2011年7月29日のシリア情勢

ラマダーン月を間近に控え、軍治安部隊による弾圧が激しさを増している。軍治安部隊は、礼拝者のモスクへの携帯電話持ち込み禁止、検問所設置を通じた「都市間の遮断」、モスク包囲、イマーム逮捕、催涙ガス発射、50歳以下の礼拝者の(モスクでの)礼拝禁止など「一連の行為」を通じて、デモの封じ込めに躍起である

複数の活動家によると、過去24時間に治安部隊が行った治安活動はこれまでもっとも激しく、11人が殺害されたという。シリア人権監視団とシリア人権連盟は、ラタキア県、ダルアー県、ダイル・ザウル県、そしてヒムス県クサイル市で若者4人が殺害されたと発表した。彼らは治安部隊の検問所で殺害されたか、昨日のデモに参加中に射殺されたという。また両人権団体は、ダマスカス郊外県ザバダーニー市でも人、ダイル・ザウル市で人の市民が昨日未明の治安維持活動により殺害されたと述べた。

ダイル・ザウル市では、戦車や装甲車が展開し、戦闘機が抗議行動を行う人々の頭上を旋回、ムハーバラートと住民の間で激しい衝突があった。
治安当局によるデモ抑止措置にもかかわらず、シリア人権監視団によると、「50万人以上がハマー市中心のアースィー広場で行われたデモに参加した」。金曜礼拝を指導したシャイフが体制打倒を叫んだという。
同監視団によると、ダイル・ザウル市では、「4機の戦闘機がデモ参加者の頭上を旋回する」なか、約50000人がデモに参加した。シリア人権連盟のアブドゥルカリーム・リーハーウィー所長によると、ダイル・ザウル市では数千人がデモに参加し、またブーカマール市でもダイル・ザウル市救済を叫ぶデモが発生した。
さらに、シリア人権監視団は「デモ参加者の数を上回る治安部隊がバーニヤース市(西部)のデモを暴力によって強制排除し、参加者たちを街区、路地、自宅に追い詰めていった」ことを明らかにした。
また同監視団によると、イドリブ県でも3,000人がデモに参加し、ラタキア市クナイニス地区では4,000人が参加したデモが発生。強制排除される際、1人死亡、1人負傷したという。
複数の活動家によると、ダルアー県でもデモ排除のために実弾が用いられた。「治安部隊はダルアー市郊外のインヒル市を集中的に包囲し…通行を禁止している」という。また治安部隊は「50歳以下の礼拝者がモスクに入り、礼拝を行うことを禁じるとともに、携帯電話、なかでもデジカメ機能搭載の機種のモスクへの持ち込みを禁止した」。

ヒムス市では、シリア人権監視団によると、「包囲され、往来が阻止されているにもかかわらず、複数の地区でデモが発生した。とりわけバーブ・アムル地区、ワアル地区、ハーリディーヤ地区、バイヤーダ地区、バーブ・タドムル地区、インシャーアート地区、ハドル地区、グータ地区、マイダーン地区でデモは激しかった。またラスタン市(ヒムス郊外)でもデモがあった」。

シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、早朝、ダマスカス県カダム区で電話、インターネットが不通となった。またルクン・ディーン区では捜索活動が続いた。またシリア人権連盟によると、ダマスカス郊外県ハラスター市に治安部隊が展開し、15人が負傷した。またアルバイン市、ザバダーニー市、ダーライヤー市では数千人規模のデモが発生した。そのほか、ダマスカス郊外県のキスワ市、マダーヤー町、ムウダミーヤト・シャーム市、ドゥーマー市、カーラ市、ハジャル・アスワド市、ジュダイダト・アルトゥーズ町、ダマスカス県バルザ区、カーブーン区、マイダーン区でもデモがあった。

