、ハジャル・アスワド市などで治安維持部隊と反体制武装集団の交戦が続いたと報じた。
一方、ロイター通信(7月18日付)によると、マイダーン地区の旧市街、ザーヒラ地区は反体制武装集団に占拠され、軍の戦車・装甲車が入れない状態だという。
またバルザ地区には戦車が展開、対空砲が設置され、カーブーン区に砲撃を加えたという。
このほか、複数の活動家や住民によると、早朝、ドゥンマル区西部の人民宮殿(迎賓館)の兵舎が反体制武装集団の攻撃に曝され、銃声が聞こえたという。
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イドリブ県では、SANA(7月18日付)によると、治安維持部隊がサルキーン地方、カフルタハーリーム地方で反体制武装集団の掃討作戦を継続、甚大な被害を与えた。
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ヒムス県では、SANA(7月18日付)によると、クサイル市近郊のジャウラ村、ニザーリーヤ村、ラブラ村、ズィラーア村で、治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、甚大な被害を与えた。
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『ザマーン・ワスル』(7月18日付)は、ダルアー県に展開していた戦車35輌が、ダマスカス国際空港(ダマスカス郊外県)に続く街道に再展開した、と報じた。
同報道によると、反体制武装集団が空港への街道を制圧することを回避するための再展開だという。
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『クッルナー・シュラカー』(7月18日付)は、シャリーフ・シハーダ人民議会議員の妹ラナー・シハーダ氏が自由シリア軍に誘拐された、と報じた。
シリア政府の動き
アサド大統領は2012年政令第275号を発し、ファフド・ジャースィム・フライジュ中将を軍・武装部隊副司令官に任命した。
また同第276号で、フライジュ中将を国防大臣に任命した。
フライジュ中将は1950年1月生まれ。出身地はハマー県。
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フライジュ新国防大臣は就任に合わせて声明を発表、「武装部隊の兵士たちは、こうした臆病なテロ行為によって、犯罪テロ集団残党の追跡という自らの神聖なる任務の継続を放棄することはない」との強い意思を示した。
またシリア・アラブ・テレビ(7月18日付)の取材に対して、ジャズィーラやアラビーヤの報道が「ウルーバ(アラブ性)に敵対して、事実無根」と非難した。
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軍・武装部隊総司令部は声明を出し、ダマスカスでの爆弾テロに関して、「殺人犯罪集団の根絶と追跡を継続する」と強調するとともに、「一部の司令官を標的とすることでシリアの力をくじくことができると想像している者がいるとしたら、そうした者は幻想家だ。なぜなら、シリアの国民、軍、指導部は今日、テロの挑戦に対してあらゆる手段でこれまで以上に強く抵抗しているからだ」と述べた。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=vPSbqqldQNg
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情報省は声明を出し、西側メディアや湾岸アラブ諸国のメディアが発信するシリア情勢に関する映像は「事実無根」だと発表した。
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ウムラーン・ズウビー情報大臣はシリア・アラブ・テレビ(7月18日付)に出演し、国防大臣らの暗殺を「シリア・アラブ国軍、その将兵、さらには民間人、国家機関への攻撃」と非難するとともに、「米国、西側、そしてイスラエルのシリアに対する陰謀の最終章」と述べ、断固たる姿勢で臨む意思を示した。
また、カタール、サウジアラビア、トルコ、イスラエルの諜報機関、さらには西側および湾岸アラブ諸国政府に、シリアの現下の危機の法的、政治的、道義的責任がある、と断罪し、これらの国が反体制勢力に武器、資金援助をしていることを非難した。
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バアス党シリア地域指導部が声明を出し、国防大臣らの暗殺を非難したうえで、「イスラエルを筆頭とする悪の勢力に支援されたテロによってもシリア国民の力をくじくことはできないだろう」と述べ、徹底抗戦の構えを示した。
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ダマスカス・ニュース・ネットワーク(7月18日付)が報じたところによると、シリア・インターネット軍司令官のアンマール・イスマーイール氏はフェイスブックを通じて活動停止を発表した。
活動停止の理由は、反体制運動への恐怖ではなく、犠牲者への哀悼の意を示すためだという。
