シリア軍がジスル・シュグール市を「完全制圧」、同作戦を受け約10,000人の避難民がトルコ・シリア国境地帯に流入(2011年6月12日)

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反体制勢力の動き

一方、シリア人権監視団は、2011年3月半ば以降の死者数が1,626人に達していると発表した。

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同監視団によると、このうち1,289人が民間人で、残りが軍、治安部隊隊員、警官だという。

またイドリブ県ジスル・シュグール市への軍の突入で、123人が死亡したと主張した。

シリア政府の動き

アナトリア通信(6月13日付)によると、ダマスカス県のラウダ地区にあるトルコ大使館前で、アサド政権支持者が、シリア国内の混乱に対するトルコ政府の姿勢に抗議してデモを行った。

一部が壁を乗り越えて大使館敷地内に入ろうとしたが、治安部隊がこれを阻止したという。

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SANA(6月12日付)によると、イドリブ県で11日に殺害された軍・治安部隊の兵士の葬儀が、ヒムス県、アレッポ県、イドリブ県の軍病院で行われた。

国内の暴力

イドリブ県では、SANA(6月12日付)によると、シリア軍がジスル・シュグール市を「完全制圧」した。

同通信社によると、軍は同市の「国立病院を武装組織から奪還し、橋や街道に武装組織が敷設した爆発物やダイナマイトを撤去したのち市内に進入した」としたうえで、市内およびその周辺で「武装集団と激しく交戦し、武装集団メンバー2人を殺害、多数を逮捕し、彼らの武器を押収された」という。

また軍は「周辺の山林で武装テロ集団残党を追跡している」という。

同通信社はさらに「武装集団によって殺害・遺棄されたジスル・シュグール市の治安機関要員の集団墓地が発見された…。集団墓地で回収された遺体から武装集団が残虐行為を行ったことが分かる」ことを明らかにするとともに、「武装テロ集団メンバーの一人は、ジスル・シュグール市で虐殺を行い、警察・治安要員を集団墓地に遺棄したことを証言した」と付言、「集団墓地から10体の遺体が回収されたが、そのほとんどが頭や四肢を刃物で切り落とされ、身体中に弾痕が残っていた」と指摘した。

これに対し、AFP(6月12日付)は、複数の活動家・住民の情報として、軍が「今朝7時前に、戦車と重火器によってジスル・シュグール市への集中砲火を開始し、その後東部および南部からも攻撃を行った」と伝えた。

これらの活動家・住民によると、「爆発音が聞こえ、機関銃を搭載したヘリコプターが同市の上空を旋回」、戦車約200輌が同市一帯に展開していたという。

またロイター通信(6月12日付)などは、ジスル・シュグール市掃討時に、複数の兵士が住民への発砲を拒否して離反し、住民側に立って戦ったと報じた。

これに関して、シリア調整委員会は、士官1人と兵士15人が治安部隊を離反し、住民側についたと発表したが、その真偽は確認できていない。

レバノンの動き

ナハールネット(6月12日付)によると、ベイルート県内のクウェート大使館前でアサド政権を支持するデモが行われ、約30人参加した。

諸外国の動き

『ハヤート』(6月13日付)によると、イドリブ県ジスル・シュグール市一帯でのシリア軍の治安維持掃討作戦を受け、トルコ・シリア国境地帯に約10,000人の避難民が流入した。

これに関連して、アナトリア通信(6月12日付)は、トルコ領内に避難したシリア人の数が5,051人に達していると伝えた。

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国連安保理で、シリア非難決議案の審議が予定されていたが、西側外交筋によると、審議の必要がないとする露中がこれをボイコットした。

ロイター通信(6月12日付)が伝えた。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、スカイ・ニュース(6月12日付)に対して、安保理がシリア問題をめぐって非難決議を採択することで「明確な姿勢」を示すべきだと述べた。

ヘイグ外務大臣はまた、非難決議がアサド政権に「合法的な(国民の)要求に応え、言論犯を釈放し、インターネットを解禁し、人権高等弁務官に協力する」よう求めるものでなければならないと付言した。

AFP, June 12, 2011、Akhbar al-Sharq, June 12, 2011、al-Hayat, June 13, 2011、Kull-na Shuraka’, June 12, 2011、Naharnet, June 12, 2011、Reuters, June 12, 2011、SANA, June 12, 2011などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.