アレッポ県で軍が引き続き「樽爆弾」による攻撃を続け民間人の死者が出るなか、シリア国民評議会はがシャタフ元レバノン財務相暗殺についてシリアの犯行と断言(2013年12月28日)

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反体制勢力の動き

シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長は声明を出し「テロとの戦いをジュネーブ2会議の最優先事項だとするロシア外務省、イラン、アサド政権の発言が、革命の隊列の調和を乱し、穏健派と過激派に分類することで、彼らの銃を彼ら自身の胸に向けさせ、移行期、そして移行期後にアサドを存続させようとするものだ」と批判した。

そのうえで「シリア政府、ロシアとイランの政策は…ジュネーブ2会議が政治的解決を実現し無いことを示している。彼らは、シリア人を合法的に殺戮することを目的にしている点で合意している」と主張した。

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シリア国民評議会は声明を出し、レバノンのムハンマド・シャタフ元財務大臣暗殺(27日)に関して、「暗殺者は、クサイル、カラムーン、ハッターブ村アレッポ、ヒムス、イドリブでシリア人を殺してきた者たちと同じだ。彼らがイランのムッラーたちの体制、シリア政府、ヒズブッラーの民兵を筆頭とするレバノンの手先たちの同盟者だということは間違いない」と述べ、アサド政権、イラン、ヒズブッラーの関与を断じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のイヤード・クドスィー移行期政府副首相は滞在先のカタールの首都ドーハで『ハヤート』(12月29日付)の取材に応じ、「移行期政府は、国内の部局を活性化し、我らが人民と連絡を取り合うことを優先事項としている…。亡命政府でもなければ、一時だけの政府でもない」と述べた。

また「米国は、化学兵器廃棄計画の完了を妨げるいかなることも望んでいない」と述べた。

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DPA(12月28日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長が、1月5~6日にトルコのイスタンブール以外の「某所」で総合委員会会合を開催することを決定した、と報じた。

連立がカイロからイスタンブールに本部を移転後、イスランブール以外の都市で総合委員会が開催されるのはこれが初めて。

シリア政府の動き

シリア政府使節団がヴァチカン市国を訪問し、ピエトロ・パロリン司教と会見、ローマ法王フランシスコ宛のアサド大統領親書を手渡した。

ヴァチカンのフェデリコ・ロンバルディ広報局長は親書の内容に関して、AFP(12月28日付)に「詳細を明らかにすることはないだろう」と述べた。

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SANA(12月28日付)は、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣が「シリアとイランの協力調整関係の枠組みのなかで、イランの専門家の監督のもと、化学兵器条約を適正に実施するための訓練コースが開設された」と述べたと報じた。

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バアス党アレッポ大学支部のアブドゥルカーディル・ハリーリー書記長は、『ワタン』(12月28日付)に対し、アレッポ大学の警備を任務とする「大学バアス大隊」を結成すると述べた。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市バーブ街道地区の野菜市場や病院周辺に軍が「樽爆弾」を投下し、子供2人、女性1人、活動家1人を含む20人が死亡した。

またアレッポ報道センター(12月28日付)によると、軍はまたアレッポ市マイサル地区の3カ所に爆撃を行った。

一方、SANA(12月28日付)によると、アレッポ市サラーフッディーン地区を襲撃しようとした住民が反体制武装集団を住民が撃退した。

またマーイル町、バヤーヌーン町、フライターン市、ハンダラート・キャンプ、ワディーヒー村、アッザーン村、マアーッラト・アルティーク村、ムスリミーヤ村、ハーン・アサル村、アレッポ中央刑務所周辺、アターリブ市・アウラム・クブラー町間の街道、ズィヤーラ村、アナダーン市南部、シャイフ・ナッジャール市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

このほか、アレッポ市では、サラーフッディーン地区、ブスターン・カスル地区、アンサーリー地区、マイサル地区、ジャズマーティー地区、シャイフ・ズィヤード地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア革命総合委員会によると、軍がバーブ・ハワー国境通行所をロケット弾で攻撃した。

