シリア国民評議会事務局長が同評議会に対する批判に反論し、自由シリア軍司令官も外国からの支援をめぐるシリア当局の主張を否定(2011年11月4日)

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反体制デモ

複数の活動家によると、バッシャール・アサド政権とアラブ連盟によるワーキングペーパー合意にもかかわらず、アサド政権は、ヒムス市、ハマー市、バーニヤース市、ラタキア市、ダイル・ザウル市、ダルアー市、ダマスカス郊外県各地で金曜の礼拝後に発生した反体制デモに対して実弾を用いて強制排除を試みた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で金曜礼拝後のデモに対して郡・治安部隊が発砲し、民間人6人を含む17人が殺害された。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市で4人が殺害された。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、タッル・シハーブ町で、市民1人と離反兵1人が殺害された。またダルアー市、サナマイン市でもデモがあったという。

またシリア人権監視団によると、治安部隊はヨルダンに逃走しようとした市民2人を殺害した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カナーキル村、ハムーリーヤ市で治安部隊がデモ参加者4人を殺害した。

これに対してSANA(11月4日付)は、カナーキル村で武装テロ集団の発砲により警察官4人が負傷したと報じた。

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タルトゥース県では、シリア人権監視団によると、バーニヤース市に治安部隊が多数展開し、金曜礼拝後のデモを阻止、数十人を逮捕。このうち4人は、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長の家族の子供だったという。

これに対してSANA(11月4日付)は、タルトゥース県のアーティフ・ナッダーフ県知事が、バーニヤース市で大規模な逮捕が行われているとのジャズィーラの報道が「事実無根」と述べたと報じた。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市でデモがあったという。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、カーミシュリー市でデモがあったという。

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フェイスブックの「シリア革命2011」ページなどは、「アッラーは偉大なり」の金曜日と題してデモを呼びかけていた。また地元調整諸委員会は声明で平和的デモを呼びかけていた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は、アサド政権がデモ弾圧を継続していることに関して、「政府がその活動を改めることはなかった」としたうえで、アラブ連盟に対して「(シリア)政府に期待を寄せることは止め、そのメンバーシップを凍結し、大使を召還し、安保理への提訴を検討する」よう求めた。

Kull-na Shuraka', November 4, 2011

Kull-na Shuraka’, November 4, 2011

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長はBBC Arabic(11月4日付)のインタビューに対して、同評議会をめぐる批判に反論した。

ガルユーン氏はそのなかで、同評議会がシリア国民の主要な諸勢力を代表していると述べるとともに、外国で発足されてはいるもの、メンバーのほとんどが国内にいると強調した。

また評議会に参加してない国内の活動家(国民民主変革諸勢力国民調整委員会、クルド民族主義政党、ハイサム・マンナーア氏、アンマール・カルビー氏、スブヒー・ハディーディー氏、ワヒード・サクル氏、自由アラウィー派連合など)が参加を拒否したわけでなく、審議のための時間的猶予を求めていると釈明した。

イスラーム主義者やシリア・ムスリム同胞団のプレゼンスに関しては、「世俗主義者ほど」多くないと述べた。

外国の軍事介入に関しては、評議会が求めているのが民間人の保護である点を強調し、シリア政府が国際監視団を受け入れる必要があるとの立場を示すとともに、内政干渉への拒否の姿勢を示した。

http://www.youtube.com/watch?v=zc_DOizxqiM

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シリア国民評議会事務局は、11月4日金曜日の反体制デモに対するアサド政権の弾圧を受けて声明を出し、アラブ連盟のイニシアチブに従い、武力弾圧の停止、アラブ・外国メディア、国際監視団のシリア入国、アラブ連盟本部(カイロ)での国民対話会合の実施を求めた。

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シリア国民評議会執行部は声明を出し、アサド政権による弾圧継続を非難するとともに、アラブ連盟や国際社会に関して断固たる対応をとるよう求めた。

同声明はカイロのアラブ連盟本部前でのシリア人活動家らの座り込みでの要求を受けるかたちで発表された。

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ダマス・ポスト(11月4日付)などは、シリア救済大会代表のハイサム・マーリフ弁護士が、治安要員に対する免責権撤廃を「国民的な要求」としたうえでその実行を改めて求めたと報じた。

