ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣、トルコのメヴリュト・チャヴシュオール外務大臣、イランのイランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣はモスクワで初となる三カ国外相会談を行った。
また、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣、トルコのフィクリ・イシク国防大臣、イランのホセイン・ホセイン・ダフカーン国防大臣も三カ国国防相会談に先だって、両国国防大臣と個別会談を行った。
『ハヤート』(12月21日付)などによると、ロシア、イラン、トルコの三カ国は、この外相・国防相会談を経て、シリア情勢の正常化に向けた「行程表」について協議し、「モスクワ宣言」を採択する見込みだという。
「モスクワ宣言」は「民主的世俗国家としてのシリアの主権と領土の統一性」を確認、「シリアにおける危機に軍事的解決はない」と強調したうえで、「紛争解決に向けた政治プロセスを再生」する三カ国の決意を表明している。
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会談後の共同記者会見で、ラブロフ外務大臣は、アレッポ市東部、ダマスカス郊外県ザバダーニー市、マダーヤー町からの反体制武装集団とその家族の退去、イドリブ県フーア市、カファルヤー町からの負傷者・重篤患者とその家族の移送を貫徹するとしたうえで、2日以内にこの作業が完了するだろうとの見通しを示し、ロシア、トルコ、イランの取り組みによって、アレッポ市からの反体制武装集団と市民の退去が可能になったことを自賛した。
また、ダーイシュ(イスラーム国)とシャーム・ファトフ戦線を除外するかたちで、シリア領内全土での戦闘停止に向けた措置を講じ、政治的解決を促すことで三カ国が合意したことを明らかにした。
そのうえで、ロシア、イラン、トルコの連携がシリア政府と反体制派の和平合意を成立させる用意があるとしたうえで、欧米諸国、サウジアラビア、カタール、トルコなどを軸とする「シリアの友連絡グループ」にも増して、より効率的に紛争を解決に導くことができると強調した。
一方、チャヴシュオール外務大臣は、ロシア、イラン、トルコの合意の重要性を強調しつつ、外国によるテロ組織への支援を停止する必要があるかとの問いに対して「ヒズブッラーへの支援を停止する必要がある」と答え、イランによるヒズブッラーへの支援を暗に批判した。
これに対して、ザリーフ外務大臣は、テロへの取り組みを活性化し、シリアの紛争を政治的に解決すべきとしたうえで、「国連安保理が指定するテロ組織について話している」と付言し、ヒズブッラーへの支援の正当性を強調、「イランは友好国の意見を尊重するが、意見を異にしている」と異論を唱えた。
ヒズブッラーをめぐる意見の相違に対して、ラブロフ外務大臣は「テロとの戦いはダブル・スタンダードであってはならない。国連安保理決議第2254号は、外国によるテロ組織への支援停止の必要を強調している」としつつ、「しかし問題は極めて複雑だ。なぜならこの地域にはさまざまな宗教・エスニック集団がおり、スンナ派とシーア派の対立もあるからだ」と述べた。
そのうえで「重要なのは、ダマスカスとの連携を呼びかける当時者であれ、連携しない当時者であれ、テロとの戦いを優先すべきだという点で合意しているということだ」と強調した。
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トルコのイシク国防大臣、イランのホセイン・ダフカーン国防大臣との個別会談したショイグ国防大臣は、ロシア、イラン、トルコ各国の専門家らが、シリアの紛争を終結させるための行程表を記した三カ国合意「モスクワ宣言」を策定、近く合意に達するだろうと述べた。
ショイグ国防大臣はまた、ロシア、イラン、トルコがシリアの紛争解決を保障する役割を果たす用意があるとしたうえで、米国がもはや実質的影響力を行使し得ないと指摘、「ロシア、トルコ、イランの取り組みによって、アレッポにおいて「穏健な反体制派」と過激派を峻別することに成功した」と強調した。
一方、シャームプレス(12月20日付)によると、トルコのイシク国防大臣は、ショイグ国防大臣との会談で「今日、アレッポ市東部を武装集団から解放し、反体制派が捕捉していた子供らを避難させるためのプロセスが成功裏に進んでいるのを目にしている」と述べたという。
AFP, December 20, 2016、AP, December 20, 2016、ARA News, December 20, 2016、Champress, December 20, 2016、al-Hayat, December 21, 2016、Iraqi News, December 20, 2016、Kull-na Shuraka’, December 20, 2016、al-Mada Press, December 20, 2016、Naharnet, December 20, 2016、NNA, December 20, 2016、Reuters, December 20, 2016、SANA, December 20, 2016、UPI, December 20, 2016などをもとに作成。
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