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諸外国の動き
反体制デモの動員力が減退するなか、EUはシリアに対する追加制裁の承認を正式に発表し、発動した。
第7弾にあたる今回の追加制裁では、バッシャール・アサド大統領のいとこラーミー・マフルーフ氏が所有するシリアテル(携帯電話会社)、シャーム・ホールディング(持ち株会社)、サルーフ社(シリアの軍事産業に投資しているとされる)を含む6社、そしてタイスィール・カラー・アウワード法務大臣、アドナーン・ハサン・マフムード情報大臣の2人が対象となった。
この追加制裁により、制裁対象となった個人・機関は合わせて56人、18社・機関となった。
なお、制裁リストへの追加に関して、アウワード法務大臣は「無差別逮捕・投獄にかかる政策・行為を支持した」こと、マフムード情報大臣はシリア政府の「情報政策」に寄与したことを理由としてあげられている。
だが、閣僚の日常の執務以外に制裁の根拠を示せないEUの姿勢には手詰まり感がある。
この追加制裁をめぐり、『ハヤート』(9月24日付)は、複数の商人や専門家の証言をもとに、アサド政権への影響を分析した。
それによると、これまでの制裁によってシリアの石油の輸出は事実上不可能となり、アサド政権の収入が大幅減となってはいるが、現在までのところ支配力を脅かしてはいないという。
シリア政府はこれまでロシア、中国、インドなどに石油輸出先を転じようとしているが、現在までのところこれらの国々からの需要は高くない、という。
ある商人は「中国人やインド人に関して言うと…、もちろんいくらかは購入しようとしている。しかし経済的な実現性はなく、また購入に伴うビジネス上のリスクが解消されるほどの取引量にもなり得ない」と述べた。
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エリク・シュヴァリエ駐シリア・フランス大使は、ダマスカス県の旧市街キリスト教地区で「シャッビーハが鉄棒などで私たちの一行を襲い、女性たちが卵や石を投げてきた。彼らの行動は敵対的で、私たちは車に引き返した」と述べた。
大使ら一行は、襲撃を受ける前に、イグナーティーウス4世ハズィーム・アンタキア総大司教をはじめとするギリシャ正教司祭らと会談していた。
複数の目撃者によると、若い男女がアサド大統領を支持するシュプレヒコールを連呼し、襲撃した、という。
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国連総会出席のためニューヨーク滞在中のトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、24日(現地時間23日晩)、「トルコはシリア国旗を掲揚し武器を輸送していた船舶を繋留した…我々はシリアに武器を輸送するあらゆる船舶の航行を禁じると決定した。我々はこの決定をダマスカスに通達し、近隣諸国にも伝えた…。今後、空路および陸路でも武器を輸送する貨物車両、貨物機に対して同様の対応を行う」と述べた。
首相は詳細について明らかにしなかったが、アナトリア通信によると、マルマラ海で繋留したと報じた。
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CNN(9月24日付)は、国連人権高等弁務官事務所が、シリアでの反体制運動弾圧に「強い懸念」を感じており、「安保理がシリアをめぐる問題を国際刑事裁判所に提訴することが重要」との見解を持ちつつあると報じた。
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『イクティサーディー』(9月24日付)は、在シリア米大使感高官の話として、米国当局がシリア中央銀行のアディーブ・マイヤーら総裁にビザを発給したと報じた。
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SANA(9月25日付)は、ロシア外務省が声明を出し、BRICS諸国外相がシリアへの制裁強化が危機を激化させ、そのことが国内情勢をさらに複雑にし、地域の平和と安全を危機にさらすと考えていることを明らかにしたと報じた。
BRICS諸国外相は国連総会出席のため訪問中のニューヨークで会談を行った。
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SANA(9月25日付)は、ジャズィーラ・インターナショナル(英語放送)のニール・ルースィン(米国人)特派員が自らの記事(9月24日付)で、シリア国内の各所に武装集団がおり、治安維持部隊兵士約700人を要撃によって殺害したことを認めた。
同記事によると、シリアの複数の地域で7週間にわたり取材を行い、ダルアー、ハマー、ラタキア、アレッポ、ヒムス、ダマスカスを訪れた結果、多数の民間人の青年が村々やさまざまな地区で武装していることが確認できたという。
