国民対話委員会協議会のなかで憲法改正にあたっての二つの選択肢が示される、タルトゥース県では政権を支持する大規模デモ(2011年7月11日)

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シリア政府の動き

国民対話委員会協議会がダマスカス郊外県ディーマース町のサハーラー・ホテルで続けられ、約180人が出席した。

al-Hayat, July 12, 2011

al-Hayat, July 12, 2011

2日目の会合は、憲法改正の是非や新憲法のあるべき形態(バアス党を「国家と社会を指導する政党」と規定する第8条の今後など)、情報法、政党法、選挙法、国民対話の仕組みなどが議論された。

憲法をめぐる審議では、サーム・ディッラ博士が憲法改正案を提示した。

現状を踏まえ、ディッラ博士は、二つの選択肢が提示されていると述べた――第1に憲法改正、第2に新憲法起草。

第1の選択肢については、8月6日に召集予定の人民議会で承認するか、国民投票を呼びかけるという二つの方法があると述べた。

そのうえでディッラ博士は、新憲法起草を呼びかけ、そうすることで、憲法に関わる様々な(国家)機関を再検討し、外国にメッセージを送る機会が得られると主張、この作業は、憲法制定委員会ないしは憲法作成委員会設置を通じて実現されるべきと指摘した。

また第1の選択肢は、通常であれば、6ヶ月の審議の後に完了し、第2の選択肢は、国家において最高権限を有し、法律家および政治家から構成される委員会を設置し、新憲法起草を行うことになると提言した。

一方、政党法に関する審議では、政党法委員会委員長が法案およびこれまでになされた提案の要約を提示した。

そのなかには、政党結成の最低条件を、党員5,000人から2,000人に軽減することのほか、委員長を内務大臣でなく法律家とすること、さらには憲法第8条を修正する必要があることなどが提言された。

他方、選挙法に関する審議では、選挙法委員会のナジュム・アフマド委員長が、法案には司法が選挙のすべての段階を監視することなどが盛り込まれていると述べた。

また、関係各省や行政府ではなく、司法委員会が「完全に監督」すると強調した。

その後、閉幕声明の草案が審議され、「外国の干渉拒否」などが確認された。

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アフバール・シャルク(7月11日付)などによると、ダマスカス県ラウダ地区の米大使館、ジスル・アブヤド地区のフランス大使館前で、外国の内政干渉と両国大使のハマー市訪問に抗議するデモが行われ、参加者が建物にトマトや卵を投げて抗議した。

デモはまたラウダ地区のカタール大使館、米大使公邸前でも抗議行動を行われた。

フランス外務省によると、この抗議行動で、フランス大使館の職員3人が負傷したという。

しかし、シリアの主要メディアは、フランス大使館前で行われたデモの参加者に向かって大使館内から発砲があったと報じた。

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SANA, July 11, 2011

SANA, July 11, 2011

アサド大統領は2011年政令第254号を発し、バアス党ハマー支部書記長のアナス・アブドゥッラッザーク・ナーイム氏をハマー県知事に任命した。

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SANA(7月11日付)によると、タルトゥース県シャイフ・バドル市で、アサド大統領の包括的改革プログラムを支持するデモ集会が行われ、全長1キロのシリア国旗が広げられた。

またラッカ市でも同様の集会が行われ、全長1.1キロのシリア国旗が広げられた。

さらにアレッポ市では、30人の市民が外国の内政干渉拒否を訴える行脚を開始した。30人は10日の旅程でダマスカスに徒歩で向かうという。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、記者会見でアサド大統領が「正統性を失った。彼は約束を破り、国民を弾圧するため…イランに助けを求めようとしている」と発言した。

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アフバール・シャルク(7月11日付)によると、フランス外務省は、ラーミヤー・バックール在仏シリア大使を呼び出し、11日にダマスカスの米仏大使館前で行われたデモで、参加者が大使館施設を「襲撃」「侮辱」したと抗議した。

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イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領は、テヘランを訪問中のトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣と会談し、シリア情勢などについて協議した。

AFP(7月12日付)によると、会談でアフマディーネジャード大統領は「いかなる政府も、国民の自由と公正を禁じることはできず、その要求に応えなければならない」と述べ、「国民の合法的な要求実現に向けて進み、外国の介入を…回避する」べきだとの見解を示したという。

AFP, July 11, 2011、July 12, 2011、Akhbar al-Sharq, July 11, 2011、al-Hayat, July 12, 2011, July 13, 2011、Kull-na Shuraka’, July 11, 2011、Naharnet,
July 11, 2011、Reuters, July 11, 2011、SANA, July 11, 2011などをもとに作成。

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