シリア国民評議会がジュネーブ2会議への不参加の方針を改めて明確にするなか、シリア革命反体制勢力国民連立はイスラーム国に対する反体制武装集団の抵抗を全面支援すると発表(2014年1月4日)

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反体制勢力の動き

クッルナー・シュラカー(1月4日付)によると、アレッポ県アターリブ市シャリーア法廷のハリール・ガーウィー裁判長は「ビラード・シャームでのいわゆる「ダーイシュ」(イラク・シャーム・イスラーム国)に対するジハードは合法的なジハードだ」との見解を示した。

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ムジャーヒディーン軍は声明を出し、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の武器庫から武器を捕獲したことを明らかにする一方、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動、アンサール大隊とともに、ダーイシュ掃討を行っていると発表した。

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ラタキア県で活動する反体制武装活動家らが、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)に対抗するため、ラタキア自由青年運動を結成したと発表した。

『ハヤート』(1月5日付)が伝えた。

なお、イスラーム戦線、ムジャーヒディーン軍、シリア革命家戦線などによるダーイシュとの対決姿勢の鮮明化に関して、『ハヤート』(1月5日付)は、アレッポ・シャリーア委員会、シャームの民のヌスラ戦線、イスラーム戦線内の一部の組織は、両勢力の仲介を視野に入れ、依然として中立的な態度をとろうとしている、と付言した。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)に対する反体制武装集団の抵抗を「全面支援」すると発表した。

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シリア革命反体制勢力国民連立の入会委員会は、シリア公務員国民自由連合と代表交代に関する合意を交わし、12月31日に連立からの脱会を発表したアブドゥフ・フサームッディーン元財務次官に代わって、連合代表のリヤード・ファリード・ヒジャーブ元首相の代表入りを認めた。

クッルナー・シュラカー(1月4日付)などが伝えた。

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シリア国民評議会の事務局は3、4日の2日間にわたりトルコのイスタンブールで会合を開き、執行部の活動報告を受けるとともに、ジュネーブ2会議への参加の是非などについて協議した。

会合後の声明で、シリア国民評議会は「国内の政治、軍事、支援状況を精査した結果…、ジュネーブ2会議開催に向け、困難を排除しようとする反体制勢力の努力のすべてが良い結果をもたらさなかったことが明らかとなった」としたうえで、「なぜならシリア政府とその同盟者はジュネーブ1(ジュネーブ合意)の遵守を明言せず…、政権は合意を何ら実施しないばかりか、「テロとの戦い」という新たな目的を付加しようとしているからである。また政権は包囲…、樽爆弾による無差別殺戮、宗派主義的民兵によるシリアの占領を続けている」と政権を批判した。

そのうえで「ジュネーブ2会議がシリア革命の諸目標実現を保証するようないかなる事態の進展…も見出せない」と主張、「シリア革命反体制勢力国民連立がジュネーブ2会議への参加を決定した場合、連立を脱会するとの従来の決定と、現状においてジュネーブ2会議に参加しないことを改めて確認した」と明言した。

また声明では、「国際社会、シリア国民の友人が、テロへの恐怖を口実として、シリア革命に必要な支援を躊躇している」と批判した。

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シリア国民評議会のサミール・ナッシャール氏はAFP(1月4日付)に、「シリアの友連絡グループ各国代表、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表、ロシア外務省高官…との会合を経て、シリア国民評議会はジュネーブ2会議に参加する必要がないと考えるに至った」と述べた。

またナッシャール氏は「シリア国民評議会だけが参加を拒否しているのではない。シリア革命反体制勢力国民連立内に対話に反対する者もいる」と付言、「連立も最終的には参加しないだろう」と述べた。

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シリア人権監視団は、2日晩からアレッポ県、イドリブ県で激化しているイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とムジャーヒディーン軍などとの戦闘により、少なくとも60人が死亡したと発表した。

シリア政府の動き

反体制サイトのリハーブ・ニュース(1月4日付)は、共和国副ムフティーのアブドゥッラフマーン・ダラア師が、シリア軍兵士に対して反体制武装集団を支持する女性の強姦を認めるファトワーを発したと報じた。

国内の暴力

イドリブ県では、『ハヤート』(1月5日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がシリア革命家戦線などの攻勢を受け、ハーリム市から撤退した。

撤退は、ハーリム市に隣接するサルキーン市のアミール、アブー・アブドゥッラー・トゥーニスィーの戦死を受けたもので、ダーイシュは撤退に際して、拘束していた反体制武装集団の戦闘員30人を処刑した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市のアレッポ城周辺、カールトン・ホテル周辺などに軍が砲撃を加えた。

またナッカーリーン村、ティヤーラ村近郊のザルズール丘周辺などで、軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員がシャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と交戦した。

一方、シリア革命総合委員会は、アレッポ市でのイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とムジャーヒディーン軍との戦闘が、マーリア市、タッル・リフアト市、フライターン市、アナダーン市に拡大、これらの村からダーイシュが撤退し、ムジャーヒディーン軍が制圧したと発表した。