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SANA(7月18日付)によると、ダマスカス県のユースフ・アズム広場で、若者が数十人が集まり、テロ反対を訴えた。
反体制勢力の動き
自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐(報道官)は、ダマスカス県での国防大臣らの暗殺に関して、「この特別作戦はダマスカス火山、シリア地震作戦の一環」と述べ、自由シリア軍の関与を認めるとともに、「アサド政権打倒に向けた一連の特別作戦の始まりに過ぎない」と付言した。
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ユーチューブ(7月18日付)では、サハーバ大隊の司令官の一人だというアフマド・ムハンマド・タクタク中尉なる軍服姿の男性が、声明を読み上げ、国防大臣らに対する暗殺を実行したと発表した。
自由シリア軍の士官だと自称するこの男性は、「私、アフマド・ムハンマド・タクタク中尉、「ダマスカスおよび同郊外のサハーバ大隊」の現場の司令官の一人は、サハーバ大隊の名において、同大隊に所属する特殊任務連隊が作戦を実行したことを発表する」と述べた。
またこの男性によると、この特殊任務連隊は「いわゆるシリアの危機管理細胞の面々を2ヵ月にわたって監視する作戦を実行した。そして我ら英雄の一人が現場に入り、作戦を実行し、彼らを殺害した」という。
この連隊は5月19日にも、ラージハ国防大臣、シャウカト副参謀長らを毒殺したと発表している(http://www.ac.auone-net.jp/~alsham/2012_05/19.html)。
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イスラーム旅団を名のるグループがフェイスブックを通じて声明を出し、国防大臣らを暗殺したと発表した。
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『アクス・サイル』(7月18日付)は、シリア政府に近い消息筋の話として、ダマスカス県での国防大臣ら暗殺の背後にマナーフ・トゥラース准将がいる可能性が高いと報じた。
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自由シリア軍の「調整軍需局」を名のる組織が声明を出し、「ダマスカス解放作戦」を開始したと発表した。
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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、国防大臣らの暗殺に関して、「シリアの歴史の転換点」と述べ、アサド政権への圧力がまし、数週間から週ヵ月のうちにその崩壊が生じるだろう、との見方を示した。
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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、ダマスカス県内での国防大臣らの暗殺に関して、「バッシャール・アサドと抑圧を続ける彼の悪党たちが選んだことの直接の結果」と述べ、「治安体制への大いなる浸透は…、体制が手負いのトラ(オオカミ)になったことを示している」と評した。
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トルコで避難生活を送る自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐は、UAE日刊紙『バヤーン』(7月18日付)で、アサド政権が民間人や反体制勢力に化学兵器を使用することを懸念していると述べた。
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『ハヤート』(7月19日付)は、イスタンブール在住のファウワーズ・タッルー氏の話として、反体制武装集団は兵站線が延びているため、これまでと同じく戦術的撤退をするだろう、と報じた。
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国内で反体制活動を続けるシリア国家建設潮流は声明を出し、ダマスカス県での戦闘激化とラージハ国防大臣らの暗殺に関して、すべてのシリア人のためにならない混乱が発生すると警鐘をならすとともに、煽動的な国営メディア、外国メディア、SNSの情報に依拠せず、知性と友愛をもって対処するよう国民に呼びかけた。
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パリで活動するシリア民主世俗主義諸勢力連立はラージハ国防大臣らの暗殺を受けて、声明を出し、シリア国民に街頭デモ、政府機関などの襲撃を通じて、革命を実現するよう唱導した。
レバノンの動き
北部県トリポリ市で、国防大臣らを狙ったダマスカスでの爆弾テロを祝うデモが発生し、ジャバル・ムフスィン地区(親アサド)とバーブ・タッバーナ(反アサド)地区の間で銃撃戦となり、1人が流れ弾に当たって死亡、1人が負傷した。
