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反体制勢力の動き
クッルナー・シュラカー(12月31日付)は、イスラーム戦線シューラー評議会に近い信頼できる消息筋の話として、イスラーム戦線内で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)との協力の是非をめぐって深刻な対立が生じている、と報じた。
同消息筋によると、イスラーム軍、タウヒード旅団、シャームの鷹旅団は、民間人や武装集団に対するダーイシュの犯罪に対して制裁を加えることを指示している一方、シャーム・イスラーム自由人運動はこれに消極的だという。
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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長はカタールのQNA(12月31日付)に声明を送り、「シリア人はジュネーブ2会議を政治的解決に至る真のチャンスだとは見ていない…。アサド政権の国内での振る舞い、シリア国民に対する樽爆弾政策の採用が…その証拠だ…。大会開催そのものが目的ではない。目的はこの大会を通じて結果をもたらすことだ…。現時点で、大会開催の実質的可能性はないと見ている」と述べた。
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2013年3月に政権を離反した石油省のアブドゥフ・フサームッディーン元次官が声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立内での独断的な決定プロセスに異議を唱え、連立からの脱会を発表した。
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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長は『ハヤート』(12月31日付)のインタビューに応じ、ジョン・ケリー米国務長官と29日に電話会談したことを明らかにした。
ジャルバー議長は会談で「あなた方は国境なき医師団ではなく、我々は米国の対応を期待している、とケリー長官に伝えた。(アサド政権を)非難するだけでは、結果は生じない。我々は安全保障回廊を求めてきたが、実現してない…。ジュネーブ2会議を成功させるのにふさわしい雰囲気にして欲しい。そう告げた」と述べた。
ジャルバー議長はまた、西側諸国の外務大臣らが、ジュネーブ2会議を「単なるメディアでのイベント」に仕立てようとしていると述べ、「これはいけないことだ」と懸念を表明した。
さらにジャルバー議長は1月13、14日に予定しているロシア訪問について「アサド政権が終わっており、それに依存することはできない…。この体制を退陣させることで理解し合うことを呼びかけてきた…。アサド家を支持することはロシアの国益にならない」とロシア側に伝える意向だと付言した。
一方、イランのジュネーブ2会議参加の是非については「イランはヒズブッラー、イラクのシーア派過激派、革命防衛隊を撤退させねばならない。それが実現せずして、なぜ我々はイラン人と集うのか…?大会に出席したい者はこの基礎(ジュネーブ合意)に従わねばならない。これが我々とフランスの姿勢で、オランド大統領が(リヤドで)述べたことだ」と述べた。
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シリア人権監視団は2011年3月から2013年12月末にかけてシリアでの紛争での死者総数が13万433人に達したと発表した。
死者総数のうち、民間人は6万6,203人(うち子供は7,014人、女性は4,695人、武装集団メンバーは1万9,937人)、離反兵は2,233人、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)やシャームの民のヌスラ戦線を含むサラフィー主義武装集団戦闘員は6,913人、軍兵士は3万2,013人、国防隊戦闘員、人民諸委員会メンバー、「シャッビーハ」などは1万9,729人、ヒズブッラー戦闘員は262人、アサド政権を支持する「シーア派民兵」戦闘員は286人だという。
また行方不明者は2,974人、シリア当局による逮捕者数は1万7,000人以上、シリア当局、サラフィー主義武装集団双方による捕虜は6,000人以上に達するという。
シリア政府の動き
ワーイル・ハルキー首相は人民議会で演説し、「シリア・イラン関係は根強く確固たる関係だ。ロシアやBRICs諸国といった友好国との関係も同様だ。政治のレベルで完全な調整をもたらしたこうした関係こそが、今日我々に成果をもたらしている。とりわけ安保理でのロシアと中国による拒否権発動に顕著に示されるこうした調整がなければ、事態はまったく異なったものとなり、シリアはさらなる圧力や攻撃に曝されていただろう」と述べた。
ハルキー首相はまた「ジュネーブ2会議が開かれれば、シリア政府はシリア国民の希望とアサド大統領の指示を担って参加するだろう…。シリア政府の使節団が権力を他人に移譲しに行くと考えている者は夢想家だ」と強調した。
一方、化学兵器廃棄問題に関して、ハルキー首相は、ロシア、中国、イランの役割に謝意を示した。
SANA(12月31日付)などが伝えた。
国内の暴力
アレッポ県では、アレッポ・メディア・センター(12月31日付)によると、バーブ街道を走行中のバスに迫撃砲弾が直撃し、乗っていた25人が死亡した。
迫撃砲弾はナイラブ航空基地から発射されたという。
またシリア人権監視団によると、アレッポ市ハーリディーヤ地区、アーミリーヤ地区で、軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員と、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線などからなる反体制武装集団が交戦した。
一方、SANA(12月31日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、マアーッラト・アルティーク村、カッファイン村、アルバイド村、クワイリス村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市では、ハミーディーヤ地区、サラーフッディーン地区、アンサーリー地区、マシュハド地区、カッラーサ地区、ブスターン・カスル地区、ジュダイダ地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、リーマー農場、ダーライヤー市、アドラー市ウンマーリーヤ地区で、軍とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線などからなる反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃・爆撃を行った。
一方、SANA(12月31日付)によると、アドラー市(旧市街)、ドゥーマー市、ザバダーニー市、ヤブルード市、ダーライヤー市、バイト・サフム市、アクラバー村、リーマー農場で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアドラー市ウンマーリーヤ地区では、軍が29、30日に引き続き住民数千人の避難を支援した。
さらにジャルマーナー市では、反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、市民3人が負傷した。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ヤルムーク区で、軍と反体制武装集団が交戦した。
