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第10期人民議会
第10期人民議会が5月7日の総選挙後初の臨時会を開いた。
SANA(5月24日付)によると、臨時会では、選出された議員が就任宣誓を行ったのち、議長など役員の選挙が行われ、バアス党が擁立した候補者が議長、副議長、事務局長に就任した。
議長選挙には、ムハンマド・ジハード・ラッハーム議員(ダマスカス県)とムジーブッラフマーン・ムーサー・ダンダン議員(アレッポ県諸都市)が立候補し、225対9でラッハーム議員が議長に選出された。白票は15、無効票は1だった。
選出された250人のうち、初当選は207人、女性は30人。
また副議長は、ファフミー・ハサン議員(アレッポ県諸都市、無所属)、シャリーフ・シハーダ議員(ダマスカス県、無所属)が立候補し、202対35でハサン議員が選出された。白票は11票だった。
事務局長には5人が立候補し、アブドゥルムウティー・マシュラブ議員(ヒムス県、バアス党)、ハーリド・アッブード議員(ダルアー県、統一社会主義者党)が192票、195票を得て選出された。
アルカーン・アジュワド・ナスル議員(スワイダー県)、イスカンダル・ジルジス・ジャッラーダ議員(ラタキア県)、マフムード・ディヤーブ議員(ダマスカス郊外県)の獲得票は8、25、18票だった。
監査役(定員2人)には、マーリヤー・サアーダ議員(ダマスカス県、無所属)、ラーミー・ムハンマド・サーリフ議員(タルトゥース県、バアス党)が無投票で選ばれた。
なおバアス党が指導する進歩国民戦線は167議席、人民意思党が指導する野党連合の変革解放国民宣誓は5議席を占める。
アサド政権の動き
憲法最高委員会のメンバーがアサド大統領の前で宣誓を行った。
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SANA(5月24日付)は、アサド大統領はイラン通信情報技術大臣との会談で、シリアが「国民の抵抗力、統合への結束力、独立性ゆえに危機脱却の能力がある」と述べたと報じた。
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シリアのムハンマド・ジャラーラーティー財務大臣はRT(5月24日付)に対して、西側の経済制裁が「国の経済に直接の影響をもたらさない…。なぜなら国営・民営部門を通じてほとんどの産品の90%を自給自足しているからだ」と述べた。
国内の暴力
ハマー県では、シリア革命総合委員会によると、軍・治安部隊、シャッビーハがガーブ渓谷からハマー市に戻ろうとしていた家族を23日に誘拐・殺害し、遺体をミスヤーフ地方(タルトゥース県)に遺棄した、という。
シリア人権監視団によると、この誘拐・殺人によって、レンタカーのドライバー、女性1人とその子供4人が犠牲となった。
この事件に関して、SANA(5月24日付)は武装テロ集団が誘拐殺害したと報じた。
またSANA(5月24日付)によると、カムハーナ町で市民1人が武装テロ集団が仕掛けた爆弾の爆発で死亡した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、バサーミス村の自宅で市民4人が治安当局に逮捕、処刑された、という。
またダイル・サンバル村・イフスィム町間で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、4人が死亡した。
一方、SANA(5月24日付)によると、バサーミス村で治安維持部隊が爆弾を仕掛けようとしていた武装テロ集団と交戦し、テロリスト多数を殺害した。
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ヒムス県では、離反兵が立て籠もるラスタン市に軍・治安部隊が砲撃を加え、3人の市民が死亡した。
またシリア革命総合委員会などによると、ヒムス市の複数地区に軍・治安部隊が砲撃を加えた。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、クーリーヤ市で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、離反兵1人と軍兵士1人が死亡した。
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ダマスカス県、ダマスカス郊外県では、複数の活動家によると、治安当局の発砲で1人が射殺されたほか、各地で逮捕・摘発が行われた。
一方、SANA(5月24日付)によると、ダマスカス郊外県ジュダイダト・ファドル町で武装テロ集団が軍大佐と13歳になる息子を暗殺した。
またサフナーヤー市・ダーライヤー市間で武装テロ集団が違法な掘削井戸を解体していたダマスカス水資源局職員を襲撃し、職員4人と治安維持部隊兵士5人を殺害した。
『シャルク』(5月25日付)は、自由シリア軍がカーブーン区で「シャッビーハが経営し、彼らの会合場所となっていたレストラン兼酒屋を深夜に襲撃した」と報じた。
襲撃されたのはレストラン「ニダール」(アブー・ジャアファル・ダーヒル氏)。
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ダルアー県では、シリア革命総合委員会によると、フラーク市が軍・治安部隊に砲撃された。
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ラタキア県では、シリア革命総合委員会によると、ラタキア市のクルド人地区で銃声や爆発音が聞こえた。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長はAFP(5月24日付)に対して、「我々はシリア国民の犠牲のレベルに自らを高めることができなかった」と自己批判した。
ガルユーン事務局長は自らの辞任に関して、「評議会に組織の改編を行わせ、前進させ、ほかの勢力を糾合し、民主的になるための法改正を行わせるため辞任を思い立った」と述べた。
またシリア国民評議会については「コンセンサスという基礎」が活動を妨げているとしたうえで、「選挙を基礎」に運営される必要があると主張し、「現在の組織形態は、さまざまな政党・政治組織の連合体が決定を独占し、メンバーが実質的に決定に参加する機会を与えておらず、そのことが停滞を招いた」と自己批判した。
さらに「現地でデモを組織している若者を…糾合することにおいて大きな進展はなかった…。シリア国民評議会は、それ以外の組織への真の開放を実現できず、前進できないことで、我々は信頼を失ってしまっている」と述べた。
一方、シリア国民評議会の対立を「イスラーム主義者対世俗主義者」とする見方に関しては、正確ではなく、こうした見方はシリア政府、さらには一部の世俗主義者が革命分断のために行ってきた方法だと述べた。
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自由シリア軍(ウバイド・ムハンマド・ウバイド大佐)はアラビーヤ(5月24日付)に対して、アレッポ市郊外の約90%(東部、西部、北部)が自由シリア軍の支配下に入ったと語った。
これらの地区では軍・治安部隊に対する軍事活動が見られているが、ウバイド大佐によると、「自由シリア軍の作戦は依然として自衛の段階にあり、軽火器を使用、アナン特使の停戦案を原則遵守している」という。
諸外国の動き
国連人権委員会、アムネスティは年次報告を発表し、アサド政権による人権侵害を非難した。
http://www.amnesty.org/en/region/syria/report-2012
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Aitnews.com(5月24日付)によると、グーグル社は米国の制裁によって禁止されていたシリア国内でのプログラムの一部を再開したと発表した。
シリアでの利用が再開されたのはクロム・ブラウザ、グーグル・アースなど。
AFP, May 24, 2012、Aitnews.com, May 24, 2012、Akhbar al-Sharq, May 24, 2012、Alarabia.net, May 24, 2012、al-Hayat, May 25, 2012、Kull-na Shuraka’, May 24, 2012, May 25, 2012、Naharnet.com, May 24, 2012、Reuters, May 24, 2012、SANA, May 24, 2012、al-Sharq, May 25, 2012などをもとに作成。
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