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ミシュアル・タンムー氏暗殺をめぐる動き
ハサカ県カーミシュリー市でミシュアル・タンムー氏の葬儀が行われ、数万人が参列、「国民は大統領の処刑を望む」といったシュプレヒコールを連呼した。
またアームーダー市でも葬儀が行われ、会葬者がハーフィズ・アサド前大統領の像を破壊した。
シリア人権監視団によると、治安部隊が会葬者に発砲し、少なくとも4人が死亡した。
タンムー氏の遺体はクルドの「国旗」で包まれ、棺は花で埋め尽くされた。
ミシュアル・タンムー氏の暗殺を受け、シリア・クルド国民運動(12のクルド民族主義政党・組織)が声明を出し、「我々は、残忍な政治的暗殺の罪に反対し、我々の社会においてなじみがなく、ハサカ県の安定を見出し、不安と内乱をもたらそうとするこうした行為や方法を非難する…。自由と尊厳の殉教者への哀悼の意を表しつつ、我々はシリアのクルド人民大衆にこうした残忍な犯罪の背後に隠されている棄権の目的に警戒し目覚めるよう呼びかける。また、政府に対して、国民の生活の安全を守れなかったことの責任を追及する…」と述べた。
しかしこれに対して、シリア・クルド・イェキーティー党とシリア・クルド・アーザーディー党が声明を出し、アサド政権の関与に言及していないシリア・クルド国民運動の声明が「我々二党の立場を表現していない」として拒否の姿勢を示すとともに、タンムー氏暗殺をアサド政権によるものと断じて、同政権を痛烈に非難した。
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シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官は、AFP(10月8日付)の取材に答え、タンムー氏暗殺について「我々は大きな懸念を感じている。体制はシリア国民評議会メンバーへの復讐に転じる決定をした」と述べた。
反体制運動をめぐる動き
スウェーデンの首都ストックホルムで、シリア国民評議会のメンバー約90人が会合を開き、行動計画に関して審議した。
ブルハーン・ガルユーン議長も出席した。
また『クッルナー・シュラカー』(10月8日付)によると、シリア国内からミシェル・キールー氏、アーリフ・ダリーラ氏も出席したという。
会合はオロフ・パルム国際センターが主催した。
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国民民主変革諸勢力国民調整委員会はダマスカス郊外県のダーヒヤト・ハルブーンで拡大会合を開き、その後、記者会見で執行部メンバーの氏名を発表した。
新執行部メンバーは以下の通り。アフマド・ファーイズ・ファウワーズ、バッサーム・マリク、ジャマール・ムッラー・マフムード、ハサン・アブドゥルアズィーム(総合調整役)、ハサン・アウダード、ラーイド・ナクシュバンディー、ラジャー・ナースィル、シュクリー・マハーミード、サーリフ・ムスリム・ムハンマド、ターリク・アブー・ハサン、アーリフ・ダリーラ、アブドゥルアズィーズ・ハイイル、アドナーン・ワフバ、ファーイズ・サーラ、ムハンマド・ハリース、ムハンマド・サイイド・ラッサース、ムハンマド・サマーディー、ムハンマド・アンマール、ムハンマド・フライターニー、ムハンマド・ムーサー・ムハンマド、マフムード・マルイー、ムンズィル・ハッダーム、マンスール・アタースィー、ムニール・ビータール、マイス・クライディー、ナーイフ・サッルーム、ナスルッディーン・イブラーヒーム。
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SANA(10月9日付)は、ハマー市マザーリブ地区で武装集団と治安維持部隊が交戦し、同部隊の士官(中尉)1人が戦士、26人が負傷したと報じた。
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SANA(10月9日付)によると、ヒムス県ヒムス市でTNT火薬5キロの時限爆弾を当局が発見・撤去した。
またラスタン市でも武装テロ手段の爆弾が発見・撤去された。
アサド政権の動き
アナトリア通信(10月8日付)は、シリアがハサカ県カーミシュリー市の対トルコ国境を閉鎖したと報じた。
ミシュアル・タンムー氏葬儀への駐トルコ・クルド人の参列を阻止するための動きと思われる。
諸外国の動き
米ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官はタンムー氏暗殺に関して「アサドの対話への約束は空疎で…アサド大統領は、国がさらに危険な方向に向かう前に今すぐに去らねばならない」と述べた。
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キャサリン・アシュトン欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表は声明を出し、ミシュアル・タンムー氏暗殺を「最近発生した明確な目的をもった一連の暗殺」と位置づけ、「決して受け入れられない」と述べ、「人種対立や宗派対立を煽る行為」と非難した。
AFP, October 9, 2011、Akhbar al-Sharq, October 8, 2011、al-Hayat, October 9, 2011、Kull-na Shuraka’, October 8, 2011, October 9, 2011、October
10, 2011、SANA, October 9, 2011などをもとに作成。
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