2011年11月9日のシリア情勢

反体制勢力の動き(アラブ連盟本部前での暴行ほか)

シリア国内で活動する国民民主諸勢力国民調整委員会など反体制勢力の使節団に対して、シリア国民評議会を支持する反体制活動家の暴行を受けた。

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使節団は、国民民主変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム総合調整役、アブドゥルアズィーズ・ハイイル、ラジャー・ナースィル、ファーイズ・ファウワーズ、サーリフ・ムスリム、バッサーム・マリク、国家建設潮流のルワイユ・フサイン代表、リーム・トゥルクマーニー、無所属のサミール・イータ、ミシェル・キールー、ハイサム・マンナーア、アーリフ・ダリーラからなり、アラブ連盟本部でナビール・アラビー事務総長と会談し、「シリアの現状、アラブ連盟イニシアチブ実施、とりわけ国民対話開始の必要性について説明する」(国民調整委員会フサイン・アウダート氏)ことを目的とした。

しかしカイロのアラブ連盟本部前でバッシャール・アサド政権の弾圧に抗議するための座り込みを行っていたエジプト在住のシリア人反体制活動家らが、使節団の訪問に殴打やタマゴを投つけるなどの暴行を加えた。

これにより、ハサン・アブドゥルアズィーム総合調整役以外の使節団メンバーの訪問は阻止された。

在カイロ・シリア革命調整報道委員会のムウミン・クワイファーティーヤ委員長は、「国民調整委員会の使節団はアラブ連盟事務局長との会談のためにやってきたので、我々は彼らを制止し、彼らと30分間にわたって席をともにし、アラビー事務総長と行うべき会話の内容をぎろんした」と述べた。

クワイファーティーヤ委員長によると、使節団はシリアのアラブ連盟メンバーシップ凍結や、民間人保護のための飛行禁止空域にはまったく言及しなかったという。

またクワイファーティーヤ委員長は、使節団への暴行に関して、「当然だ。あいつらは金で雇われた裏切り者だ。国民はみなバッシャール・アサド政権の打倒とシリア国民評議会の承認を望んでいる」。

在カイロ・シリア革命調整総合調整役のアフマド・ハンムーダ氏も、国民調整委員会がシリア国民評議会に加わっていない点を指摘したうえで、シリア国民が「彼らに要求を掲げて欲しくないと思っているはずで、一部の人々は政権に取り込まれていると考えている」と述べた。

http://www.youtube.com/watch?v=G9524cX5HvU

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アラブ連盟のアラビー事務総長は、「暴力を用いる理由が分からない。彼らへの暴行を遺憾に思う」と述べた。また反体制勢力との会合に関しては、「アラブ連盟はシリア国内外のあらゆる反体制勢力と会う。これまでにもシリア国民評議会の代表と数回にわたって会ってきたのだから」と述べた。

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アラビー事務総長と会談したアブドゥルアズィーム総合調整役は、会談に関して「政権が弾圧や殺戮を行うような新たな猶予を与えないようアラブ連盟に求めた」と述べた。

その一方で、アサド政権と結託しているとの一部非難に関して、アブドゥルアズィーム総合調整役は、「我々は愛国的な責任をもって、革命と革命青年を保護するために活動している。アラブ諸国と国際社会による民間監視団の受け入れを望んでおり、シリア革命が平和的であることを望んでいる。軍事干渉以外の保護の手段を拡充したいと思っている」と述べた。

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反体制勢力使節団に参加したシリア・アラブ人権機構のハイサム・マンナーア所長は、アブドゥルアズィーム総合調整役とアラビー事務総長の会談に関して、シリア国内での暴力停止の必要を強調するとともに、アラビー事務総長にアラブ連盟イニシアチブの実施に必要な措置を講じるよう求めたと述べた。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン理事長はアラブ連盟のアラビー事務総長宛に書簡を送った。