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ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長がレバノン紛争(2006年)での戦勝記念のテレビ演説を行い、シリアを「レジスタンスの真の軍事的支援者」と絶賛するとともに、ダマスカスで暗殺された国防大臣らを「殉教指導者」、「同志」と呼び、「シリアを保全し、唯一の解決策は対話を受け入れることだ」と強調した。
そのうえで「米国はシリア国民の正当な要求を利用し、対話を妨害し、シリアを戦争地域にしようとしている。なぜなら、その目的はシリアをイラクのように破壊・分断することにあるからだ」と警鐘を鳴らした。
諸外国の動き
ロシア外務省は、国防大臣らの暗殺に関して声明を出し、「ダマスカスでのこのようなテロをした組織を特定し、相応しい罰を科せられることを期待する」との立場を示した。
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ローラン・ファビウス外務大臣は、国防大臣らの暗殺に関して、仏上院で、「フランス政府は…テロを非難する。暴力の激しさを踏まえると、シリア国民が自身の深淵な要求を表現する政府を持てるような政治的転換が起きることが不可欠であり急務だと思われる」と述べた。
また「爆発に関する正確な状況は把握していないが、きわめて重大な動きであり、ダマスカスに達した暴力のレベルがいかなるものかを示している」と付言した。
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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、国防大臣らの暗殺に関して、「チャンスは失われつつある。我々はシリア国民にとって相応しい移行プロセス実現において一致団結して支援のために行動する必要がある…。アサド体制がコントロールを失いつつあることは明白である…。宗派主義戦争、内戦を回避するため政治的移行を進める必要がある」と述べた。
また「かつて体制を支持していたシリア人の多くは今やアサドが問題そのものであって解決策ではないと考えるようになっている…。我々は国際社会のパートナーとともに、シリアでの政治的移行を実現するために行動する」と付言した。
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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、国防大臣らの暗殺に関して、「シリア情勢が急速に悪化していることは明白だ…。シリアは過去数ヶ月よりもさらに悪い混沌と崩壊に脅かされている…。それゆえ、国連安保理決議の採択だけでなく、政治プロセスの進展と暫定政府の樹立をもって問題解決をめざすことが急務である」と述べた。
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イラン外務省は声明を出し、国防大臣らの暗殺を「テロ行為」と非難し、「現下の危機の唯一の解決策は対話だと確信する」と述べた。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相がロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン大統領、セルゲイ・ラブロフ外務大臣らロシア首脳と会談した。
両首脳の会談では、ジュネーブでのシリア作業グループ会合での合意を「シリアの危機を正常化するための建設的な行程表」だとみなす点で意見が一致した。
プーチン大統領は「将来の立場を調整する優れた基礎」とみなす一方、エルドアン首相は「重要な行程表」としたうえで、「我々はポスト・アサドのシリアの行方は外国諸国ではなく、シリア国民自身が決めることを望んでいる」と述べた。
会談後の記者会見でラブロフ外務大臣は、ダマスカス県での暴力に関して、「決戦」が行われていると指摘、安保理が対シリア制裁を科せば、反体制武装集団を直接支援し、シリアを内戦に陥れるようなものだと警鐘を鳴らした。
また「反体制勢力を支援する政策は行き詰まっている。アサド大統領は自分から退任することはない。西側諸国はそうすることで(アサド大統領を退任させることで)、何をしようとしているのか分かっていない」と批判した。
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ロシア大統領府は声明を出し、ウラジーミル・プーチン大統領とバラク・オバマ米大統領が電話会談を行い、シリア情勢について協議したと発表した。
声明では、シリア情勢への分析的視点や、解決をめざす点でコンセンサスに達したが、解決策に至るプロセスをめぐって意見対立は続いたことが明らかにされた。
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中国を訪問中の潘基文国連事務総長は記者団に対して、「このような方向に向かうことはできない…。この間、非常に多くの人々が命を落とした」と述べ、安保理にシリアでの暴力停止に向けた行動をとるよう求めた。
