アサド大統領が外務在外居住者省の職員を前に演説「西側は対シリア政策を変更しつつあるが、ヘビのように状況に応じて脱皮を繰り返すだけ」(2017年8月20日)

アサド大統領は首都ダマスカス県の外務在外居住省大会で、同省職員らを前に基調演説を行った。

また演説後、出席した外務在外居住者省職員の質問に答えた。

演説と質疑応答はSANAがYoutubeを通じて公開(https://youtu.be/Qw_E-dNXnsA)、また全文(http://www.sana.sy/?p=610816)も配信した。

アサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, August 20, 2017

SANA, August 20, 2017

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「伝統的なものであれ、近代的なものであれ、こうした会合にとって代わり得る通信手段はない。直接対話は、共通のヴィジョンを作り出す…うえで重要だ。とくに直接対話は、今日のシリアがそうであるように、事態が複雑な時に重要となる…。我々が数年来戦ってきたこの戦争から、シリアの国土以外でも、さまざまな戦争が行われていることが明らかになった。世界レベルの戦争、地域戦争。シリア人、アラブ人、外国人による戦争。このことは、シリアだけが戦場になったり、たまたま戦争の当事者たちがシリアで戦っているということを意味しない」。

「シリアは歴史を通じて標的となってきた。なぜならこの標的を制圧する者が中東における決定権を支配するからで、中東の決定権を支配する者が…国際社会において発言力を得るからだ…」。

「我々は今日、こうした紛争の一部となっている。それゆえ、この戦争の原因はシリア国内のさまざまな立場(の違い)によるものだと言うのではきわめて表面的だ。西側はシリアという国家を戒めたいと考えている…。しかし、こうしたイメージは国際紛争と結びついている…。西側にとってこの紛争は…、過去数年、数十年にわたって西側の覇権に反攻してきた国々を従属させようとするものだ。こうした国のなかに、シリア、イラン、北朝鮮、ベラルーシ…、さらにはロシアさえ含まれている」。

「西側は自らの生存をかけた紛争のなかにいる。しかし、それは西側を破壊しようと考えている敵がいるからではない…。そんなものは存在しない。ソ連崩壊以来、西側が享受してきた覇権の時代が終わりつつあると西側自身が考えているからだ」。

「西側は、どのような分野であれ、あるいはどのような場所であれ国際社会の決定に参画しようとする国が現れたと感じる度に、ヒステリー状態に陥る…。西側にとって、協力関係は拒否されるべきものであり、従属こそが唯一の選択肢なのだ」。

「この紛争には現在、二つの勢力がある。第1は、支配エリートのために行動し、それにより、国際法、国際慣習、国連憲章などの一切に反し、世界中で数百万もの人々を殺す勢力。そして第2は、国家主権、国際法、国連憲章を順守しようと行動し、それが自らの国益、そして世界の安定に資すると見る勢力だ…。こうした紛争の代償を払うのはいつもより小さな国なのだ。シリアでのこの戦争において、我々は実に高い代償を払ってきた。しかしそれによってシリア、そして世界における西側の計略を頓挫させたのである」。

「アラブ地域、そして中東において、この計略の本質とは、ムスリム同胞団が宗教を代表しているとみなし、彼らに地域を支配させるというものだ…。これが同胞団の歴史的役割だ…。しかし、西側の計略を頓挫させたと言う場合、我々が勝利したことを意味しない。現実の枠組みのなかで常に話せねばならず、誇張すべきではない。彼らは敗退したが、戦いは続いているのだ」。

「我々は、優れた若者、そして多額の資金や何世代もの苦労が投じられたインフラを失った。しかし、その代わりに我々は、より健全で、より調和した社会を手に入れた…。この調和が国民統合の基礎となる。信条の調和、思想の調和、伝統、習慣、概念、見解の調和…。調和は合致を意味するのではない。調和は相互補完的なもので、それが実現することで一つの国民的な「色」が作り出される。この国民的な「色」こそが、一つの祖国に暮らすすべての住民の完全な国民統合を作り出す」。