一方、クルド人が多く住む東部でも、シリア人権機構(SWASIAH)のハサン・バッルー氏によると、カーミシュリー市、ラアス・アイン市などで複数の都市でデモが発生した。しかし、非公認のクルディスタン労働者党(PKK)系の組織に属するデモ参加者が、クルドの旗とアブドゥッラー・オジャラン党首の写真を掲げたのを受けて参加者はデモを中止した。バッルー氏によると、アイン・アラブでは数千人の住民がデモに参加していたが、PKKメンバーがクルド民族主義色を強めたデモを行おうとするや、デモを止めた。バッルー氏によると、デモを止めた参加者のなかにはクルド民族主義政党が動員をかけた住民もいた。

なおシリア・クルド・イェキーティー党が声明を発表し、カーミシュリー市、アームーダー市、ダルバースィーヤ市、ラアス・アイン市、アイン・アラブ市などで、クルド人が「あなた方の沈黙が我々を殺す」金曜日に反体制デモを行い、クルド人の地位回復などを求めたと発表。それぞれ数百人が参加したという。

シリア人権監視団、シリア人権連盟によると、ダルアー市、ヒムス市(バーブ・アムル、ワアル、ハーリディーヤ、バイヤーダ、バーブ・タドムル地区、インシャーアート、ハドル地区、ハッターブ村マイダーンの各地区)、ラスタン市、ダマスカス郊外県でもデモがあった。

シリア軍のリヤード・アスアド大佐は、インターネットでビデオ映像を配信し、そのなかで軍を離反し、「自由シリア軍」を発足したと発表する。「民間人を殺害する治安部隊に対して、合法的な目標をもって対峙することになる」と述べたうえで、「我々はシリア領内のあらゆる場所で例外なく目標を実行する」と表明した。また、「名誉あるすべての軍人」と彼が名づけた兵士に直ちに軍を離反し、国民の胸に自らの銃を向けることを止めるよう呼びかけた。

『ハヤート』29日付に掲載されたインタビューで反体制活動家の重鎮リヤード・トゥルク氏は、現下の危機を解消するには、「家族と体制の関係を解き、そのうえで民主的市民国家への平和的以降の諸条件を検討する」ことと述べた。インタビューはシリアの反体制活動家のムハンマド・アリー・アタースィーが行った。

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SANAは、武装集団が、ラタキア市、ダイル・ザウル市、ブーカマール市で治安維持部隊や民間人に「発砲し、ダイナマイトを投げてきた」と報じる。またラタキア市クナイニス地区、ヒムス市バーブ・ドゥライブ地区、ブーカマール市で治安維持部隊隊員1人が殺害される。また市民、警官が多数負傷した、という。
SANAによると、早朝、ヒムス県タッルカラフ地区の石油パイプラインが武装破壊集団によって破壊される。この破壊行為によって、パイプラインが約15メートルにわたり寸断され、原油が流出した。23日にも、ダマスカス・アレッポ間で列車が「武装集団」によって脱線されられた。
アレッポでアサド大統領の改革路線を支持する祝典が開催される「アレッポよりシリアへの忠誠の挨拶を」と題した祝典では、全長1キロにおよぶシリア国旗がアレッポ砦に掲げられた。祝祭にはブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報担当報道官、アフマド・バドルッディーン・ハッスーン師(共和国ムフティー)、ユーハンナー・イブラーヒーム大司教(シリア正教会)、カリーム・バクダドゥーニー氏(レバノン・カターイブ党)らが参加した。
一方、ダマスカス県バーブ・トゥーマ区、ラタキア市、タルトゥース市でも数千人が集まり、アサド大統領の改革路線を支持した。

他方、SANAは、ダマスカス郊外県各地、ハマー県郊外、ヒムス県郊外、イドリブ県郊外で金曜の礼拝後集会が行われた、と報じる。

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国際人権NGOのFIDHはアサド政権が人道に対する罪を犯していると非難、報告書を公開した。

FIDH, “Bashar Al Assad: Criminal Against Humanity: Report of Human Rights Violations Committed in Syria March – July 2011,” AFP, July 29, 2011、AP, July 29, 2011、Akhbār al-Sharq, July 29, 2011、al-Ḥayāt, July 29, 2011、July 30, 2011, July 31, 2011、SANA, July 29, 2011などをもとに作成。

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