ムアッリム副首相兼外務在外居住者大臣は米国を含む違法な外国部隊とテロからシリア全土を解放するとの決意を表明するとともに、イラン軍の存在を否定、法律第10号における猶予期間を1ヶ月から1年に延長したことを明らかにする(2018年6月2日)

ワリード・ムアッリム副首相兼外務在外居住者大臣は、首都ダマスカスの外務在外居住者省で記者会見を開き、シリア全土をテロおよび外国の部隊から完全解放するとの決意を表明した。

SANA(6月2日付)が伝えた。

SANA, June 2, 2018

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ムアッリム副首相兼外務在外居住者大臣は、イランとの関係に関して、「2011年以降、イランはシリアに寄り添い、「テロとの戦い」を行ってきた。それゆえ、私はシリア国民の名において、イランの指導部、そして国民による支援を望んでいると言える。シリアに対する陰謀が始まって依頼、イランの同胞は、トルコ、サウジアラビア、カタールが支援するテロに立ち向かうため、シリアを支援してきた」としたうえで、「シリア領内にイラン軍が進駐しているというのは、イスラエルの作り話で、イランに対する米国の攻撃に乗じようとしているものだ…。シリアにはイランの顧問はおり、殉教したもの者もいれば、シリアの武装部隊とともに行動している者もいる。彼らは我が武装部隊との合意や調整のもと不可欠な場所にいる」と述べた。

そして、「(シリアには)イランの基地は存在しない。それは、シリアの軍事拠点を攻撃するため、イスラエルが広めた根も葉もない嘘だ…。イランはシリア政府の要請のもとにシリアにおり、その存在は合法的だ。これに対して、米国、トルコ、フランスの進駐は違法だ。これらの国がシリアに違法にいるのを発見したら、そしてまた「テロとの戦い」が続く限り、シリアは主権国家として「テロとの戦い」を望むすべての者と協力するだろう」と強調した。

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国連主催のジュネーブ会議において仲介役を務め、アスタナ会議、シリア国民対話大会にオブザーバーとして参加するスタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表が、シリア政府が作成した制憲委員会メンバー候補名簿について『シャルク・アウサト』紙にリークしたことに関して「彼には教養がない。なぜなら彼はリストを持っておらず、メディアにそれを開示する権限もないからだ。我々は彼のミッションが協議を促すことだけに限定されていると考えている」と批判した。

また、「2012年に施行された現行憲法はこの地域におけるもっとも優れた憲法の一つだ。だが、我々は相手(反体制派)に(憲法の内容を再検討する)チャンスを与えている」と述べた。

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2018年法律第10号については、「財産没収を禁じた憲法第15条を読んだ者であれば、安心し、不安を払拭することができる。この法律(2018年法律第10号)は、グータをテロから解放した段階において必要なものだ。なぜなら、テロ集団は7年も東グータ地方を選挙し、登記簿を焼却したからだ…。土地所有者の権利を回復するために、不動産の整備する必要がある」と強調した。

そのうえで、シリア政府による開発地域設定後、譲渡を希望しない所有者は、30日以内に土地の所有権を証明するとした規定に関して、「猶予期間を修正し、1年とした」ことを明らかにした。

法律第10号(都市再開発法)は、開発地域内の私有地を接収し、同地域での新規プロジェクトにかかる収益の一部を配当金として所有者に支払い、補償を行うことなどを定めている。

同法では、シリア政府による開発地域設定後、1ヶ月以内に当局が域内の土地所有者に配当金補償についての告知を行い、これを受諾した所有者は配当金を受け取る一方、この申し出を拒否する所有者は30日以内に土地の所有権を証明する必要がある。

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米国とトルコがアレッポ県マンビジュ市の処遇をめぐって協議していることに関して、「マンビジュだけでなく、アフリーン、そしてシリア全土において、我々はトルコが我が国の領土を蹂躙する敵とみなしている。また、米国にもトルコにも、シリアの都市(マンビジュ市)の処遇をめぐって交渉する権限などないと見ている…。改めて言いたい。我々にとって、シリア全土を解放することは義務で、それは指導部が決定した優先順に基づいて行われる。ぞれゆえ、米国とトルコの合意であれ、米国とフランスの合意であれ、それ(シリア国内の支配地域をめぐる諸外国の折衝や合意)はシリアの主権に対する侵害行為だ」と批判した。

AFP, June 2, 2018、ANHA, June 2, 2018、AP, June 2, 2018、al-Durar al-Shamiya, June 2, 2018、al-Hayat, June 3, 2018、Reuters, June 2, 2018、SANA, June 2, 2018、UPI, June 2, 2018などをもとに作成。

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