「どのような国民統合なのかと言う者もいるだろう。事実、我々は今日、宗派主義的な言説を耳にしているからだ…。1980年代にムスリム同胞団の犯罪が横行した直後もそうだったが、そうしたも言説は一過性のものだった…。言葉として表れるものではなく、心のなかにあるものが重要なのだ…。このような分離主義的な側面が我々の社会の各所、そして心のなかに存在したら、シリアはとっくに崩壊していただろう」。

「宗派主義的な側面は(現下の)戦争の前にも、灰の中で燻る火のように心のなかに存在していた。だが、それはきわめて限定的だった…。(それゆえ)この戦争が起こったにもかかわらず…、現状においては、社会は結束を強めた…。結束をもたらすうえで基本的は役割を果たしたのは社会、そしてその歴史だった」。

「我々はリアクションと信念を区別すべきだ。宗派主義的なリアクションは存在するが…、宗派主義的信念は存在しない」。

「シリア国内であれ、彼ら(西側)諸国内であれ…、1週間、1ヶ月も経たずに、彼らの愚かな決定や中東におけるテロ支援に直接起因する事件が発生している。こうした現実により、彼らは、部分的、ないしは恥ずかしげにではあるが、これまでの姿勢を転換している…」。

「しかしこの転換は政策転換を意味しない。西側とはヘビのように状況に応じて脱皮を繰り返すだけだからだ。彼らは当初は大衆運動を支援すると言っていた…。その後、「反体制派」、すなわち「穏健(な反体制)派」という政治的概念を用いて、彼らが過激派、テロリストではないとして、武装勢力を支援した…」。

「彼らの所業が国際社会、国際世論、そして彼らの国の世論の前で暴露されると…、もう一つの「人道的な産物」で対処した…。テロリストが虐殺を行い、民間人を殺戮していることに対する「完全なる沈黙」という産物である…」。その真の狙いは、武装集団が隊列を建て直し…、さらなるテロリストが援軍を派遣する機会を与えることだった」。

「テロとの戦いとは目標ではあるが、同時に我々が何かを行ううえでの基礎でもある。基礎がある限りにおいて、我々はそれをより所にする。すなわち、原則、指針があるということだ…。この基礎、そしてこうした信頼を起点として、我々は危機発生当初からこれまで提起されてきたさまざまなイニシアチブに柔軟に対応してきた。我々はこうしたイニシアチブのほとんどが悪意に基づいていることを知っていたにもかかわらずだ」。

「彼らが、テロを通じて得ることができなかった成果を得るというのがこうしたイニシアチブの目的だった…。それゆえこうしたイニシアチブから結果はもたらされなかった。なぜか? テロリストであれ、手先であれ、その両者であれ、我々が対話していた者は、彼らの主人によって掌握されており、彼らの口から発せられる言葉は、彼らの主人から承諾を得たもの、そしておそらくは彼らの主人の言葉をまとめたものだったからだ。実質的に我々は奴隷と対話してきたのだ」。

「彼ら(反体制派)がどの会合、直接・間接対話でも…シリアに敵対する諸外交の国益を表明した。同時に、これらの提案はシリア国民の利益、祖国統一に反していた…。むろん、我々は(交渉してきた)人物や組織が存在しない想像上の妖怪のような存在だということを知っていた…。最近になって彼らも…意味がなく、一度使われたらゴミカゴに投げ捨てられるような効き目のない薬のように利用されていることに気づいた…。いずれによせよ、彼らが革命なるものの過ちについて語りはじめたことは良いことだ」。

「彼らはいくつかの過ちを犯した。第1に、主人が奴隷を重用すると考えたことだ…。第2に、彼らが、シリア国民のように自らを律する国民がこの手の手先や裏切り者を受け入れると考えたことだ…。第3に、彼らが「革命は失敗した」と言っているが、革命というものは本来は失敗しないということだ」。

「彼らはある時期、革命という概念を独り占めしたと考えた…。しかし、シリアの多くの市民は、彼らが革命という言葉を用いているがゆえに、革命を遠ざけた。革命とは我々の側の概念だ。我々は今も、この概念を誇りに思っているし、誰にもそれを譲り渡さない…。彼らが革命家を名乗ろうと…、そのことは彼らが革命家であることを意味しない。名前は人の本質を変えるものではない」。

