カイロで「国民統合会合」に参加した勢力は「アラブ・イニシアチブ」を拒否、シャアバーン氏はロシア外務省での記者会見のなかで同国の姿勢を評価(2011年9月12日)

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反体制運動をめぐる動き

反体制活動家のバスマ・カドマーニー女史はトルコのイスタンブールで開いた記者会見で、反体制勢力が9月15日にイスタンブールで会合を開き、国民評議会のメンバーを発表すると述べた。

カイロのアラブ連盟本部前でシリアの反体制活動家がデモを行い、シリア自由活動家連合などが組織した。彼らは、エジプトの活動家とともに、13日にも大規模なデモを予定しているという。

同連合執行部メンバーのワルド・ハッダード氏は『ハヤート』(9月13日付)に対して、「アラブ・イニシアチブは(シリア国民)のことを考えていない。国民に届いていない。それはシリア政府に示されたものに過ぎない。街の声、反体制勢力の声を考慮していない」と語った。

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カイロで「国民統合会合」(11~12日)を開催していたシリア反体制勢力は、任期(2014年)終了までのアサド大統領の残留を認めたアラブ連盟の「アラブ・イニシアチブ」を拒否した。

会合には内外の反体制活動家約100人が参加、閉幕声明で、シリア革命への全面支持を表明するとともに、アル=アサド政権の存続を「一時たりとも」認めないと述べた。

また反体制勢力の使節団が駐カイロ・ロシア常駐代表と会談した。 使節団はハイサム・マーリフ弁護士、ムンズィル・ナークース氏、アブドゥルアハド・イスティーフワー氏(アッシリア民主機構代表)、バッサーム・イスハーク氏(SWASIAH代表)、アブドゥッラフーフ・ダルウィーシュ(民主主義のための3月15日連合代表)、アフマド・マンジューニー氏からなっていた。

カイロでの大会に参加したムハンマド・マアムーン・ヒムスィー前人民議会議員によると、皆伝で使節団が「ロシアのアル=アサド政権への姿勢に対する驚きの意を伝えた」という。

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ハマー県では、『ハヤート』(9月13日付)によると、ムーリク市、カフルヌブーダ町、カフルズィーター市、ジャビーン村、カルナーズ町、カルアト・マディーク町などで、軍・治安部隊が強制捜査を行い、活動家17人を殺害した。

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ダマスカス郊外県では、『ハヤート』(9月13日付)によると、ドゥーマー市で、軍・治安部隊による活動家に対する追跡捜査が行われる一方、治安部隊が犠牲者葬儀の参列者に発砲し、イッザト・ラバービーディー氏が殺害された。 ドゥーマー市での葬儀には数千人が参列したという。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市で軍・治安部隊が活動家への追跡捜査を続け、男性2人(父子)が死亡した。 複数の活動家、住民によると、ラスタン市には軍・治安部隊数千人、装甲車数百台が集結しているという。

また、アラビーヤ・チャンネル(9月12日付)によると、ヒムス市のアラウィー派シャイフ3人が声明を出し、自分たちはアサド政権による「蛮行」とは無関係だと発表した。 声明を出したのは、ムヒーブ・ニーサーフィー氏、ヤースィーン・フサイン氏、ムーサー・マンスル氏の3人。

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ダルアー県では、『ハヤート』(9月13日付)によると、軍・治安部隊が活動家への追跡捜査を行った。

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イドリブ県では、『ハヤート』(9月13日付)によると、軍・治安部隊が活動家への追跡捜査を行った。

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ハマー県では、SANA(5月13日付)によると、サラミーヤ市で武装テロ集団が軍用バスを要撃、兵士2人が殉職した。

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フェイスブックのページ「シリア革命2011」は、「ロシアに対する怒りの火曜日」と銘打って、アサド政権に対するロシアの支持に反対するデモを呼びかけた。

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ザマーン・ワスル(9月12日付)は、ゴラン高原のシャイフたちが、アサド政権による反体制抗議行動弾圧に抗議する声明を出したと報じた。

アサド政権の動き

『ハヤート』(9月13日付)などによると、ダマスカス県で、アサド政権が主導する県・大学レベルでの国民対話会合が開催された。

参加者は、「政治的であれ、軍事的であれ、また国際的監視といった名目であれ、いかなる外国の干渉も拒否し」、「外国の陰謀に対抗」するとの立場を明示した。会合には、バアス党、進歩、国民戦線加盟政党、無所属、ビジネスマン、法曹界の代表約250人が参加した。

なお、ダマスカス郊外県、ダマスカス大学、ラタキア県での会合は11日から開催されている。 これらの会合では、経済・社会問題、福祉問題、そして政治問題の順での審議を予定しているが、ダマスカス県の会合は、準備委員会の提案に基づいて、初日から政治問題についての審議が行われた。

会合には、ナビール・サーリフ氏(作家)、アフマド・アマッラー(芸術家)、バッサーム・クーサー(芸術家)らが報告書を提出し、改革実施、外国の干渉拒否といった姿勢を明示しているという。

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一方、クッルナー・シュラカー(9月12日付)によると、イドリブ県で開会された県・大学レベルの国民対話会合で、反体制勢力の代表者たちが、アサド政権と抗議運動の間の対話が行われていないと非難する声明を読み上げ、会合を拒否、退場した。

同声明には400人以上(そのほとんどが有識者)が署名しており、「政府は自分たちだけで対話している、なぜなら政権は、社会を代表しているかどうかを考慮せずに出席者を選んだからである。つまり対話は一方の当事者どうしが行っているに過ぎない」と記されていた。

