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国内の暴力
タルトゥース県では、バーニヤース市とバイダー町の市民が、反体制デモへの強制排除による物的・人的被害に対して、大統領府が行った一世帯あたり補償金30,000シリア・ポンドの支払いの提案を拒否し、責任者の処罰、両市に対する治安部隊の包囲解除を求めた。
複数の目撃者によると、バーニヤース市では数千人が街頭に出て、抗議行動を行った。
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ヒムス県では、SANA(4月19日付)によると、ヒムス市で、ムハンマド・アブドゥー・ハッドゥール大佐とガッサーン・マフラズ曹長が非番中に殺害された。
遺体には拷問の跡があったという。
また士官1人と子供3人の遺体が発見された。
同通信社によると、彼らはヒムス市近くで18日に殺害され、「彼らの顔も傷つけられ、手足が切断され」(放置され)た、という。
さらに「武装集団がヒムス市のハミーディーヤ地区とバイヤーダ地区の警察署を襲い、戦闘によって警官6人が負傷し、武装集団2人が死亡、5人が負傷した」という。
一方、「アフバール・シャルク」(4月19日付)によると、早朝、タルビーサ市の犠牲者(18日死亡)を追悼するためにヒムス市で実施されていたデモに、治安部隊が突入、催涙弾などを使用して強制排除を試み、少なくとも4人が死亡した。
シリア人権監視団によると、ヒムス市で反体制活動家のマフムード・イーサーが逮捕された。
他方、SANA(4月21日付)は、ヒムス市のハーリド・ブン・ワリード・モスクを破壊分子が襲撃したと報じた。
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ダマスカス県、ダマスカス郊外県では、「アフバール・シャルク」(4月19日付)によると、ダマスカス大学医学部前で学生約100人が反体制デモを断行した。
またザバダーニー市、タッル市でも反体制デモが発生した。
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アレッポ県では、「アフバール・シャルク」(4月19日付)によると、アレッポ大学経済学部前で学生らが反体制デモを断行した。
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ダルアー県では、共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師がサナマイン市を訪問し、モスクで説教を行った。
ハッスーン師は説教で「怒りではなく…道徳や…尊厳に訴えて権利を要求するよう」求めた。だが、聴衆は「自由、自由」、「屈辱ではなく、死を(選ぶ)」といったシュプレヒコールを連呼し、説教を中断した。
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ラタキア県では、「アフバール・シャルク」(4月20日付)によると、ラタキア市で反体制デモが発生した。
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スワイダー県では、『ミスリー・ヤウム』(4月19日付)によると、クライヤー町のスルターン・バーシャー・アトラシュ廟の巡礼者がアサド政権を批判するシュプレヒコールをあげ、治安当局に強制排除された。
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3月15日革命殉教者委員会は2011年3月以降、国内で274人(民間人、軍人)が殺害された、と発表した。
アサド政権の動き
アーディル・サファル内閣は閣議を開き、非常事態令解除と国家最高治安裁判所(1968年設置)廃止に関する政令案と、平和的デモ調整法案を承認した。
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『ハヤート』(4月20日付)によると、アサド大統領はアレッポ市の諸団体からなる使節団と会見し、国内で発生している事件への意見を聴取した。
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シリアの内務省は声明を出し、「シリア国民に対して…、いかなる目的であれ、行進、座り込み、デモの実施を控える」よう呼びかけた。
また「祖国の治安を見出し、国民の間に恐怖を広めようとする武装集団のテロ活動を認めず、断固として、祖国のあらゆる場所で治安と安全を回復し、テロリストをどこまでも追跡し、司法に突き出し、すべての武装反乱を終わらせるために活動する」と明言した。
そのうえで国民に対して「テロ分子・容疑者について通報し、彼らを潜伏させたり、自由を求める機運を流血、公共・私有財産破壊のために利用させないよう」呼びかけた。
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共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師やムハンマド・サイード・ラマダーン・ブーティー師らシリアのイスラーム教ウラマーたちがシリアの現況に関する声明を発表し、アサド大統領が16日のサファル内閣第1回閣議で示した施政方針を危機打開の「抜本的な策」だと評価し、シリアの混乱収束、腐敗撲滅を求めた。
またカタール在住のユースフ・カラダーウィー師や同師が代表を務めるイスラーム教ウラマー世界連盟がシリアの反体制運動を支持・煽動していることを「シリアの治安と安定を標的とした計画」と結びついていると非難した。
レバノンの動き
AFP(4月19日付)によると、トリポリ市での反アサド政権のデモを呼びかけたイスラーム解放党のメンバー7人が逮捕された。
AFP, April 19, 2011、Akhbar al-Sharq, April 19, 2011、al-Hayat, April 20, 2011, April 21, 2011、Kull-na Shurakaʼ, April 19, 2011、al-Misri al-Yawm, April 19, 2011、Naharnet.com, April 19, 2011、Reuters, April 19, 2011、SANA, April 19, 2011, April 21, 2011などをもとに作成。
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