2011年8月17日のシリア情勢

ラタキア市ラムル地区での軍・治安部隊の攻撃が続く一方、ヒムス市など複数の都市でも大規模な捜索が行われ活動家ら100人以上が逮捕された。また国連安保理での会合を控え、ロシア、イランがバッシャール・アサド政権への西側の圧力を回避すべく動き始めた。

反体制デモをめぐる動き

シリア人権監視団によると、ラタキア市では約700人の治安要員が早朝からラムル地区で家宅捜索を行い、「指名手配者」リストに基づき数百人を逮捕した。

『ワタン』(17日付)によると、「(ラタキア)市の情勢は、軍が武装部隊メンバー数十人をしたことを受け、制圧された…。軍は、セメントでバリゲードを築き、路上で違法な露天を開いていた武装集団を排除したのち、スカントゥーリー地区、ラムル地区から駅地区までの幹線道路を解放した」と発表した。一方、複数の目撃者によると、軍・治安部隊、そしてシャッビーハが攻撃したのは、スライバ地区、ラムル地区、スカントゥーリー地区、ブスターン・サマカ地区などスンナ派が多く住む地区だという。

シリア革命調整連合によると、ラタキア市内のスライバ地区、タービヤート地区、カルア地区など複数地区で夜の礼拝後にデモが発生した。モスクから街頭に出た参加者は治安当局の発砲を受けた。デモには約2000人が参加していた。

フェイスブック上でアレッポ革命が宣言され、またラマダーン月17日のバドルの戦い記念日にちなんで「アレッポ・バドル」の名のもとにデモがよびかけられた。これを受け、アレッポ市では数千人がサイフ・ダウラ地区、マシャーリカ地区、イスマーイーリーヤ地区、ジャミーリーヤなどでデモを行い、アサド政権の打倒などを連呼、サアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)に結集しようとする。事態を受け、治安部隊やシャッビーハが派遣され、催涙ガスなどでデモ参加者の行進を阻止。デモ参加者は翌日の結集を約束して解散した。なおこれ以外にもサーフール地区、サラーフッディーン地区でもデモがあった。

Kull-na Shuraka', August 17, 2011

Kull-na Shuraka’, August 17, 2011

シリア人権監視団によると、イドリブ県ザーウィヤ山で、軍・治安部隊により市民1人が殺害される。

シリア人権監視団によると、ヒムス市では、アルメニア地区、ナーズィヒーン地区、タッル・バアルバで市民3人が軍・治安部隊によって殺害される。またハーリディーヤ地区で約40人が逮捕。アシーラ地区で地上電話、携帯電話回線が不通となり、バーブ・スィバーア周辺で激しい銃声が聞こえたという。

一方、シリア革命調整連合によると、ワアル地区のファーティマ・モスクで夜の礼拝を終えて街頭に出た市民が発砲を受けた。またバーブ・スィバーア地区でも同様の動きがあった。ヒムス市郊外のラスタン、タルビーサ、タドムルでは女性がデモを行う映像がインターネットを通じて公開された。ハウラでも大規模なデモがあり、軍・治安部隊、シャッビーハの弾圧を受けた、という。

複数の活動家・目撃者によると、ダマスカス県ルクンッディーン区でも大規模な家宅捜索を行い活動家数十人が逮捕された。

またドゥーマー、ザバダーニー、ザマルカーなどダマスカス郊外県の都市でも、シリア革命調整連合によると、デモがあり、治安当局の発砲を受けた。

ダルアー県のダーイル、インヒル、ジーザなどでも大規模なデモが発生した映像がインターネットで公開された。

ダイル・ザウル県のブーカマール市、ファウリーヤ、ハマー市各所、イドリブ、ビンニシュ、カーミシュリー、タルトゥースでも同様のデモがあったという。

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モスクで反体制的な説教を行ったシャイフ、ハーリド・クーキー氏、ハムザ・アビー・フサイン氏がモスクでの説教を禁じられる。両氏ともダマスカス郊外県のアサド・ヴィレッジにある案=ナズィーフ・モスクで説教を行っていた。

『ハリージュ』(17日付)はシリア公式筋の話として、マーヒル・アサド大佐が指揮する第4師団本部(ムウダミーヤト・シャーム)で爆発があったとの一部報道には根拠がないと報じる。

シリア人権委員会がダマスカス郊外県で逮捕者282人の氏名を公開。

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『クッル・ナー・シュラカー』(17日付)は、ザバダーニー市でデモ弾圧、逮捕・捜索の任務についていたシリア軍兵士の証言を紹介。同兵士は自分がどこで任務を遂行するかを教えられていなかった、という。

『シャルク・アウサト』(17日付)がヒムス県の第3師団から離反しヨルダンに逃走したシリア軍兵士とのインタビューを掲載。離反時の様子について、この兵士は、大隊長が基地内武器庫を開放し、兵士に部隊にとどまるか、(シャッビーハやムハーバラートと)戦うか、逃げるかを選ばせた、という。一部の兵士はとどまったが、多くの兵士は脱走を試みた、という。一方、リヤード・アスアド大佐が率いる自由シリア軍に関して、象徴的な存在であってアサド政権への脅威となっていないとしながらも、人々の精神に訴える影響力があると述べた。
また数万の兵士が離反し、軍はシャッビーハ、ムハーバラート、傭兵に頼らざるを得なくなっている、という。しかし第4師団や共和国護衛隊に関しては、離反・分裂の可能性はないとしている。その理由として、アサド政権は軍内部を細分し、大規模な分裂・離反が起きないようにしているからだと指摘した。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(17日付)によると、シリア大使館は、米国や西側諸国に在住のシリア人を脅迫。同紙が取材した在米シリア人によると、シリア大使館スタッフは彼らが反体制デモなどに参加している写真を撮影し、シリア本国の家族に送りつけている、という。