そのなかで、ガルユーン理事長は、「政権がアラブ連盟のイニシアチブの各条項を遵守しないなか…、現在すべき唯一のことは、国際法上あらゆる合法的な手段を駆使して民間人を保護することである」と述べた。

そのうえで、書簡では、シリアのアラブ連盟などのメンバーシップ凍結、アラブ連盟諸国による経済・外交制裁、アラブ・国際監視団による監視、メディア、人権団体、支援団体の活動規制撤廃、アラブ連盟によるシリア国民評議会の承認を求めた。

一方、ガルユーン理事長はフェイスブックで、カイロでの暴行に関して、シリア国民評議会に悪影響を及ぼす危険な出来事と批判した。

またシリア国民評議会事務局メンバーのジャブル・シューフィー氏はこの暴行事件に関して「国民調整委員会内外の反体制活動家を攻撃した、ないしは攻撃しているすべての者は、シリア国民評議会を代表していない」と非難した。

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国家建設潮流のルワイユ・フサイン代表はフェイスブックで、反体制勢力使節団に参加した自身とリーム・トゥルクマーニー氏が、サミール・イータ氏、ミシェル・キールー氏、ムンズィル・ハッルームシ氏、ハーズィム・ナハール氏などとともに使節団を離れ、再び戻ることはないだろうと綴るとともに、潮流が近くカイロでの出来事に関して声明を出すと述べた。

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反体制勢力の使節団に参加していたシリア国家建設潮流のルワイユ・フサイン氏はフェイスブックで、使節団がカイロのアラブ連盟本部前で座り込みを行うシリア国民評議会支持者の暴行を受けてアラビー事務総長との会談を断念したのではなく、会談前に使節団への参加を取りやめたことを明らかにした。

それによると、シリア国家建設潮流のルワイユ・フサイン氏、リーム・トゥルクマーニー氏は、サミール・イータ氏、ミシェル・キールー氏、ムンズィル・ハッルーム氏、ハーズィム・ナハール氏などとともに使節団への参加を取りやめた。

一方、アラビー事務総長との会談には、ハサン・アブドゥルアズィーム総合調整役、ハイサム・マンナーア氏、バッサーム・マリク氏、アブドゥルアズィーズ・ハイイル氏、フサイン・アウダート氏、サーリフ・ムスリム氏(民主連合党党首)が参加した。しかしアラビー事務総長との会談を許されたのは、アブドゥルアズィーム総合調整役だけだったという。

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反体制活動家のイヤード・シュルバジー氏はフェイスブックで反体制勢力の使節団内の不和について暴露した。

それによると、使節団では当初、ミシェル・キールー氏が使節団を代表してアラビー事務総長と話を進める予定だったが、これにアブドゥルアズィーム総合調整役が反対し、事務局長前での意見表明を求め対立した。その結果、キール氏、イータ氏、フサイン氏などが使節団への参加をとりやめた、という。

反体制運動掃討

ハマー県では、シリア人権監視団によると、ムハルダ市で軍・治安部隊兵士7人が、離反兵との戦闘で殺害された。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区で民間人8人が殺害された。うち1人が治安部隊によって早朝に射殺され、5人がその葬儀に参列中に殺害された。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=eru2xzLnGpI#t=0s
http://www.youtube.com/watch?v=v58Tj5-LxJ4&feature=player_embedded#t=0s

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区とカイロ街道で治安部隊の弾圧で負傷していた2人が死亡した。

しかしSANA(11月9日付)は、ヒムス市ハーリディーヤ地区の2カ所で爆弾が発見され、爆発物処理班が解除・撤去したと報じた。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、インヒル市で子供1人を含む3人が殺害された。またジャースィム市ではインヒル市での犠牲に抗議した市民を治安部隊が強制排除、その際7人が負傷した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市で軍・治安部隊と離反兵の間で激しい戦闘が発生した。

