英国とトルコが国連安保理でシリア非難決議の採択をめざすことで合意(2011年6月13日)

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シリア政府の動き

暴力調査委員会(5月末にアサド大統領の指示を受け設置)は、ダルアー県でのデモ参加者への対応をめぐって、政治治安部ダルアー支部長のアーティフ・ナジーブ少将とファイサル・クルスーム前県知事に渡航制限を科した。

同委員会の委員長を務めるムハンマド・ディーブ・マクタリン判事は、ダルアー県で100人以上に聴取を行ったと発表し、同委員会支部が現在も活動を続けていると述べた。

またラタキア県の委員会支部は200件以上の事件を、タルトゥース県の支部はバーニヤース市での事件50件以上を、そして委員会本部も約60件の事件を調査していると付言した。

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SANA, June 13, 2011

SANA, June 13, 2011

シリア・アラブ・テレビ(6月13日付)やSANA(6月13日付)は、軍が完全制圧したイドリブ県ジスル・シュグール市で、武装集団によって殺害された軍・治安部隊兵士多数が遺棄されている「集団墓地」が発見されたと報じ、その映像、写真を公開した。

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また、シリア・アラブ・テレビは軍による治安回復を歓迎する市民のインタビュー映像を放映した。

国内の暴力

12日に軍が「完全制圧」したとされるイドリブ県ジスル・シュグール市および同市周辺の状況に関して、『ハヤート』(14日付)は、子供や女性を含む市民が殺害され、多数が逮捕されたとの複数の目撃者の証言を伝えた。

al-Hayat, June 14, 2011

al-Hayat, June 14, 2011

トルコ国境に逃れた避難民たちによると、シリア軍は12日、ジスル・シュグール市東部から掃討を開始し、18歳から40歳の男性数百人を逮捕したという。

またロイター通信(6月13日付)は、避難民からの情報として、軍の戦車が12日の掃討作戦で、ジスル・シュグール市内の二つのモスクを砲撃し、逃げようとした住民3人(男性1人、女性1人、子供1人)が死亡したと伝えた。

レバノンの動き

レバノン国軍のハサン・アイユーブ准将は、シリア・レバノン国境に違法な武装集団が展開しているとの情報を否定した。

『リワー』(6月13日付)が報じた。

諸外国の動き

国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、シリア人避難民10,000人以上がトルコ、レバノンへの避難を余儀なくされていると述べ、警鐘を鳴らした。

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アナトリア通信(6月13日付)は、イドリブ県ジスル・シュグール市一帯からトルコに逃れた避難民の数が6,817人に増えたと報じた。

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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、米国がシリアでの新たな暴力行使を「強く非難する」と発表、アサド政権に「政治的対話」を行い、シリア国民にその退陣の是非についての意見を表明させるよう求めた。

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al-Hayat, June 14, 2011

al-Hayat, June 14, 2011

スコットランド在住の米国人学生は、自らがシリア人反体制女性ブロガーでレズヴィアンのアミーナ・アブドゥッラー・アッラーフになりすましていたと発表した。

この「女性ブロガー」については、CNNなどが6月8日にダマスカスで治安当局によって誘拐されたと大々的に報じていた。

この学生は謝意を述べつつ、アミーナ・アブドゥッラー・アッラーフというシリア人女性が実在せず、自らがネット上でねつ造した架空の人物であることを認めた。

ねつ造を認めたのは、エジンバラ大学修士課程に在籍するトム・マクマスターさん(40歳、妻帯)。

マクマスターさんは今月7日(火曜日)、アミーナのいとこを名のる男性だと偽って、インターネット上に、彼女が外出中に3人の武装した男たちに誘拐されたと書き込んでいたという。

これを受け、反体制活動家らは、フェイスブック上に「アミーナ・アブドゥッラーを解放せよ」というグループを立ち上げ、約15,000人が賛同していた。

『ハヤート』(6月14日付)によると、ねつ造の事実を知った反体制活動家や賛同者は怒りを露わにしており、サーミー・ハマウィーを名のる男性は、自らが編集するgaymiddleeast.comで「恥を知れ、マクマスター…。お前がしたことは、多くの人々に迷惑をかけ、我々全員を危険にさらすことになった」と記したという。

またアミーナ釈放を求めるフェイスブック上のグループにコメントした一人は、「激しい怒りを感じる」と書き込んだ。

また別の一人は「シリア情勢は悪化しており、このような遊びの余地はない」と書き込んだ。

さらに別の一人は「シリアで起きている非常に重要な出来事に割くべき時間と努力を無駄にされた」と書き込んだ。

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アラブ連盟のアムル・ムーサー事務局長は記者団に対し、シリア情勢に関して「民間人の犠牲者が増えるなか、すべてのアラブ諸国の懸念と怒り」を高めているとしたうえで「事態がこのまま放置されることは受け入れられない」と述べた。

UPI(6月13日付)が伝えた。

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英国のデヴィッド・キャメロン首相はトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相と電話会談し、国連安保理でシリア非難決議の採択をめざすことで合意した。

AFP, June 13, 2011、Akhbar al-Sharq, June 13, 2011、al-Hayat, June 14, 2011、Kull-na Shuraka’, June 13, 2011、al-Liwa’, June 13, 2011、Naharnet, June 13, 2011、Reuters, June 13, 2011、SANA, June
13, 2011、UPI, June 13, 2011などをもとに作成。

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