アスタナ13会議が閉幕し、シャーム解放機構などのテロ組織の完全根絶と、クルド民族主義勢力による分離主義的アジェンダの拒否などを確認(2019年8月2日)

カザフスタンの首都ヌルスルタンで8月2日に開幕したアスタナ13会議は2日の日程を終え、会議の保障国であるロシア、トルコ、イランが閉幕声明を発表し、閉会した。

閉幕声明の骨子は以下の通り:


1. アスタナ会議の保障国であるロシア、トルコ、イランは、イドリブ県を中心とする緊張緩和地帯第1ゾーンで民間人を含む犠牲者が出ていることに遺憾を表明し、民間人を保護するための実質的な措置を講じることで合意した。

2. シリアのアル=カーイダであるシャームの民のヌスラ戦線(現シャーム解放機構)が緊張緩和地帯第1ゾーンで影響力を増大させていることに懸念を表明する。

3. シリアの主権、独立、領土の統一性と保全を遵守する。

4. 国連憲章および、イスラエルによるゴラン高原の併合を非難・拒否した国連安保理決議第497号を含む国連安保理での諸決議を遵守する。

5. ダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線、アル=カーイダとダーイシュとつながりのあるすべての組織・個人などのテロ組織を完全に根絶するまで協力を続ける。

6. 2018年9月のソチでのロシア・トルコ首脳会談での合意(非武装地帯などにかかる合意)を含む一連の合意を実施し、イドリブ県を中心とする緊張緩和地帯第1ゾーンで事態収拾を図ることの必要を強調する。

7. ユーフラテス川以東地域(ジャズィーラ地方)に関して、シリアの主権と領土保全に抵触する分離主義的アジェンダを拒否する。

8. 国連安保理決議第2254号および、2018年1月のソチでのシリア国民対話大会での決定を踏まえて、制憲委員会設置など、シリア人による政治プロセスを推進させる。

9. 国連および人道機関に人道支援の増加、インフラ復旧などへの支援強化を求める。

なお、アスタナ13会議には、イラクとレバノンが初めてオブザーバーを参加させ、閉幕声明では、両国の参加に歓迎の意が表された。

アスタナ14会議は10月開催をめざすという。

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『シャルク・アウサト』(8月3日付)は、複数の外交筋の話として、会議では、トルコがシャーム解放機構、ダーイシュ(イスラーム国)、そしてアル=カーイダやダーイシュとつながりがある組織の殲滅に向けた協力の強化をロシアに確約、これに対してロシアは緊張緩和地帯境界地帯に配置されているトルコ軍の12の監視所の安全を保証したと伝えた。

AFP, August 2, 2019、ANHA, August 2, 2019、AP, August 2, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 2, 2019、Reuters, August 2, 2019、SANA, August 2, 2019、al-Sharq al-Awsat, August 3, 2019、SOHR, August 2, 2019、UPI, August 2, 2019などをもとに作成。

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