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自由シリア軍司令官のアフマド・アスアド大佐はプレスリリースを発表し、シリア軍を離反した兵士の数は10,000人から15,000人に達し、そのなかには、共和国護衛隊やムハーバラートの兵士もいる、と述べた。

また、「レバノン、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアの非公的な勢力がシリアのテロリストを支援している」(11月1日)としたファイサル・ミクダード外務次官の発言を「嘘で偽作」と非難したうえで、「我々は今までいかなる場所からも何らの支援も受けていない。反体制勢力でさえ我々にいかなる支援もしていない」と述べた。

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『インティペンデンス』(11月4日付)は、アサド大統領の妻アスマー・アフラス女史の父で心臓外科医のファウワーズ・アフラス氏が、反体制勢力から沈黙を破るよう求められていると報じた。

同紙によると、ロンドン郊外にある同氏の自宅前には連日、反体制活動家が夜間デモを行っているという。

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/the-acton-spring-how-unrest-in-syria-spilled-over-into-the-respectable-streets-of-west-london-6256953.html?origin=internalSearch

アサド政権の動き

内務省は、イード・アル=アドハーに合わせるかたちで、武器を保持する者、売る者、配布する者、購入を資金援助する者に対して、11月5日から12日までの間に最寄りの警察署に出頭すれば処罰を免除すると発表し、反体制勢力に投降を呼びかけた。

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ブルームバーク(11月4日付)は、シリアのムハーバラートが、イタリアの通信監視会社Area SpA社の協力のもと、反体制運動を監視するためのシステムを導入したと報じ、現在、ダマスカスとアレッポでイタリア人技術者も監視にあたっていると報じた。

Area SpA社は、欧米のハードウェア、ソフトウェアを用いて監視システムを構築しており、そのなかにはNetApp Inc.、Qosmos SA 、Utimaco Safeware AGなどが含まれているという。

http://www.bloomberg.com/news/2011-11-03/syria-crackdown-gets-italy-firm-s-aid-with-u-s-europe-spy-gear.html

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シャームプレス(11月4日付)は、イタリア在住のシリア人使節団が、シリアを訪問し、「外国の陰謀とメディア戦争」を非難するとともに、シリア商業銀行に口座を開設、シリア・ポンドを守るため外貨の両替を行ったと報じた。

Kull-na Shuraka', November 4, 2011

Kull-na Shuraka’, November 4, 2011

 

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シリア石油公社の複数の取引先がロイター通信(11月4日付)に語ったところによると、同社は毎月行われている石油50,000トンの競売を停止した。

同取引先によると、西側諸国の制裁に対して、国内でのガソリン確保をめざす動きだと思われる。

諸外国の動き

ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、内務省の呼びかけに対して「現状では政府に投降する者などいないだろう」と述べた。

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国連人権理事会の米国代表は、アサド政権による弾圧の継続に対して、「国際社会がさらなる決意」をもって圧力をかけるべきと述べた。

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フランス外務省副報道官は、シリアでの「弾圧継続は、アラブ連盟の計画を実施するとしたシリア政府の信頼に対する国際社会の疑念を高める」と非難したうえで、「シリアの弾圧停止のためいつでも…シリア政府に圧力をかける計画がある」と脅迫した。

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トルコ外務省高官は、トルコでアサド政権に対する離反兵の武装闘争を指導している自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐がトルコから武器供与を受けているかとのAFP(11月4日付)の質問に対して、シリア人の国境の往来を認めているが、「武器を持った者の国境通過は禁じている」と述べた。

AFP, November 4, 2011、Akhbar al-Sharq, November 4, 2011、November 5, 2011、Bloomberg, November 4, 2011、Champress, November 4, 2011、Damas Post, November 4, 2011、al-Hayat, November 5, 2011、The Independent, November 4, 2011、Kull-na Shuraka‘, November 4, 2011、Reuters, November 4, 2011、SANA, November 4, 2011、Zaman al-Wasl, November 4, 2011などをもとに作成。

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