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反体制勢力の動き
人権団体「インサーン」のウィサーム・タリーフ代表は、過去3日間での逮捕者・行方不明者数が8,000人を越えたと発表した。
うち身元が明らかなのは2,843人で、ダルアー県での逮捕者数が891人、ダマスカス郊外県ザバダーニー市が103人、同マダーヤー町が108人、ダマスカス県が384人、ヒムス県が636人、ラタキア県ラタキア市が317人、同ジャブラ市が267人、タルトゥース県が37人だという。
これ以外の5,157人は身元調査中だが、4,038人はダルアー県での逮捕者だという。
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シリア人権監視団によると、4月29日の金曜礼拝後に各地で行われたデモでの逮捕者日数百人が「国家の威信を傷つけ、暴動を煽動した」容疑(3年以内の禁固刑)で起訴された。
同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長はロイター通信(5月4日付)に対して、集団逮捕は各地で続いていると付言した。
シリア政府の動き
アサド大統領は、ダイル・ザウル県(ダイル・ザウル市、ブーカマール市、マヤーディーン市)の代表35人と会談し、汚職問題、政治問題などについて意見を交換した。
4時間におよぶ会談で、アサド大統領は、ダルアー市での軍・治安部隊による「武装テロ集団」の掃討が「まもなく」完了するだろうとの見方を示した。
ダマス・ポスト(5月4日付)が報じた。
国内の暴力
複数の人権活動家らによると、アレッポ市、ダマスカス県、バーニヤース市(タルトゥース県)、カーミシュリー市(ハサカ県)などで、3日深夜から当局の警告を無視して反体制デモが発生した。
また主要都市などの入り口には、6日金曜日に予想される反体制デモに備え、軍・治安部隊が検問所を増設した。
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ダマスカス県では、AFP(5月4日付)によると、ダマスカス大学で学生100人から150人がデモを行い、ダルアーとの連帯を訴えたが、まもなく治安部隊によって強制排除された。
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タルトゥース県では、複数の活動家によると、バーニヤース市でも数百人が抗議行動を行い、「バーニヤース市とダルアーの包囲解除」を求めたが、治安部隊が強制排除を試み、6人が逮捕された。
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ヒムス県では、複数の目撃者によると、シリア軍の戦車と装甲兵員輸送車が抗議行動の中心地の一つであるラスタン市周辺に展開した。
活動家の一人はAFP(5月4日付)に対して「軍は同市の北側の入り口に増援部隊を派遣した」と述べ、「デモ参加者は先週金曜日の平和的デモで死亡した18人に関する調査を要求している」と付け加えた。
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ダマスカス郊外県では、SANA(5月4日付)によると、ムウダミーヤト・シャーム市でのデモ鎮圧中に「武装テロ集団」に殺害された兵士の葬儀がアレッポ市カルム・カスル地区で行われ、市民数千人が参列した。
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シリアの軍消息筋は、ダルアー市の軍・武装部隊が「任務を継続しており、同任務は、ほとんどの目的を実行しまもなく完了する。軍はこれらの目的遂行のため同市に進入し、市内各所で平和な市民を脅かし、混乱、破壊、殺戮を繰り広げてきた武装テロ集団の残党を追跡してきた」と発表した。
同筋は、軍部隊が「テロ集団数十人を逮捕し、大量の近代兵器、様々な種類の弾薬を複数の場所で押収し、市の住民は安堵を取り戻した」と述べた。
諸外国の動き
国連の潘基文事務総長は、バッシャール・アサド大統領と電話会談を行い、「シリアでの平和的デモ参加者への集団的暴力と逮捕の即時停止、デモでの殺戮、そしてその際に行われたとされる軍・治安部隊士官による殺人に関する独立調査の実施」を求めた。
また人権尊重の必要についても触れ、シリアの内閣が発表した改革プログラムの実施、とりわけ「誠実かつ包括的な対話」の重要性を強調した。
さらに、シリア国内での人権状況と人道支援のニーズを評価するため、シリアの各都市に国連が自由に入ることができるようにするよう求めた。
潘事務総長によると、アサド大統領は、ダルアー市の人道評価に前向きな姿勢を示したが、「シリアの複数の都市での人権状況悪化に大いなる懸念」と表明した。
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英国のマーク・リアル国連大使は「シリアで悪化している状況」に関して、国際司法裁判所を通じてシリアでの公正の実現を検討する準備を行うべきと述べた。
同大使は「抑圧は即時に停止されねばならず、シリア政府は平和的デモ参加者を攻撃するのでなく、保護する責任を負っている。暴力行使に責任を負っている高官は裁かれねばならず、免罪の余地はない」と強調した。
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フランスのニコラ・サルコジ大統領は、シリアでのデモ参加者に対する暴力に関して「受け入れられない」と述べ、「(国民を)手にかける政策は停止される」べきとの意思を示した。
AFP, May 4, 2011、Akhbar al-Sharq, May 4, 2011、Damas Post May 4, 2013、al-Hayat, May 5, 2011 、Kull-na Shuraka’, May 4, 2011、Reuters, May 4, 2011、SANA, May 4, 2011などを参照。
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