俳優のジャマール・スライマーン氏は『ミスリー・ヤウム』とのインタビューで、アサド大統領の支持者たちは、大統領が国民のために自由を拡充するとの姿勢を示した際、彼を侮辱し、のしったと述べ、国民に体制が変化への意思があることを示すような真の改革を行う必要があると述べた。

アサド政権の動き

アサド大統領はバアス党地域指導部メンバー、中央委員会メンバー(95人)、各支部幹部、人民諸組織代表ら党員500人と会見。「シリアの改革は、シリア人の満足感や鼓動から発しており、外国の圧力に応えるかたちで生じるものではない。シリアは今後も強く抵抗し続けるだろうし、過去も、そして未来もその尊厳と主権を放棄しない」と述べるとともに、「今日シリアを標的とした動きは、合法的な権利を擁護するシリアのアラブ性に満ちたレジスタンスとしての役割を弱体化させいようと様々な試みが行われた2003年や2005年に起きたこととまったく似ている」と現状を評価した。一方、憲法見直しをめぐって「社会のすべてのレベルの全階層を参加」させる必要を強調。「治安と安全を回復し、武装デモを収束させる」ことを強調した。

ワリード・ムアッリム外務大臣はアーディル・サファル内閣閣議で、「シリアを標的とした陰謀行為の諸側面、背景を明らかにする」と宣言し、「シリアに暴力を停止せよと圧力をかけるために複数の国が行う扇動と事実の婉曲は、武装テロ集団の犯罪がシリアの複数の都市・地域で見られる暴力の原因であるということを無視している」と述べた。

SANA, August 17, 2011

SANA, August 17, 2011

SANAによると、4人の武装集団がヒムスのワアル地区のインターネット・カフェを襲撃し、カフェを利用していた客の携帯電話を盗んだのち、近くのモスクに立てこもり発砲、6人を負傷させた。

SANAによると、ラタキアのアウカーフ通りで車が爆破。

SANAによると、治安当局は国外からハマー県に向かっていた車2台が搬送していた大量の武器弾薬を押収。

アサド大統領は国連の潘基文事務総長との電話会談を行う。国連の声明によると、潘事務総長が軍事作戦と集団的逮捕の即時停止を求めると、アサド大統領は「すでに軍事・治安作戦は停止された」と回答した。

 諸外国の動き

『サフィール』(17日付)は、ロシア訪問中のイランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣がシリアをめぐる共同計画をロシア側に提示。この共同計画はアサド政権の理解を得ているとのことで、西側諸国の圧力をいかに回避するかに焦点があてられたという。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、サーレヒー外務大臣との会談後、記者団に「中東地域における諸問題に対するロシアとテヘランの立場が非常に近い」と述べる。シリアについて直接言及しなかったもの、ラブロフ外務大臣は、「地域へのいかなる外国の干渉をも拒否」し、「歓迎される唯一の干渉は、関係当事者間の対話にふさわしい状況をつくるための努力を行うこと」と述べた。ロシア消息筋によると、イランは、国連安保理でのシリア非難決議採択をめざす西側諸国への対応をきわめて注視しており、ラブロフ外務大臣の発言は、国連安保理でロシアが非難決議に反対の意思を示すものと解釈される。

一方、ロシアの国営企業「Rosoboronexport export」社長は、インテルファクス通信によると、ダマスカスへの武器輸出を停止するよう求める国際社会の圧力にも関わらず、シリアのアサド政権への武器供与を増加させ続けている、と述べる。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は記者団に対して、アサド政権の現在の姿勢は、国際社会の軍事介入を受ける直前のリビアに似ていると述べる。またアフメット・ダウトオール外務大臣は昨日、改めてデモ参加者への軍事作戦の停止を求めた。また国連の潘基文事務総長と電話会談で、シリア情勢に関する情報を提供した。

米国はワシントンのシリア大使館スタッフの移動を制限。これはロバート・フォード米大使のハマー訪問を受けてシリアが駐ダマスカス米大使館スタッフの移動を制限したことへの対抗措置。

ドイツのギド・ウェスターウェレ外務大臣は、ドイツが引き続きシリアでの弾圧停止のための努力を続ける意向を示し、近々に新たな活動を行うと述べる。

チュニジア政府は、「対応を協議する」ため、駐ダマスカス大使を召還。

国連安保理でのシリア問題をめぐる審議を間近控え、バレリー・アモス人道問題担当事務次長とナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官がシリア情勢について報告を行う予定。これに先だって、アモス事務次長は記者会見で、「シリアの人権状況に関する情報と「証拠」を提示する」と述べ、人道に対する罪について指摘することを示唆。

国連はシリア国内の非常勤職員25人とその家族を安全上の理由で国外退避すると発表。シリア国内では200人以上の国連スタッフが駐在しており、そのほとんどがUNRWA、UNDOF関連の職員。

キリスト教カトリックの国際的な団体パックスクリスティ・インターナショナルは、国際社会にシリアでの虐殺停止のために介入する必要があるとの声明を発表する。

AFP, August 17, 2011、Akhbār al-Sharq, August 17, 2011、AKI, August 17, 2011、Damas
Post, August 18, 2011、al-Ḥayāt, August 18, 2011, August 19, 2011、al-Khalīj, August 17, 2011、Kull-nā Shurakā, August 17, 2011, August 18, 2011、Reuters,
August 17, 2011、al-Safīr, August 17, 2011、SANA, August 18, 2011、al-Sharq al-Awsaṭ, August 17, 2011、UPI,
August 17, 2011、The Wall Street Journal, August 17, 2011などより作成。

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