国連安保理はシリア情勢への対応を協議するための非公式会合を行い、シリアでの人権侵害を調査するための国際独立調査委員会が、4月4日のイドリブ県ハーン・シャイフーン市での化学兵器攻撃疑惑や7日の米軍によるヒムス県シャイーラート航空基地へのミサイル攻撃の影響などについて報告を行った。
『ハヤート』(4月23日付け)は、複数の消息筋の話として、委員会(24人)が、ハーン・シャイフーン市での化学兵器攻撃疑惑事件についての重点的に情報収集を行い、「4月4日、午前6時から7時にかけてと、午後11時の2度爆撃が行われ、1度目の爆撃によってサリン・ガスと思われる有毒ガスが飛散した複数の証拠を得た」と伝えた。
事件現場にいたとされる複数の被害者から採取したサンプル、画像、ビデオ映像、衛星画像などを収集し、シリア政府が入国を規制しているなかで、現場を訪問しないかたちで一時的結論を導出しようとしているという。
会合に出席した複数の外交官によると、米国代表がシリア政府が民間人に対して化学兵器などを使用して攻撃を行っていることの責任がロシアにあると追及する一方、安保理メンバー15カ国はシリアの紛争の政治的解決の必要を改めて確認したという。
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会談後、パウロ・セルジオ・ピネイロ委員長(ブラジル人)は記者会見(http://webtv.un.org/watch/paulo-pinheiro-and-karen-abuzayd-commission-of-inquiry-on-the-syrian-arab-republic-on-the-situation-in-syria-security-council-media-stakeout-21-april-2017/5406401920001#full-text)を開き、ハーン・シャイフーン市での化学兵器攻撃疑惑に関して、「4月4日の午前6時40分から7時にかけて、ハーン・シャイフーン市に対して一連の爆撃が行われた。これについてはコンセンサスが得られている。これらの爆撃はサリン、ないしはサリンに類する化学物質の飛散と同時に起こった」と述べ、この時間にシリア軍は空爆を実施していないとするシリア政府やロシアの主張を退けた。
しかし「委員会はすべての筋道、理論について検証を続ける。ハーン・シャイフーン市で起きたこの神経ガスの飛散、そしてそれ以外の事件に関して実に多くの説がある…。我々はどの国の空軍が攻撃を行ったのかを特定できなかった。我々は攻撃が起きたというと結論づけられただけだ…我々はまだ結論に達するには至っていない」と述べ、誰が攻撃を実行したのかについての言及は避けた。
また、「我々は目撃者、医療スタッフ、軍事や化学兵器の専門家にイタンビューを行うとともに、画像、ビデオ、衛星画像、そしてその他の物的証拠を収集している…。我々はまた複数の国に対してこの事件についての報告を共有するよう要請している」と付言、各国に協力を要請していることを明らかにした。
一方、4月7日の米軍によるヒムス県シャイーラート航空基地に対するトマホーク巡航ミサイルによる攻撃に関しては、「民間人に対する軍事作戦を減少させなかった」と指摘、シリア国内での暴力についても「アレッポ市東部の包囲によって同市が目の当たりにした惨状は解囲をもって終わるのではない。なぜなら、これ以外にも多くの包囲、そして強制移住が行われており、我々は今、イドリブ県で悲惨な状況に置かれている数千単位の避難民の問題を注視している」と述べ、シリア政府への批判的な姿勢を示した。
また「ダーイシュ(イスラーム国)に対する戦いにより、彼らは広範な支配地域を失った。しかし、多くの当事者がこの地域を得ようと争い合っており、そのことが住民、そして避難民(の安全)を脅かしている」と述べ、戦闘継続・激化への懸念を表明した。
AFP, April 22, 2017、AP, April 22, 2017、ARA News, April 22, 2017、Champress, April 22, 2017、al-Hayat, April 23, 2017、Iraqi News, April 22, 2017、Kull-na Shuraka’, April 22, 2017、al-Mada Press, April 22, 2017、Naharnet, April 22, 2017、NNA, April 22, 2017、Reuters, April 22, 2017、RT, April 22, 2017、SANA, April 22, 2017、UPI, April 22, 2017などをもとに作成。
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