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反体制勢力の動き
DamasPost(5月3日付)は、ダルアー県でのデモ弾圧に抗議して議員辞職を発表していたナースィル・ハリーリー人民議会議員が辞意を取り下げたと報じた。
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シリア人権国民機構は「過去2日間、シリアの各都市では、政権による狂気にも似た弾圧が行われ、座り込みが発生した都市・村で、抗議行動・デモを行うことのできるすべての人が逮捕されている。また政権は改革を主唱していることで知られる作家、有識者、活動家を恣意的に逮捕するに至っており、逮捕者リストは過去2日だけで1,000人を超えている」と述べた。
同機構のアンマール・カルビー代表はAFP(5月3日付)に対して、この逮捕によってシリアは「巨大な刑務所」と化したと述べ、危機感を表明した。
シリア政府の動き
Damas Post(5月3日付)によると、アサド大統領は、ダマスカスの経済会代表約30人と会談し、シリア経済の現状などについて意見を交わした。
使節団は、ラーティブ・シャッラーフ・ダマスカス商業会議所代表、アブドゥッラフマーン・アッタール氏らからなっていた。
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SANA(5月3日付)によると、進歩国民戦線中央指導部が会合を開き、国内情勢への対応について協議した。
同通信によると、中央指導部は「過激なテロ集団の試みが、国民統合、アラブ民族の利益を擁護するための政治的姿勢や方法を狙った大規模な陰謀の一部をなしている」ことを確認し、「陰謀を根絶するべくとられている一連の措置は、広範かつ包括的改革プロセスを目的とした包括的運動の一部をなし、それによって、シリアは中東地域と世界において、有効かつ影響力のある政策を継続することができる」と強調したという。
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AFP(5月3日付)は、ギリシャ正教のリヤース・ディービー司祭が約250人の信者を前に、「我々の大統領、政府、人民をあらゆる危機からお守りくださるよう、主に呼びかけよう。我々が一つの心、一つの魂であり続けるよう呼びかけよう」と述べ、アサド政権への支持を表明した。
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シリア・アラブ・テレビ(5月3日付)は、ダルアー市での殺戮・破壊行為を行ったとするヤースィル・アブドゥー・ナーブルスィーを名のる武装集団メンバーの証言番組を放映した。
国内の暴力
タルトゥース県バーニヤース市の複数の目撃者が明らかにしたところによると、シリア治安部隊と武装集団が、市内中心部の各地区に展開した。
シリアで抗議行動を行う指導者の一人によると、軍が市の北側の入り口を封鎖する一方、南側の入り口を警備、また同市を見下ろす丘陵地帯の村々では体制支持者たちが武装しているという。
また活動家のアナス・シャグリー氏によると、治安部隊が民間人の衣服を着て、市場がある街道に展開し、身分証明書に記載された姓を見て、人々を逮捕しているという。
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アレッポ県では、クッルナー・シュラカー(5月3日付)によると、アレッポ大学の大学寮(マディーナ・ジャーミイーヤ)で学生ら1,000人以上がデモを行い、ダルアー市の包囲解除を求めたが、治安部隊が突入し、数十人を逮捕、強制排除した。
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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(5月3日付)によると、カーミシュリー市とアームーダー市で活動家ら1,000人以上が集まり、ろうそくを携え、各地のデモ犠牲者を追悼した。
治安部隊はデモに警告を発し、監視を続けたが、介入・強制排除は行わなかった。
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ハマー県では、SANA(5月3日付)によると、サラミーヤ市郊外のアスラヤーで、「武装テロ集団」が住民や治安要員に無差別発砲し、市民3人、治安要員3人が負傷した。
内務省高官によると、これを受け、軍・治安部隊が「武装テロ集団」と交戦、「武装テロ集団」のメンバー1人を殺害、車から大量の武器・弾薬を押収した。
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ダルアー県では、SANA(5月3日付)が、軍消息筋の話として、ダルアー市で摘発作戦を続け、多数の「武装テロ集団」メンバーを逮捕した。
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ダマスカス郊外県では、SANA(5月3日付)によると、ダルアー市での「武装テロ集団」摘発の任務中に殉死しした警官の葬儀がヒーシュ村で行われた。
諸外国の動き
フランスのアラン・ジュペ外務大臣は「真の民主主義を確立するべく自らを表現しようとする国民に発砲する政府は正統性を失う」とアサド政権を厳しく非難した
ジュペ外務大臣はまた、アサド大統領を制裁リストに加える意思があると明言する一方、「シリア国民への戦車、重火器などといった暴力の過度の使用は、(リビアのムアンマル・)カッザーフィーに対して行ったのと同様な判断を我々にさせることになろう」と述べた。
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ドイツの外務副大臣は「行動する時が来た」と述べ、「シリア政府が続ける…行為を放っておけない。EUにはシリアの体制に対する制裁を実施し、力で圧力をかける以外選択肢はない」と発言した。
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EU27カ国の大使は、武器禁輸措置に加えて、弾圧に関与しているシリア政府高官の資産凍結、渡航ビザ発給停止などからなる制裁内容を確定するよう専門家に委託した。
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赤十字国際委員会は、シリア当局に対し、ダルアー市の弾圧による負傷者の治療のため、同地に入ることを認めるよう求めた。
AFP(5月3日付)が報じた。
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UNDPのハーリド・ミスリー顧問はSANA(5月3日付)に対して、シリアへの開発援助停止に関する報道を否定した。
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シリア・ニュース(5月4日付)は、ロバート・フォード在シリア米大使が「SNSでのデモの映像の一部にはねつ造がある」としたうえで、米国がシリア政府に対して、ジャーナリストの自由な取材を受け入れるよう求めた、と報じた。
AFP, May 3, 2011、Akhbar a-Sharq, May 3, 2011、DamasPost, May 3, 2011、al-Hayat, May 4, 2011 、Kull-na Shuraka’, May 3, 2011、Reuters, May 3, 2011、SANA, May 3, 2011、Syria News, May 4, 2013などを参照。
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