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反体制運動をめぐる動き
シリア革命総合委員会によると、9月11日(バッシャール・アサド大統領誕生日)に合わせて各地で行われたデモに軍・治安部隊が発砲、ヒムス、ダルアーでは戦闘機が低空で旋回、ヒムスでは戦車が多数展開した。
ダマスカス郊外県のキスワ市、ハラスター市、ザバダーニー市、ヒムス県ヒムス市、ダルアー県アトマーン郊外で夜間、アサド大統領の退任を求めるデモ。キスワのデモではロシアと中国の国旗が焼かれた。またアサド大統領誕生日を「祝して」大統領退任が求められた。http://www.youtube.com/watch?v=GCIZ47idhBsなどを参照。
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イドリブ県ビンニシュ市では同日最大規模のデモが発生し、軍・治安部隊の弾圧に曝されているヒムス市、ハマー市との連帯が叫ばれた。
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ヒムス県ではヒムス市で、アラブ連盟の弱腰を批判するプラガードが掲げられるとともに、国営メディアによる情報操作を非難した。
またシリア人権監視団によると、ヒムスの刑務所で拘束中の活動家ナジャーティー・タイヤーラ氏(66歳、8月31日に空軍情報部が逮捕)が、9日の尋問中に殴打された。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブーカマール市、女性(40歳)が、指名手配者を捜査する軍・治安部隊の発砲で負傷、死亡した。
またシリア革命総合委員会によると、ブーカマール市で活動家に対する追跡・突入作戦が行われ数十人が逮捕。ラフマーン・モスク、法科専門学校を攻撃。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市で10日に行われていたギヤース・マタル氏(先週逮捕され、拷問で死亡)の葬儀に参列していた会葬者に対する軍・治安部隊の発砲で負傷していた少年(17歳)が死亡。葬儀には3,000人以上が参列。
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『シャルク・アウサト』(9月12日付)によると、11日昼、ダマスカス県ルクンッディーン区で犠牲者の葬儀(アフマド・バグダーディー氏[19歳]、アフマド・スライマーン・アイルート氏[17歳])が反体制デモに発展。約1時間後に治安部隊によって排除された。
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ハマー県のヒヤーリーン町では、軍・治安部隊が突入し、村のモスクを砲撃。
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『クッルナー・シュラカー』(9月11日付)は、クナイトラ県出身者の話として、同県サアサア町に治安当局が設置した検問所で、子供に「国民は何を望んでいる?」と質問し、「体制打倒を望んでいる」と言ったら、父親を逮捕している、と報じた。
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イスタンブール大会や国民救済大会を主催した反体制活動家のハイサム・マーリフ弁護士は『シャルク・アウサト』(9月11日付)に対して、「いかなる軍事介入であれ、リビアで起きたようにシリアを破壊するだろう…。シリア政府は革命が武装集団によると言うことで、革命運動家たちが武装することを余儀なくしている…。しかし、革命はこのような罠でおさまるものではない…。シリアの革命は、勝利、すなわち平和的な政権打倒によって終わるだろう」と述べた。
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SANA(9月12日付)は、ヒムス県税関局が、ダッブースィーヤでシリア国内に密輸入されようとしていた金8キロを押収したと報じた。この金は、500,000ドル相当で、スイスで鋳造され、レバノン経由でシリアに持ち込まれようとしていたという。
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SANA(9月12日付)によると、内務省は声明を出し、「破壊分子」がオートバイを用いて、複数の都市に進入し、破壊行為を行い、混乱をもたらしている、と述べた。
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在西欧クルド人活動家でカーワー・クルド文化教会会長のサラーフ・バドルッディーン氏は『シャルク・アウワト』(9月12日付)に対して、シリア国内のクルド人が他の宗派・エスニック集団と等しくシリアの「革命」に参加し、弾圧の犠牲となっていると述べた。
しかし、他の地域と異なり、クルド人が多数派をなすハサカ県のハサカ市、カーミシュリー市、アレッポ県のアイン・アラブ市などで、軍・治安部隊が大規模弾圧を行ったとの情報は現在までのところない。
アサド政権の動き
県・大学レベルでの国民対話会合が開始され、ダマスカス県、ダマスカス郊外県などで、経済社会問題が審議された。同会合では、経済・社会問題のほか、福祉問題、そして政治問題が審議され、20日に閉会する予定。
バアス党ダルアー支部は対話会合出席者512人の氏名・所属を発表。出席者のなかにはバアス党代表、進歩国民戦線加盟政党代表、無所属活動家、そして反体制活動家が含まれている。
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アーディル・サファル首相は、政党法の実施にかかる内閣決定第12793号(政党法実施リスト)を発令。同決定の全文はhttp://www.sana.sy/ara/2/2011/09/12/368797.htmを参照。
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ロシアを訪問中のブサイナ・シャアバーン大統領府情報顧問は、モスクワでの記者会見で、「ロシアの立場は、権利、公正を支持し、シリア国民をはじめとする諸国民の権利を支持するものである。誰に対しても偏った見方をするよう求めず、真実を指示し、噂、ねつ造、国民や祖国の幸福を望まない者が提示するような論点をなくそうとしている」と評価。
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トルコの避難民キャンプで避難生活を送ってきたジスル・シュグールの住民97人が帰国。
諸外国の動き
SANA(9月11日付)は、イスラエル政府が、イスラエル占領下のゴラン高原からの600人の訪問団のシリア入国を禁止したと報じた。
これに先立ち、イスラエル占領下ゴラン高原におけるシリア革命調整委員会が声明を出し、シリア国内での「平和的革命」への支持を表明するとともに、アサド政権を「国民を裏切った体制」と非難、また9月11日にシリアに派遣される毎年恒例の使節団に関して、その発言が占領下ゴラン高原の総意に基づくものではない、と表明していた。
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アラン・ジュペ仏外相は、訪問先のオーストラリアで記者団に対して、「国連が(シリアでの)惨憺たる危機に明確な態度を示さないことは、スキャンダルに等しい」と発言。
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レバノンのムスタクバル潮流のハーリド・ダーヒル国民議会議員は、ビシャーラ・ラーイー・マロン派総大司教によるアサド政権支持の発言に関して、「バッシャール・アサド大統領は二度にわたって使節団をビシャーラ・ラーイー・マロン派総大司教のもとに派遣し、レバノンのマイノリティを動員してシリア政府を支持するよう求めた」と述べた。
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『シャルク・アウサト』(9月12日付)は、湾岸協力会議(GCC)のアブドゥッラティーフ・ザイヤーニー事務局長は、現在開催中のGCC外相会議との関連で、シリアの反体制運動に関して多くの時間を割いて審議されたことを明らかにし、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長がシリアに示す予定の「アラブ・イニシアチブ」をGCCが支持するとしつつ、GCC独自でシリアの危機打開のイニシアチブを別途提示することはないと述べたと報じた。
AFP, September 11, 2011、Akhbar al-Sharq, September 11, 2011, September 12, 2011、al-Hayat, September 12, 2011、Kull-na Shuraka, September 11, 2011、Reuters, September
11, 2011、SANA, September 12, 2011、al-Sharq al-Awsat, September 12, 2011などをもとに作成。
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