一方、SANA(12月28日付)によると、カストゥーン村、ズクーム村、ジュッブ・アフマル村、イドリブ市郊外の食品加工工場、イドリブ中央刑務所周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またクッルナー・シュラカー(12月29日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がサルマダー市にある自由シリア軍参謀委員会の倉庫複数カ所を制圧し、米国製食品などが入った段ボール800箱、米国製ヘルメットが入った段ボール500箱を略奪、持ち去った。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、タルール村に軍が「樽爆弾」を投下した。

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ダマスカス郊外県では、地元評議会広報センターによると、休戦合意が成立したムウダミーヤト・シャーム市にシリア政府が人道物資を搬入した。

また、東グータ地方の反体制筋は、クッルナー・シュラカー(12月28日付)に、「自由シリア軍」がドゥマイル市南部にある第122旅団基地を制圧した、と述べた。

一方、SANA(12月28日付)によると、アドラー市、ドゥーマー市、マディーラー市、ザバダーニー市、ルハイバ市、マダーヤー町、ハラスター市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線、イスラーム旅団、アムジャード・シャーム大隊、ザバダーニー軍事評議会の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、シリア革命総合委員会が、タッル・ハミース市で、「革命家」が、軍、国防隊、民主統一党人民防衛隊に対して「決戦」を挑んでいると発表した。

同委員会によると、戦闘激化を受け、ダイル・ザウル県郊外の「自由シリア軍」、ラッカ県のシャーム自由人運動が応援に駆けつけているという。

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ダマスカス県では、SANA(12月28日付)によると、カーブーン区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(12月28日付)によると、ハーン・ジャウズ村、ワーディー村、カサーティル村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県、SANA(12月28日付)によると、ヒムス市ハミーディーヤ地区、バーブ・フード地区、ウンム・クバイバ村、ガースィビーヤト・ナイーム村、ハーリディーヤ村、カール・カビーラ村、タッルダハブ村、サアン地方、タルビーサ市、キースィーン湾、クナイトラート村、下サリーム村、タルール・ジャマル村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(12月28日付)によると、ダルアー市旧税関地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(12月28日付)によると、カーミシュリー市内で反体制武装集団が爆弾を仕掛けた車を爆発させ、市民1人が負傷した。

しかし、リハーブ・ニュース(12月28日付)は、この爆弾テロが、民主統一党人民防衛隊の支配下のカドゥール・ベク地区にある地元評議会のハーリド・タンムー議長を標的としたものだと報じた。

諸外国の動き

フランスのフランソワ・オランド大統領は『ハヤート』(12月29日付)のインタビューに応じ、シリア情勢に関して「バッシャール・アサドがいる限り、政治的解決はない。アサドはイスラーム主義者を利用して、穏健な反体制勢力に圧力をかけている」と主張した。

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ロシア外務省のアレクサンドル・ルカシェヴィッチ報道官は、シリアでの戦闘が弱まらない理由は、テロ行為が行われているためだとしたうえで、ロシアが反体制勢力に影響力を持つ国々に対して、紛争の被災者に人道支援物資の供給を保証するよう求めていると述べた。

『ハヤート』(12月29日付)が伝えた。

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アルジェリアのラマターン・アマーミラ外務大臣は、記者会見で、アルジェリア政府がジュネーブ2会議に参加することを決定したと発表した。

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化学兵器禁止機関と国連の合同派遣団は、年内を目標としていた危険性の高い化学物質のシリア国外への搬出について、「今月31日までの輸送は困難だ」とする声明を発表した。

AFP(12月28日付)が伝えた。

AFP, December 28, 2013、AMC, December 28, 2013、AP, December 28, 2013、Champress, December 28, 2013、DPA, December 289, 2013、al-Hayat, December 29, 2013、Kull-na Shuraka’, December 28, 2013, December 29, 2013、Naharnet, December 28, 2013、NNA, December 28, 2013、Reuters, December 28, 2013、Rihab News, December 28, 2013、SANA, December 28, 2013、UPI, December 28, 2013、al-Watan, December 28, 2013などをもとに作成。

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