また、ムジャーヒディーン軍は声明を出し、ダーイシュと戦うため、1月5日午前8時からアレッポ市内の支配地域の通行を禁止すると発表、同地域の住民に外出を控えるよう呼びかけた。

他方、SANA(1月4日付)によると、クワイリス村、アルバイド村、ラスム・アッブード村、カスキース村、アレッポ中央刑務所周辺、マアーッラト・アルティーク村、マンスーラ村、マーイル町、ヒーラーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、サイイド・アリー地区、ザバディーヤ地区、カーディー・アスカル地区、ジャズマーティー地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アドラー市ウンマーリーヤ地区に対して軍が「樽爆弾」を投下した。

一方、SANA(1月4日付)によると、アドラー市(旧市街)、ドゥーマー市、ムライハ市、ザバダーニー市、アーリヤ農場、アッブ農場、ムニーン町、ハジャル・アスワド市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、アサーリー地区、カダム区で軍と反体制武装集団が交戦、アサーリー地区に軍が砲撃を行った。

一方、SANA(1月4日付)によると、ジャウバル区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ダール・カビーラ村を軍が砲撃する一方、カルアト・ヒスン市一帯に「樽爆弾」を投下した。

また、クッルナー・シュラカー(1月4日付)は、複数の消息筋の話として、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がハサカ自由軍旅団(自由シリア軍)司令官のハフーズ・ジャルヤーン氏を逮捕・処刑したと報じた。

ジャルヤーン氏の遺体は、フール村・タッル・ハミース市(ハサカ県)間の街道に放置されていたという。

一方、SANA(1月4日付)によると、タルビーサ市、ラスタン市、ハウラ地方、ガースィビーヤト・ナイーム村、ハサウィーヤ村、ダール・カビーラ村、ガジャル村、南マシュジャル村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またレバノン領内からタッルカラフ市郊外に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ハーン・シャイフーン市で、軍の拷問により、少年1人が死亡した。

一方、SANA(1月4日付)によると、アルバイーン山一帯で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市南部入口で軍と反体制武装集団が交戦した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、タッル・ハミース市近郊で反体制武装集団の司令官が何者かに殺害された。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ジャースィム市に軍が「樽爆弾」を投下、アトマーン村に砲撃を加えた。

一方、SANA(1月4日付)によると、ダルアー市各所で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(1月4日付)によると、マアラカ村、クルキス村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が声明を出し、ベイルート県南部郊外(ダーヒヤ)ハーラト・フライク地区での自爆テロ(2日)の犯行を認めた。

声明はイウティサーム機構なる組織のtwitterのアカウント(https://twitter.com/e3tasimo/status/419447474953003008)から「イラク・シャーム・イスラーム国/情報省」の名で発表され、「悪魔の党の治安区域に浸透し…、その拠点を破壊し…、邪悪なる犯罪に下される重大な制裁の最初の小さな代価を支払わせた」と述べ、犯行を認めた。

声明はまた、自爆テロを「アレッポ国における最近の出来事」およびイラク・アンバール県などでの戦闘激化の一環をなす動きと位置づけ、アレッポ県で「ムハージルーン」(外国人戦闘員)が攻撃に曝されていると述べ、ダーイシュへの攻勢を強めるシリアの反体制武装集団を非難し、イラクでのダーイシュが軍事的成功を収めるなかで、ジュネーブ2会議開催を控えて、ダーイシュをアレッポ県から根絶しようとする大掛かりな陰謀に拍車がかかっていると断じた。

そのうえで、アレッポ県からのダーイシュの撤退により、同地域が「ヌサイリー派の軍」(アサド政権)に蹂躙されることになる、と警鐘を鳴らした。

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ナハールネット(1月4日付)によると、レバノン軍司令部は、12月末にベイルート県で逮捕されたアブドゥッラー・アッザーム大隊リーダー兼シャームの民のヌスラ戦線メンバーのマージド・マージド氏の健康状態が悪化し、死亡したと発表した。

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LBIC(1月4日付)によると、北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区、ジャバル・ムフスィン地区で何者かが市民を狙撃、7人が負傷した。

イラクの動き

イラキー・ニュース(1月4日付)によると、イラク治安部隊がアンバール県で部族の協力のもと、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘員25人を殺害した。

殺害した25人のなかには、ラマーディー市ブー・ファラジュ地区司令官のアリー・アブー・ダジャーナ氏も含まれているという。

諸外国の動き

駐キプロス中国大使は、シリアの化学兵器廃棄プロセスに関して、「国際社会の努力を支援している。このプロセスに参加するためキプロスに来た」と述べた。

ロイター通信(1月4日付)が伝えた。

AFP, January 4, 2014、AP, January 4, 2014、Champress, January 4, 2014、al-Hayat, January 5, 2014, January 6, 2014、Iraqinews.com, January 4, 2014、Kull-na Shuraka’, January 4, 2014, January 5, 2014、LBCI, January 4, 2014、Naharnet, January 4, 2014、NNA, January 4, 2014、Reuters, January 4, 2014、Rihab News, January 4, 2014、SANA, January 4, 2014、UPI, January 4, 2014などをもとに作成。

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