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第10期人民議会選挙をめぐる動き
『ダマス・ポスト』(5月2日付)は、国民成長党が国民統一リスト(進歩国民戦線の選挙リスト)の発表を受けて、第10期人民議会選挙への参加をとり止めたと報じた。
国民成長党は政党法によって公認された野党の一つで、同党に先だって、民主前衛党、団結党、アンサール党が参加をとり止めている。
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SANA(5月3日付)は、5月7日投票予定の第10期人民議会選挙の投票に向けた準備が各地で完了したと報じた。
各選挙の選挙委員会が発表したところによると、各地の投票所数、有権者数、立候補者数はそれぞれ以下の通り。
ダマスカス県:投票所数791カ所、有権者数1,098,635人、立候補者数900人以上(ダマスカス郊外県と合わせた数値)
ダマスカス郊外県:投票所数641カ所、有権者数1,143,979人
タルトゥース県:投票所数171カ所、有権者数670,113人、立候補者数380人
ラタキア県:投票所数817カ所、有権者数863,180人、立候補者数665人
イドリブ県:投票所数103カ所、有権者数1,148,384人、立候補者数171人
クナイトラ県:投票所数175カ所(同県からの難民が居住するダマスカス県、ダマスカス郊外県、ダルアー県、クナイトラ市に設置)、有権者数302,790人、立候補者数170人
ハマー県:投票所数カ1,000所、有権者数1,280,051人、立候補者数482人
アレッポ市:投票所数455カ所、有権者数1,200,698人、立候補者数1,322人
アレッポ県諸地域:投票所数955カ所、有権者数2,232,867人、立候補者数人
ラッカ県:投票所数510カ所、有権者数565,428人、立候補者数317人
スワイダー県:投票所数309カ所、有権者数339,662人、立候補者数発表せず
ダイル・ザウル県:投票所数656カ所、有権者数973,209人、立候補者数167人
ダルアー県:投票所数カ223所、有権者数633,507人、立候補者数126人
ハサカ県:投票所数759カ所、有権者数1,004,585人、立候補者数367人
ヒムス県:投票所数627カ所、有権者数1,331,556人、立候補者数490人
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国内で反体制活動を行う民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表は、AKI(5月3日付)に対して、現政権が退陣しない限り、いかなる選挙も承認しない、と述べ、同委員会が第10期人民議会選挙をボイコットすることを改めて明らかにした。
国内の暴力
アレッポ県では、アレッポ大学の大学寮で未明から早朝にかけて学生1,500人以上が反体制デモを行い、治安部隊が介入、学生4人が死亡、少なくとも30人が負傷、数百人が逮捕された。
『ハヤート』(5月4日付)によると、このデモは未明に始まり、アサド政権を支持する学生が反体制派の学生らをナイフなどで襲撃、その後治安部隊(シリア革命総合委員会によると、投入された治安部隊の数は300人以上)が投入されたという。
反体制デモを行った学生の多くはイドリブ県出身者で、事態収拾のために投入された治安部隊は、寮内の部屋に突入、学生らに催涙弾や実弾を発砲、一部の部屋を焼き討った、という。
弾圧は午前まで続いた。
地元調整諸委員会によると、アレッポ市、ダルアー県、ダイル・ザウル県などでアレッポ大学との連帯を呼びかけるデモが発生、反体制活動家や目撃者らによると、アレッポ市のアレッポ大学キャンパス、同市内各所、ダルアー市のダルアー大学で反体制デモが行われた。
またアレッポ大学では授業が中止となった。
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ダマスカス県では、SANA(5月3日付)によると、マサーキン・バルザ地区でティシュリーン軍事病院に勤務する士官1人が武装テロ集団の襲撃に遭い、殺害された。
またダッフ・シューク地区では、地元調整諸委員会によると、軍・治安部隊による逮捕・摘発活動が行われた。
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ダマスカス郊外県では、シリア革命総合委員会によると、ザマルカー町で激しい爆発があった。
またハラスター市、ドゥーマー市では、地元調整諸委員会によると、軍・治安部隊による逮捕・摘発活動が行われた。
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ハマー県では、反体制活動家らによると、ハマー市のマシャーウ・アルバイーン地区で軍・治安部隊による掃討作戦が行われた。
一方、SANA(5月3日付)によると、サラミーヤ・ヒムス街道で武装テロ集団が観光用の自動車を襲撃し、市民1人を殺害した。
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ヒムス県では、ラスタン市郊外、カルアト・ヒスン市、ザーラ村などに対して軍・治安部隊が砲撃を加えた。
シリア人権監視団によると、フーラ村で離反兵1人とその父親が治安部隊に射殺され、クサイル市では軍・治安部隊兵士1人が殺害された。
このほかタドムル市でタドムル市で兵士6人が離反、軍・治安部隊と交戦した。
『ハヤート』(5月4日付)は反体制勢力HPの情報として、ヒムスで暗殺されたイスマーイール・アリー・ハイダル氏と友人のファーディー・アターウィナ氏が治安部隊に要撃・暗殺されたと報じた。
同報道によると、シリア民族社会党インティファーダ派のアリー・ハイダル党首の息子であるイスマーイール氏は、これまでに反体制デモなどに参加していた、という。
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イドリブ県では、ザーウィヤ山で軍・治安部隊による掃討作戦が続いた。
シリア人権監視団によると、サラーリーフ村で女性1人が治安部隊に射殺された。またイフスィム村で学生らが反体制デモを断行したという。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ムーハサン市に軍・治安部隊が突入した。
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AFP(5月3日付)によると、反体制活動家のファーイズ・サーラ氏の息子2人、バッサーム氏(37歳)とウィサーム氏(26歳)が治安当局に逮捕された。
アサド政権の動き
SANA(5月3日付)は、シリアのアドナーン・マフムード情報大臣がイタリア在住のシリア人およびイタリアのメディア関係者からなる使節団と会談、そのなかでアナン特使の停戦案発効後の武装テロ集団による停戦違反が1930回以上にのぼる、と述べたと報じた。
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シリアのアリー・アブドゥルカリーム在レバノン大使はアドナーン・マンスール外務大臣と会談し、密輸船ルトフッラー2の拿捕・摘発に関して、カタールとサウジがシリアの反体制勢力に武器を供与していると非難した。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会は声明を出し、シリア国内の学生に対して、アレッポ大学の学生と連帯するためのストライキを行うよう呼びかけた。
諸外国の動き
SANA(5月3日付)は、ロバート・ムードUNSMIS司令官が、滞在先のラタキアから「シリアが暴力から平和に移行し、激しい暗殺作戦を回避するために誰でも協力できる」と述べ、すべての当事者に停戦履行を呼びかけた、と報じた。
AFP, May 3, 2012、Akhbar al-Sharq, May 3, 2012、AKI, May 3, 2012、Damas Post, May 2, 2012、al-Hayat, May 4, 2012、Kull-na Shuraka’, May 3, 2012、Naharnet.com, May 3, 2012、Reuters,
May 3, 2012、SANA, May 3, 2012などをもとに作成。
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