Contents
反体制運動掃討
アラブ連盟との合意にもかかわらず、ヒムス県で反体制抗議行動に対する治安部隊の武力弾圧が続けられる一方、反体制活動家らは離反兵による戦果を「鼓舞」した。
**
ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区での反体制デモに対して治安部隊が重火器などを用いて強制排除を試み、民間人3人が死亡した。
またヒムス県革命評議会を名のる集団によると、バーブ・アムル地区での軍・治安作戦によって同地区は1週間にわたり完全に包囲され、これまでに40人以上が死亡、90人以上が負傷したという。
また同監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区とバーブ・ドゥライブ地区で拷問の跡が残った遺体2体が発見された。
このほか、ヒムス市カラム・ザイトゥーン地区でも爆発音が聞こえたという。
**
イドリブ県では、シリア人権監視団はサラーキブ市の活動家の話として、同市南部でシャッビーハ4人が離反兵との戦闘で殺害されたと発表した。
反体制勢力の動き
『クッルナー・シュラカー』(11月5日付)は、11月4日のカーミシュリー市のデモで参加者内の対立が露呈したと報じた。
同報道によると、数千人が参加したデモで、「クルド国民大会は私を代表している」、「民族自決権のもとクルド人の憲法での承認」、「クルド国民大会はシリア革命を支持する」といったプラカードを(10月下旬のクルド国民大会に参加した)クルド民族主義政党の指導者やメンバーが掲げたことに、若者が反発し、「クルド国民大会は私を代表していない」、「宗派主義反対、政党反対、我々の革命は若者の革命」といったスローガンを掲げて対抗した。
両者の対峙は、クルド民族主義政党の指導者やメンバーが(いつも通り)撤収することで事なきを得たという。
**
シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン理事長とバスマ・カドマーニー報道官が同評議会使節団としてカイロのアラブ連盟本部を訪問し、ナビール・アラビー事務総長と会談した。
アラブ連盟のアラビー事務総長はシリア国民評議会との会談後に、「シリアでの暴力の継続と、アラブ連盟の計画実施を通じた進展を妨げることの危険」に警鐘を鳴らし、連盟のワーキングペーパーが頓挫すれば「悲惨な結果」がもたらされるだろうと述べ、アサド政権に対して、暴力の即時停止と、ワーキングペーパーの即時実施を改めて求めた。
**
シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン理事長はイード・アル=アドハーに合わせて、ジャズィーラからシリア国民に向けてメッセージを出した。
そのなかでガルユーン理事長は、「我々シリア国民評議会は、政権のあらゆる行動の背後に時間稼ぎを行おうとする目的がある…。我々はこうした政権の落とし穴に落ちることない」と述べたうえで、軍兵士に対して「祖国と国民を守るために革命に参加した軍人に従い…、国民に発砲しない」よう呼びかけた。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=lLdgWtiKUcc
**
シリア国民評議会事務局は11月5日付で政治綱領案を作成、発表した。
同綱領では、平和的な革命やアラブ・国際世論の支持を通じた現政権打倒をめざす点が確認されるとともに、過渡期の政策として、①シリア国民評議会が軍事機関とともに過渡期を担う、②暫定内閣の発足、③民主的変革のための国民大会の開催、④政権打倒後6ヵ月以内の自由選挙、制憲委員会の設置、⑤政治犯の釈放、避難民の帰還、⑥独立司法委員会の設置、弾圧にかかる犯罪の調査・処罰、⑦国民和解委員会の設置などが提示された。
また一般原則として、多元的市民的民主主義、議会制、共和制、基本的人権の保障などが確認された。
**
シリア国家建設潮流(ルワイユ・フサイン代表)は、アサド政権によるアラブ連盟とのワーキングペーパー履行状況に関するダマスカス(監視)委員会の第1回報告を発表し、11月4日金曜日の礼拝後のデモ強制排除、参加者の逮捕を非難した。
またアサド政権による553人のデモ参加者の恩赦の事実を確認していないとしたうえで、仮に553人が釈放されたとしても、この人数では不充分だと批判した。
**
シリア国民評議会メンバーでアッシリア民主機構のアブドゥルアハド・アスティーフー代表は、アサド政権がアラブ連盟のワーキングペーパーを履行しないとしたうえで、「アラブ連盟のイニシアチブはこの政権の崩壊をもたらすだろう」と述べた。
**
『クッルナー・シュラカー』(11月8日付)は、11月5日からアドラー中央刑務所に収監中の反体制活動家13人が、自らの逮捕に抗議し、釈放を求めて無期限のハンストを開始したと報じた。
アサド政権の動き
SANA(11月6日付)は、イード・アル=アドハーを記念して、3月以来の反体制活動に関与し逮捕された553人に対して恩赦を行い、釈放したと報じた。
またSANA(11月6日付)によると、これに先立ち119人の逮捕者が釈放された。
**
SANA(11月6日付)は、イマード・ムスタファー在米大使(ロバート・フォード在シリア米大使の一時帰国に対抗するかたちで現在シリアに帰国中)が「米国はいつも、シリアの現下の危機を先鋭化させようとしている」と批判したと報じた。
**
SANA(11月6日付)は、外務省高官が昨日、11月4日のビクトリア・ヌーランド米国務省報道官の声明をシリアへの内政干渉と非難、テロ集団による殺戮を支援する発言だと断じた。
同報道によると、違法な武器を当局に引き渡した者に対して政府が恩赦を行うと決定したにもかかわらず、11月4日のヌーランド米国務省報道官の声明は、武装集団の誰一人に対しても当局への投降を勧告するものではなく、米国がシリア内政に干渉し、武装テロ集団の殺戮を支援していることの証左だ、外務省高官は述べた。
**
DP-News(11月5日付)は、シリア外務省のアブドゥルファッターフ・アムーラ次官が、「アラブ連盟のイニシアチブに基づき、政府は治安部隊と軍を日曜日(11月5日)に市街地から撤退させるだろう」と述べたと報じた。
諸外国の動き
レバノンの北部県トリポリ市のジャバル・フムスィン地区で、アラブ民主党などの主導のもとアラウィー派住民がアサド政権を支持するデモ行進を行った。
アラブ民主党のアブドゥッラティーフ・サーリフ広報官は、「我々はシリアとともにある。アサド大統領はアラウィー派に属しているだけでない。彼は米国とシオニズムの計画に反対する唯一の国(の指導者)だ。レバノンのレジスタンスを支援する第1の国(の指導者)だ」と述べた。
**
マルワーン・シルビル内務地方自治大臣は、LBCのインタビューに応え、シリア軍によるレバノン領内での反体制勢力逮捕・追跡作戦は、両国間の国境画定が行われていないことに起因すると述べた。
**
レバノン国軍は声明を出し、「レバノン国軍のトラックがシリア領内に入り、外国の一部の勢力がこの動きをシリア情勢への軍の介入と解釈している」とした一部メディアの報道に関して、「レバノン軍トラックのシリア領内への入国は常時行われており…、軍用車輌のスペアパーツや兵站物資の入手が目的」と発表した。
Akhbar al-Sharq, November 11, 2011、AFP, November 5, 2011、DP-News, November 5, 2011、al-Hayat, November 6, 2011、Kull-na Shuraka’, November 5, 2011, November 6, 2011,
November 8, 2011、Naharnet, November 5, 2011、Reuters, November 5, 2011、SANA,
November 6, 2011などをもとに作成。
(C)青山弘之All rights reserved.