そのうえで、この声明では、以下の条件が満たされた場合、対話に応じると締めくくっていた。

1. 治安機関による国民生活および国家機関への違法な介入の停止。 2. デモにかかわるすべての逮捕者の釈放。犯罪に関与したすべての関係者の裁判。 3. 逮捕、操作・追跡活動の停止。 4. 平和的デモへの対峙の停止。 5. 地元および外国メディアによる政治活動の報道認可。

国内の反体制活動家が条件付きであれ対話に応じる姿勢を示したのはこれが事実上初めて。

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『ワタン』(9月12日付)は、イドリブ県の住民筋の話として、シリア軍を離反したフサイン・ハルムーシュ大佐が先週末、出身地であるイブリーン村(イドリブ県)で当局に逮捕されたと伝えた。

ハルムーシュ大佐は離反後、自由将校旅運動を結成し、シリアとトルコを往復して活動を行っていた。 逮捕当時、ハルムーシュ大佐は武器を携帯し、複数の指名手配者とともに行動していたという。

ハルムーシュ大佐の「失踪」に関して、兄弟のイブラーヒーム・ハルムーシュ氏は、アラビーヤ・チャンネルの電話取材(9月12日)に応え、「トルコ領内のシリア人避難民キャンプでトルコの士官と会談したのちに失踪し、彼らがまず連れ去った…。別の日にこの士官に彼(フサイン・ハルムーシュ大佐)のことを聞くと、知らないと応えた」ことを明らかにし、シリア領内にいる(逮捕された)との報道に疑義を呈した。

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モスクワ訪問中のブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官は、ロシア外務省での記者会見で、西側諸国が「地域におけるテロと過激化を助長している」と非難、「西側が暴力を助長するような行動を呼びかけるのではなく、ロシアの姿勢を見倣うよう望む」と述べた。

また、ロシアの対応については「外国の干渉を排除した改革実施の機会を与える」と評価した。 しかしロシアがイニシアチブを発揮しようとしているとされる仲介に関して、「誰との仲介? そのようなものはありません」と存在を否定した。 アフバール・シャルク(9月12日付)などが伝えた。

SANA, September 23, 2011

SANA, September 23, 2011

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クッルナー・シュラカー(9月12日付)によると、ダマスカス郊外県サイイダ・ザイナブ町郊外のフサイニーヤ町で治安当局が集団墓地を発見した問題で、当局は墓守を逮捕した。

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レバノンのファーイズ・グスン国防大臣がシリアを訪問し、アサド大統領と会談した。 SANA(9月12日付)によると、国境管理に関する両国軍の協力態勢について議論され、武器密輸抑止や両国の政治的安定強化などが確認されたという。

SANA, September 23, 2011

SANA, September 23, 2011

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『シャルク・アウサト』(9月13日付)は、国営のシリア石油販売会社(スィトロール)が、米国、EUなど西欧諸国による石油禁輸制裁に対抗するかたちで、10月半ばに原油の出荷量を16万トン増加させることを決定したと伝えた。

シリアの最大の石油輸出先であるEUは禁輸制裁を発動しているが、シリアは契約により11月15日までEUに原油を輸出できる、という。

諸外国の動き

ロシアのデミートリー・メドヴェージェフ大統領は、デヴィッド・キャメロン英首相とのモスクワでの会談後、「EUと米国が一方的に制裁発動を行った今となっては、シリア政府に対する追加制裁が正当化され得るとは考えていない」とのロシアの立場を明らかにした。

しかしその一方で、メドヴェージェフ大統領は、「暴力に対する強い非難声明の採択には反対しない」と述べ、「危機の両当事者に対してバランスのとれた」対応を呼びかけた。

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アフバール・シャルク(9月12日付)によると、米国、EU、英、独、オランダの各国大使が、25日に暴行を受けた風刺漫画家のアリー・ファルザート氏が入院する病院を見舞い、同氏への支援を表明した。

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米国務省報道官は、ギヤース・マタル氏の殺害(逮捕後拷問により殺害されたとされる)を非難した。 ジャズィーラ・チャンネル(9月12日付)によると、シリア革命支援ヨルダン人民委員会は、ヨルダン政府に対してバフジャト・スライマーン駐アンマン・シリア大使の追放を要求するための座り込みをアンマン市内で10日から開始した。

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ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官はジュネーブでの国連人権理事会(第18期)で、シリア情勢に関して、2011年3月以降の抗議デモ発生により2,600人が死亡していると述べた。

シリア情勢への対応が協議された国連人権理事会では、反体制抗議デモが行われるようになって以降のシリア国内での人権侵害を調査するための委員会を設置することが決定された。

委員長にはパウロ・セルジオ・ピネイロ氏(ブラジル)就任する見込み。 また国連人権理事会のローラ・デュプイ・ラセール議長は「委員会へのシリアの政府の完全なる協力が重要」との声明を出した。

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スイス経済省は、シリア政府に関連する口座に預金されている4,500万スイス・フラン(5,000万米ドル相当)を凍結した、と発表した。

AFP, September 12, 2011、Akhbar al-Sharq, September 12, 2011、September 12, 2011、Alarabia.net, September 12, 2011、Aljazeera.net, September 12, 2011、al-Hayat, September 13, 2011、Kull-na Shuraka’, September 12, 2011、Reuters, September 12, 2011、SANA, September 12, 2011、al-Sharq al-Awsat, September 12, 2011、al-Watan, September 12, 2011などをもとに作成。