潘事務総長は、中国首脳との会談で「情勢が現在、いかに危険かを説明した」としたうえで、「安保理が一致団結した行動をとるかたちで…対話を行えることを希望する」と述べた。
事務総長付報道官によると、潘事務総長は暴力の停止の必要とともに、シリア人自身によって政権移行がもたらされるような政治的対話をシリア人に開始させるべきとの姿勢を示した、という。
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『ハヤート』(7月19日付)は、複数の外交筋の話として、アナン特使がシリア問題に関する安保理決議案(UNSMISの任期延長などに関する決議案)の採決の延期を求めたと報じた。
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米財務省はシリア政府高官および支援者29人と武器開発・製造に関わっているとされる企業・法人5団体への追加制裁(渡航禁止、資産凍結)を決定した。
制裁対象となった高官は、サフワーン・アッサーフ住宅都市開発大臣、スブヒー・アフマド・アブドゥッラー農業・農業改革大臣、アディーブ・マイヤーラ・シリア中央銀行総裁、ワーイル・ナーディル・ハッキー保健大臣、ムハンマド・ジュライラーティー財務大臣、ハーラ・ムハンマド・ナースィル敢行大臣、ムハンマド・ムハンマド・アブドゥッサッタール・サイイド宗教関係大臣、ヤースィル・スィバーイー公共事業大臣、ハズワーン・ワッズ教育大臣、ウムラーン・アフマド・ズウビー情報大臣、マンスール・ファドルッラー・アッザーム大統領担当国務大臣、フサイン・マフムード・ファルザート国務大臣、ウマル・イブラーヒーム・ガラーワンジー福祉問題担当副首相兼地方自治大臣、ラドワーン・ハビーブ法務大臣、アリー・ハイダル大統領担当国務大臣、バッサーム・ハンナー水資源大臣、リヤード・ヒジャーブ首相、サイード・ムウズィー・フナイディー石油鉱物資源大臣、カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣、イマード・ムハンマド・ディーブ・ハミース電力大臣、フアード・シュクリー・クルディー工業大臣、ムハンマド・ザーフィル・ミフバク経済対外通商大臣、ムハンマド・ヤフヤー・マアッラー高等教育大臣、ルバーナ・ムシャウウィフ文化大臣、アブドゥルガニー・サーブーニー通信技術大臣、マフムード・イブラーヒーム・サイード運輸大臣、ナズィーラ・ファラフ・サルキース環境担当大臣、ジョゼフ・スワイド国務大臣、ジャースィム・ムハンマド・ザカリヤー社会問題労働大臣。
また制裁対象となった企業・法人は科学研究センターなど。
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『ニューヨーク・タイムズ』(7月18日付)は、米国防総省高官の話として、米国およびイスラエルの軍高官が、イスラエルによるシリア軍の武器庫攻撃について協議したと報じた。
同高官によると、米国防省は、こうした攻撃がシリア政府によって利用されることを懸念し、攻撃には反対した、という。
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フランソワ・オランド仏大統領は、「マナーフ・トゥラース准将がどこにいるかに関して、私は今日、現状を知った」と述べ、同准将がフランスに逃れたことを認めた。
チュニジアのムンスィフ・マルズーキー大統領との共同記者会見で、記者からの質問に対して答えた。
AFP, July 18, 2012、Akhbar al-Sharq, July 18, 2012、AKI, July 18, 2012、ʻAks al-Sayr, July 18, 2012、Alarabia.net, July 18, 2012、Aljazeera.net, July 18, 2012、al-Bayan, July 18, 2012、Elnashra.com, July 18, 2012、al-Hayat, July 19, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 17, 2012、July 18, 2012、Naharnet.com,
July 18, 2012、Reuters, July 18, 2012、SANA, July 18, 2012、Syria Steps, July
18, 2012、Zaman al-Wasl, July 18, 2012、The New York Times, July 18, 2012などをもとに作成。
写真はal-Hayat, July 19, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 18, 2012、Naharnet.com, July 18, 2012、SANA, July 18, 2012。
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