トルコのエルドアン首相がアサド大統領と電話会談を行い、シリア国民に耳を傾けるよう求める(2011年3月28日)

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反体制運動をめぐる動き

ダルアー県では、現地の目撃者によると、シリア治安部隊がダルアー市で非常事態反対を連呼するデモ参加者数百人に発砲した。

デモ参加者は市内の広場に表れ、自由を要求し、戒厳令を拒否するシュプレヒコールを繰り返し、治安部隊は数分にわたって空に向かって威嚇射撃を行ったが、デモ参加者は発砲が終わると、再び抗議行動を続けたという。

Akhbar al-Sharq, March 28, 2011

Akhbar al-Sharq, March 28, 2011

 

 

 

 

 

 

 

 

ダルアー市内の治安部隊はその後規模を縮小させていたが、住民が明らかにしたところによると、再び増強されたという。

ある商人は、ダルアー市でのデモの中心地となったウマリー・モスクを指さして、治安部隊が「モスク近くのあらゆる群衆に向けて弾丸を浴びせた」と述べた。

ダルアー市住民の一人でモスクの近くに家を持つアブー・タマーム氏によると、兵士と治安要員が「ほぼ1メートル間隔で」配置されていた。

ジャワービラ家の別の市民によると、狙撃手が重要な施設の屋上に再配備されたため、「誰も動こうとはしなかった」。

ダルアー市の商業地区は麻痺状態となっており、またシリア・ヨルダン国境の往来も減少していたという。

しかしインターネット上では、ダルアー市などでハーフィズ・アサド前大統領の像が破壊される映像、アサド大統領および前大統領の写真が破られる映像、マーヒル・アサド大佐を批判するシュプレヒコールを連呼する市民の映像などがアップされ続けた。

http://www.youtube.com/watch?v=D57SZpiH0Lo

http://www.youtube.com/watch?v=IsiFxi9uRGg

http://www.youtube.com/watch?v=9flGn0y2_d0&feature=player_embedded#at=61

http://www.youtube.com/watch?v=H9_BOjkD2wY

アフマド・バドルッディーン・ハッスーンがダルアー県のサナマイン市を訪問し、犠牲者遺族を弔問。

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『ハヤート』(3月29日付)によると、ラタキア市は平静を取り戻した。

市内商業地区の中心に位置するシャイフ・ダーヒル地区には、武装集団と治安部隊との激しい交戦による破壊や放火の痕跡が残ったという。

環境社会開発センターのイサーム・フーリー調整役はAFP(3月28日付)との電話で、「市内で次第に普通の生活が戻りはじめ、門を開けた学校もある」と述べたが、「住民は子供たちを通学させることをいまだ恐れている」と指摘した。

また「開店している商店もあり、車の往来も各地区で見られる」と付け加えた。

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しかし『シャルク・アウワト』(3月29日付)はラタキア市スライバ広場(スライバ地区)で約2,000人が宗派主義反対の集会を行ったと報じた。

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『シャルク・アウワト』(3月29日付)は、ヒムス県ヒムス市のアナーウーラ市場とマスクーフ市場で28日、平和的座り込みを行おうとした市民多数(30人以上)が逮捕されたと報じる。また数百人が参加したこの座り込みに対して、治安部隊が発砲したという。

シリア人権委員会は声明を出し、3月25日のヒムス市でのデモ発生後、多くの市民が失踪したと発表する。

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シリア・ムスリム同胞団が声明を出し、アサド政権による各地でのテロ弾圧を批判、犠牲者に哀悼の意を示すとともに、「現体制のもとで武器弾薬の貯蔵はゴラン解放のために自由でなされてきたが、国民、子供たちを殺すために用いるためではない」と非難した。

アサド政権の動き

ファールーク・シャルア副大統領はマナール・チャンネル(ヒズブッラーのテレビ放送)で、バッシャール・アサド大統領が2日以内に「シリア国民の幸福向上」のための重要な諸決定を発表すると述べた。

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AFP(3月28日付)によると、人民議会のムハンマド・ハバシュ議員は、「政権にどのような措置を講じるのか明示させるよう」人民議会に求めるべきだとしたうえで、「我々は大統領が人民議会に来て、必要な手順について説明するよう求めた」と述べた。

また「国民を宗派に分断し亀裂を助長することをねらったシリアに対する宗派主義的陰謀」の存在に関して、人民議会には「宗派主義的陰謀を拒否するという一致した立場が存在する」と述べた。

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当局は身柄拘束していたロイター通信の記者2人を釈放した。