「(アスタナ・プロセスにおいて、ロシア、イランとともに保障国となっている)第3の当事者であるトルコはどうか? 我々にとってトルコは書面に記載されいてるだけで、保障国とはみなしていないし、和平プロセスのパートナーともみなさない。もちろん信用していない。テロ支援国だ。保障国だが、テロリストのための保障国だ。トルコがアスタナ・プロセスに参加したのは、エルドアンにそれ以外の選択肢がなかったからというのが本当のところだ」。

「エルドアンの使節団の参加は…シリアにトルコの部隊を駐留させることの正当性、すなわち占領の正当性を得ようと狙っているからだ…。エルドアンは今もシリアのテロリストを支援する役割を担っている」。

「緊張緩和地帯は…安全地帯と同じ発想なのか? テロリストに利するのか? 事態が分割に向かうことを許容するのか? 実際のところ、緊張緩和地帯は、戦闘停止のために提起されたそれ以前のすべてのイニシアチブと基本線、そして本質において同じだ…。その本質とは、流血を止め、難民を帰還させ、人道支援を配給し、テロリストに退去の機会を与えることだ。

「我々がある地域でテロに打撃を与え続けるということは…、別の地域でテロを衰退させることを意味する」。

「今後何が起きるだろうか? 実質的に唯一起こり得ることは、シリア国家によって対話委員会が設置される一方、緊張緩和地帯内の当事者、ないしはその住民も委員会を設置し、最終目標としての国民和解に向けて議論を行うというものだ。テロリストが退去し、国家の支配が回復しなければ、国民和解とは言えない」。

「シリアの政治の将来の方向性とはどのようなものか? 我々は、戦争が始まった当初から繰り返してきた基礎から始める。それは二つの点に力点を置いている。第1に、予備部隊、そして友好国の支援を受けて、あらゆる場所でテロリストに対する戦いを続けることだ。第2に、あらゆる場所で国民和解を続けることだ」。

「国際社会、そして西側の世論は…、7年間にわたり同じ嘘が流布してきたことに築いてきた。その嘘とは、国家が国民を殺し、世界は国家に反抗する国民の見方だというものだ。しかし、国家は持ち堪えた。こうした話は、子供の話としても論理的ではない…。彼らは嘘をついてきたことの責任に気づいてきた…。だが彼らは何が本当の話かを必ずしも知ろうとはしていない。このことが外交官としての職務の肝に据えられるべきだろう。今必要なのは、真実の扉が開かれた今、国際社会、とりわけ西側の世論に本当の話を伝えることだ」。

「我々は政治、経済、文化、市場といった面で、東を向かなければならない。東と言うのは政治的な意味であって、地理的な意味はその一部に過ぎない」。

「この東は…かつての第三世界ではない。あらゆる言葉の意味において第一の世界になっている…。東には、我々が必要なすべての必要条件、要素が揃っている」。

「西側は今日、パラノイアに苛まれている…。彼らは自分たちとの関係が絶たれれば、酸素を経たれたと我々が考えると思っている。彼らが大使館を閉めれば、その国が孤立すると考えている…。しかし、我々は孤立していない…。一部の西側諸国が安全保障面での協力を条件に大使館を再開すると言っている…。しかし、我々は大使館が再開されなければ、安全保障面での協力を受け入れない」。

「現段階、すなわち戦争下において、シリアの政策が依拠すべき基礎とは何か? 第1に、すべてはシリアの行く末、未来…だ。第2に、領土の統一性で、これは議論の余地のない自明のことだ…。第3に、シリアのアイデンティティ、愛国的アイデンティティだ…。しかしシリアのアイデンティティの本質はウルーバ(アラブ性)だ…。第4に、敵、ないしはテロリストを許さないことだ…。第5に、戦争によっても我々の原則に変化はなく、パレスチナ問題が我々にとっての本質であり続けるということだ。イスラエルが我が領土を占領する敵である限り、我々はこの地域のレジスタンスを支援し続ける」。

AFP, August 20, 2017、AP, August 20, 2017、ARA News, August 20, 2017、Champress, August 20, 2017、al-Hayat, August 21, 2017、Kull-na Shuraka’, August 20, 2017、al-Mada Press, August 20, 2017、Naharnet, August 20, 2017、NNA, August 20, 2017、Reuters, August 20, 2017、SANA, August 20, 2017、UPI, August 20, 2017などをもとに作成。

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