また取材を行った武装集団の指導者たちは、自らが治安部隊を要撃し6人の兵士を殺害したほか、ハマー・ヒムス街道でも要撃を行い、士官を殺害したことを認めた。
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イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領は国連総会出席のため訪問中のニューヨークで『ニューヨークタイムズ』(9月24日付)の取材に応じ、シリア情勢に関して、反体制デモに伴う混乱を「陰謀」と断じたうえで、問題解決のため相互理解・尊重に基づく対話を行う必要があるとの見解を示すともに、外国による内政干渉が事態を悪化させるだけだと非難した。
アサド政権の動き
SANA(9月24日付)は、シリア軍副参謀長のバッサーム・アンターキーヤ中将が23日(金曜日)、「心臓発作」を起こして死亡したと報じた。
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SANA(9月25日付)は、国連総会出席のためニューヨークを訪問中のワリード・ムアッリム外務大臣が、アルゼンチン、カザフ、レバノンの外務大臣とそれぞれ会談したと報じた。
これらの外務大臣はアサド政権の改革路線への支持を表明するとともに、シリアが受けている外国の干渉やメディアの煽動がシリアの安定に抵触する動きだと理解を示したという。
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ファイサル・ミクダード外務次官は23日(現地時間22日)、ニューヨークの国連本部で開催されたOIC外相年次調整会合に出席し、演説を行い、外国と結びついた過激派のテロ行為にシリアが曝されていると強調した。
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共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師は『ナハール』(9月24日付)のインタビューに応え、フランス帰国後のレバノン・マロン派のビシャーラ・ラーイー総大司教と電話で会談し、シリア情勢をめぐる姿勢への謝辞を述べたと語った。
また近くレバノンを訪問する予定があることを明らかにした。
反体制運動をめぐる動き
複数の反体制活動家によると、ダルアー県フラーク市、ヒムス市、ハマー市、バーニヤース市、ダイル・ザウル市で反体制デモが発生し、死傷者が出た。
シリア人権監視団によると、15人が殺害された。
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シリア世俗主義者連盟設置委員会が発足し、第1回会合を開いた。
会合では暫定執行委員会のメンバー11人が選出された。暫定執行委員会は政党法に基づき公認申請を行う。
暫定執行委員会が出したプレスリリースによると、メンバーは以下の通り。イリヤース・ハルヤーニー、マーヒル・サッルーム、ムハンマド・ハッサーン・ムニール、イーリヤー・マアリー、マーズィン・ビラール、ムハンマド・ハーッブー、ハーラー・トゥーマー、サラーム・アイユーブ、ターミル・ラスーク、ハーリド・リファーイー、サーバー・トゥーバー。
メンバーの一人のマアリー氏は会見で「連盟は世俗的思考の普及を通じて単一のシリア社会の建設をめざす」と述べた。
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「ドゥルーズ山自由運動家」を名乗る集団が声明を出し、シリア「革命」への支持を表明した。
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シリア軍を離反したイブラーヒーム・マジュブール大尉はアラビーアの取材に対して、シリア軍を離反し、自由将校運動や自由シリア軍に参加している兵士の数は10,000人を越えていると述べた。
AFP, September 23, 2011, September 24, 2011、Akhbar al-Sharq, September 24, 2011、Alarabia.net, September 24, 2011、CNN, September 24, 2011、DPI, September 24, 2011、al-Hayat, September 24, 2011, September 25, 2011、al-Iqtisadi, September 24, 2011、Kull-na Shuraka’, September 24, 2011、al-Nahar, September 24, 2011、The New York Times, September 24, 2011、Reuters, September 23, 2011, September 24, 2011、SANA,
September 25, 2011などをもとに作成。
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