女性テレビ・プロデューサーのアーヤート・バスマ氏とカメラマンのイッザト・バルタジー氏は同僚との電話で話したところによると、2人は現在レバノンに向かって越境中で、ともに無事だという。

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DPI(3月28日付)は、シリア政府に近い消息筋が、一部メディアで報じられていたファールーク・シャルア副大統領殺害を否定したと報じた。

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『アルワタン・オンライン』(3月28日付)は、カタールのハマド・ブン・ジャースィム・アール・サーニー首長の代理としてシリアを訪問したタミーム・ブン・ハムド・ブン・ジャースィム・アール・サーニー皇太子がアサド大統領と会談し、ユースフ・カラダーウィー師の発言に関して謝罪したと報じる。

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国内の政権寄りの有識者、芸術家などが、「祖国の屋根の下で」と題した声明を出し、ダルアー市などで続く自由・民主主義を求める平和的デモへの支持を表明するとともに、混乱、破壊をもたらすような煽動に反対の意思を示した。

また改革路線への支持を表明し、戒厳令解除、政治犯・言論犯の釈放、政党法制定、国民対話の開始などを求めた

同声明には、ドゥライド・ラッハーム氏、バッサーム・クーサー氏、バースィム・ヤーフール氏、ニダール・スィージャリー氏ら数十人が署名した。

諸外国の動き

またトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は昨日、過去3日の間に行った2度のアサド大統領との電話会談で、シリア国民に耳を傾けるよう求めたが、「消極的」な回答しか得られなかったことを明らかにした。

イラクへの公式訪問に先立ってアンカラで記者会見したエルドアン首相は、アサド大統領が改革実行を拒否する発言をしなかったとしたうえで、非常事態令解除、政党法制定の作業を実際に開始したと告げられたことを明らかにした。

また首相は、改革について国民と直接対話するようアサド大統領に忠告したと述べ、リビアの試練が繰り返されないよう、そしてシリア人が懸念を生み出すような遺憾で悲しい事件を繰り返さないよう望んでいるとの意思を示して会見を締めくくったという。

エルドアン首相の記者会見を受け、『ハヤート』(3月29日付)は、シリア国内の反体制デモの背後に外国勢力がいるとの疑念をアサド政権が繰り返すなかで、シリア情勢をめぐるトルコの懸念が増していると報じた。

またトルコはシリアでの政情不安がトルコと中東地域に消極的に作用すること、そして「革命」の火が地域全体のクルド人に波及することを恐れているという。

トルコの複数の高官は、シリアでの事態悪化がトルコに波及した場合の影響の深刻さを指摘しており、シリアでリビアのシナリオが繰り返され、シリアが分割の脅威に曝されることに警戒感を示しているという。

なぜならそれによって最終的には、地域におけるクルド国家建国が促され、トルコ南東部に新たな戦争の火種が及ぶかもしれないからである。

それゆえトルコは、真に抜本的・根本的な改革実施の必要をダマスカスが理解し、治安対策のみに依拠しないよう呼びかけているのだという。

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SANA(3月29日付)は、サウジアラビアのアブドゥッラー国王がアサド大統領と電話会談し、両国関係および中東地域情勢に関して意見を交わしたと報じた。

会談において、アサド大統領はシリア情勢は安定していると述べ、シリアとその国民に対して関心を寄せる国王に感謝の意を示したという。

これに対して、アブドゥッラー国王は、「シリアの治安と安定に打撃を与えようとする陰謀に対抗するシリアを支持する」と述べたという。

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フランスはラタキア市とダルアー市に訪問しないよう在留フランス人に勧告した。

フランス外務省はホームページで、「ラタキア市、ダルアー市への訪問、シリア・ヨルダン間の移動に際してのナスィーブ・ジャービル国境通行所の使用を避ける」よう在留フランス人に忠告する注意を発した。

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レバノンの首都ベイルート県内ハムラー地区にあるシリア大使館前で、前日に引き続き数300人のシリア人労働者がバッシャール・アサド大統領と政府との団結を訴えるデモを行った。

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ユースフ・カラダーウィー師が会長を務める世界ムスリム・ウラマー連盟はシリアでのデモ弾圧を批判。

AFP, March 28, 2011、Akhbar al-Sharq, March 28, 2011, March 29, 2011, March 30, 2011、Alwatan Online, March 28, 2011、DPI, March 28, 2011、al-Hayat, March 29, 2011、Kull-na Shurakā’, March 28, 2011、Naharnet.com, March 28,
2011、Reuters, March 28, 2011、SANA, March 29, 2011、al-Sharq al-Awsaṭ, March 29, 2011などをもとに作成。

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