またバーブ・トゥーマー地区に近いジャルマーナー乗り合いバス発着場に迫撃砲弾1発が着弾し、男性1人が死亡した。
一方、SANA(12月31日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またカッサーア地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、市民1人が死亡、4人が負傷した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、サルハブ市にロケット弾2発が着弾、またカフルズィーター市が軍の砲撃を受けた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サルミーン市が軍の砲撃を受けた。
一方、SANA(12月31日付)によると、フバイト村、アイン・ラールーズ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線に属す米国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
またイドリブ市県庁周辺では、反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、市民3人が負傷した。
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クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、ウンム・バーティナ村への軍の砲撃により、反体制武装集団戦闘員2人が死亡した。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市工業地区、ラサーファ地区で、軍がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線などからなる反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(12月31日付)によると、ダイル・ザウル市工業地区、ハウィーカ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、フラーク市、ジャースィム市を軍が砲撃・爆撃した。
このうちジャースィム市に対して、軍は「樽爆弾」を投下したという。
一方、SANA(12月31日付)によると、ダルアー市各所で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、タウヒード旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ラッカ県では、クッルナー・シュラカー(12月31日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、シャーム・イスラーム自由人運動の司令官の一人(ラッカ県タッル・アブヤド国境通行所局長)で医師のフサイン・スライマーン氏(アブー・ラヤーン氏)の遺体を、捕虜交換の一環で同運動に返還した。
シャーム・イスラーム自由人運動筋によると、スライマーン氏の遺体は、耳を切り取られ、両手の平と足に銃弾を受けていたという。
スライマーン氏は、12月半ばにラッカ県でダーイシュに拉致されていた。
またクッルナー・シュラカー(1月1日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)に属すムアーウィバ大隊がラッカ市の福祉施設を襲撃したが、シャームの民のヌスラ戦線が応戦、これを撃退した。
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ラタキア県では、SANA(12月31日付)によると、バイト・アワーン村、カビール村、ダルーシャーン村、ラウダ村、ダッラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヒムス県では、SANA(12月31日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、サフサーファ地区、ワルシャ地区、タッルダハブ市、タルビーサ市郊外、ダール・カビーラ村、ガースィビーヤト・ナイーム村、ハッターブ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またヒムス市マハッタ地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、市民3人が死亡、2人が負傷した。
レバノンの動き
アドナーン・マンスール暫定外務大臣は、シリア軍機によるベカーア県バアルベック郡アルサール地方への領空侵犯(30日)に関して、「我々は真実を究明すべきだ。両国間の安全保障合意に沿って事態に対処すべく軍司令部からの詳細な情報を待っている」としつつ、シリア軍機の行動を「敵対的ではなく、友好的なもの」と見なしていると述べた。
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LBCI(12月31日付)などは、軍情報局の話として、アブドゥッラー・アッザーム大隊リーダー兼シャームの民のヌスラ戦線メンバーでサウジアラビア当局が指名手配中のマージド・マージド氏を1週間前にベイルート県内で逮捕していたと報じた。
諸外国の動き
クッルナー・シュラカー(12月31日付)は、トルコのガジアンテップ市内の保険局で、トルコ政府側からシリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・トゥウマ暫定内閣首班とポリオ撲滅活動チームのスハイル・アタースィー団長に対して、ポリオ・ワクチンが供与されたと報じた。
ポリオ撲滅活動チームはシリア人およびアラブ人医師200人を含む7,500人からなり、ハサカ県、ダイル・ザウル県、ラッカ県、アレッポ県、ラタキア県、ハマー県で活動予定だという。
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イラク軍アンバール作戦司令部は声明を出し、対テロ部隊が同県でイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の狙撃手4人を殺害したと発表した。
まtイラク軍合同作戦司令部は声明を出し、アンバール県カーイム郡で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が所有していた大量の爆発物を発見、押収したと発表した。
AFP, December 31, 2013、AMC, December 31, 2013、AP, December 31, 2013、Champress, December 31, 2013、al-Hayat, January 1, 2014、Iraqinews.com, December 31, 2013、Kull-na Shuraka’, December 31, 2013, January 1, 2014、LBCI, December 31, 2013、Naharnet, December 31, 2013、NNA, December 31, 2013、QNA, December 31, 2013、Reuters, December 31, 2013、Rihab News, December 31, 2013、SANA, December 31, 2013、UPI, December 31, 2013などをもとに作成。
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