しかし、SANA(11月9日付)は、サラーキブ市で武装テロ集団が民間人を襲撃し、1人を殺害したと報じた。またイドリブ県警は同市とタルマンス村で武装集団が誘拐した市民の遺体3体を発見した。

アサド政権の動き

進歩国民戦線加盟政党の一つシリア共産党(ユースフ・ファイサル派)は声明を出し、アメリカが反体制勢力の活動を扇動していると批判した。

レバノンをめぐる動き

シリア国民評議会はナジーブ・ミーカーティー首相に書簡を送った。

そのなかで、シリア国民評議会は、レバノン国内でシリア人反体制活動家13人が10月に誘拐されたことへの懸念を表明するとともに、レバノン在住シリア人の安全を確保することがレバノン政府の義務であると訴えた。

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レバノンで活動するシリア国民評議会メンバーのウマル・イドリビー氏は、AFP(11月9日付)に対して、レバノン国内で、シリア人数十人が誘拐されたとしたうえで、「シリアに近い政党の手によってビイル・ハサン(ベイルート南部郊外)で3人が誘拐され、我々のメディア・キャンペーンで釈放された」と述べ、レバノンの親シリア政党(ヒズブッラー)の関与を示唆した。

また「レバノンの治安当局が5人をカーア(ベカーア県バアルベック郡)で2週間ほど前に拘束し、シリア軍に引き渡した」と述べた。

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レバノンのミシェル・スライマーン大統領は、『リワー』(11月9日付)に掲載されたインタビューで、アサド大統領が「意図せぬかたちで越境したことに遺憾の意を示し、同様のことを繰り返さない」と誓約したと語った。

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ナジーブ・ミーカーティー首相は、内閣がシリアの避難民への支援を中止すると一部報道を否定し、口頭救済委員会委員長のイブラーヒーム・バッシャール准将にレバノン国内のシリア人避難民の人道状況をフォローアップし続けるよう支持した。

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ワリード・ジュンブラート進歩社会主義党は、11月9日、レバノン国内でのシリア人反体制活動家の誘拐・失踪を批判した。

ジュンブラート党首は声明で、「すべてのシリアの活動家は、いかなる方面からも嫌がらせや圧力を受けずに自らの意見を自由に表明する権利がある…。進歩社会主義党はレバノン憲法に従い政治的亡命の権利を認めている…」と述べた。

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Kull-na Shuraka', November 9, 2011

Kull-na Shuraka’, November 9, 2011

サアド・ハリーリー前首相は、ツイッターで、シリアの体制が崩壊すればレバノン国内の問題の一部は解決するだろうとつぶやいた。

諸外国の動き

ナバメセム・ピレー国連人権高等弁務官は安保理で、「シリア軍・治安部隊が深刻な人権侵害を続けている」と非難、「シリアでの犯罪に対する真の制裁」を呼びかけた。

またバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、シリア情勢が「武力紛争に向かっている」との懸念を表明した。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はアラブ連盟のアラビー事務総長と電話会談を行い、アラブ連盟のイニシアチブへの支持を伝えるとともに、シリア政府と反体制勢力の対話のしくみを確立し、政治的・平和的な手段での事態収拾の必要を強調した。ロシア外務省が声明で明らかにした。

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エジプトの前共和国ムフティーのナスル・ファリード・ワースィル師は『イフワーン・オンライン』(11月9日付)で、アサド政権による「野蛮な犯罪に対する報復」は適法と述べ、反体制勢力の武装闘争を認めた。

AFP, November 9, 2011、Akhbar al-Sharq, November 9, 2011, November 10, 2011、Facebook、al-Hayat, November 9, 2011, November 10, 2011, November 11, 2011、Ikhwān Online,
November 9, 2011、Kull-na Shurakā’, November 9, 2011, November 9, 2011、al-Liwā’, November 9, 2011、Naharnet, November 9, 2011、Reuters, November 9, 2011、SANA, November 9, 2011などをもとに作成。

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