閉幕した国民対話委員会のなかで国民対話や外国による干渉への拒否の重要性が改めて強調される、米ホワイトハウス報道官によればアサド大統領は「正統性を失った」(2011年7月12日)

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反体制勢力の動き

『ティシュリーン』のウェブサイトが何者かのサイバー攻撃を受け、閲覧不能となった。

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アラブ社会主義連合党の青年党員が「サフワーン・クドスィー打倒を求める党」を結成した。

クッルナー・シュラカー(7月12日付)が報じた。

シリア政府の動き

10日からダマスカス郊外県ディーマース町のサハーラー・ホテルで続けられてきた国民対話委員会協議会が声明を発表し、閉幕した。

閉幕声明は、「対話、安定、寛容、法治国家建設、公正、多元主義、民主主義」の必要を確認するとともに、「すべての政治犯・言論犯、最近の事件(デモ)での全逮捕者の釈放、汚職撲滅の仕組みの迅速な構築」を呼びかけ、「いかなる外国の干渉をも拒否する」ことを強調した。

閉幕声明全文は以下の通り:

バッシャール・アサド大統領の決定のもと設置された国民対話委員会は、7月10、11、12日に協議会を呼びかけ、国内のさまざまな階層・政治潮流に属する政治家、思想家、社会運動家、青年活動家が参加し、検討・協議を行い、国民対話を通じて期待される成果を上げるための青写真、提案を案出した。協議会は国が現在辿っている段階の具体的な性格、政治的・経済的・社会的に求められている対応策を審議し、将来的な見込み、国民の生活に関わる問題への関心を展望した。

協議会は、国民対話大会開催に備えるなかで、国内外のすべての階層、社会成員、政治勢力との連絡の継続を強化しつつ、これらの連絡調整を可能な限り早急に完了させたうえで開催される同大会に向けてともに準備を行う。

協議会出席者は以下の共通項目について確認した。

1. 対話は国が危機を終わらせるための唯一の方法である。

2. 国の安定は、至上の国民的必要条件であり、改革深化を保障する。

3. 寛容は、現状を脱却するうえでもっとも理想的な価値観である。

4. 個人、公共・私有財産への攻撃は、いかなる勢力が行うものであれ拒否する。

5. これまでの恩赦の対象とならず、また法律によって罰せられるべき罪を犯していないすべての政治犯、言論犯を即時釈放する必要がある。また意見を表明する権利が侵害されてはならず、祖国と憲法の枠のなかで護られるべきで、一般的諸自由がすべての国民に保障される権利であることを確認する。

6. 最近の事件でのすべての逮捕者のなかで司法府において有罪が確定していない人々の釈放を提言する

7. 至上の憲法の基準と近代的な人道基準に従って人権の価値を維持・強化し、シリア最高人権会議の発足を提言する必要がある

8. 愛国的な反体制勢力は、シリアの国民的構成における不可分な一部をなす。

9. 国家の威信は国民的信託の一部をなし、祖国と市民の尊厳と安全を維持することをめざすものである。

10. 権利、法律、構成、市民性、多元主義、民主主義に基づく国家建設に向けて会合を行う。この国家は投票箱を政治的権威の基礎とする。

11. シリアは万人の祖国であり、理想的な形態の多元主義国家である。

12. シリアの内政に対するあらゆる外国の干渉を拒否する。これらの干渉の筆頭として、主権に侵害への口実として用いられる人道的干渉の原則と呼ばれているものがある。しかし主権は決して抵触されることが許されない神聖な原則である。

13. 法の支配の原則を採用し、法律によって罰せられるべき罪を犯したすべての者に対してそれを実行し、例外なく制裁を科す。

14. 汚職撲滅の仕組みを早急に構築する。

15. これまで達成された成果を歴史的責任感のもとに確認・依拠する。

16. シリアの若い世代に関心を払い、彼らの声や要求に耳を傾ける。

17. 国民的合意を体現した基本的問題にして国民的目標であるゴランの解放。

18. アラブ・シオニスト闘争に関わる国民的・民族的な諸原則を確認し、占領されたアラブの土地の解放、アラブ・パレスチナ人民の合法的諸権利の保障をめざす。

協議会は、議題として提示された複数の法案、すなわち政党法、選挙法、情報法について審議した。またこれらの法律に関する諸々のコメントを考慮し、国民的コンセンサスに達することをめざした。審議の結果、担当する諸委員会に対して、国民対話委員会がこれまでの発言を踏まえ、早急にこれらの三つの法案を準備し、最終案を提示することで、法制定を促進する点で合意が成立した。

協議会はまた憲法条文についても検討を加えた。審議には健全かつ愛国的な多くの視点が反映され、そのなかでは、憲法第8条に関するものも含まれた。その結果、憲法第8条の改正が、全文を含む憲法の各条項の修正を必然的に伴うことを確認した。ゆえに、協議会は、憲法のすべての条文を再検討し、シリア・アラブ共和国の現代的な新憲法起草を保障する提案を提示するための法務・政治委員会設置を提言した。この新憲法は、政治的多元主義、社会的公正、法の支配、基本的人権を保障し、女性の役割や子供の権利が擁護され、万人の平等の原則のもと国民の権利と義務が設定される。

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外務在外居住者省は声明を出し、アサド大統領が「正統性を失った」とするクリントン米国務長官の11日の発言に関して、「あからさまな干渉の証拠」と非難した。

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クッルナー・シュラカー(7月12日付)は、ラーミー・マフルーフ氏がダマスカス県マッザ86地区で、ブスターン慈善協会を通じて慈善事業を本格始動したと報じた。

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SANA(7月12日付)によると、ダマスカス県バーブ・トゥーマ前、ダマスカス郊外県ドゥーマー市、アレッポ市、ハサカ市などでアサド大統領の包括的改革プログラム支持、外国の干渉拒否を訴える集会が開かれ、多数の市民が参加した。

諸外国の動き

米ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官はダマスカスでの米大使館への「襲撃」(11日)を「受け入れられない」と非難した。

カーニー報道官は「我々はこのことを明確にシリア政府に伝えた」としたうえで、アサド大統領がみはや「欠くことのできない人物」ではなく「正統性を失った」と断じた。

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米議会公聴会で、マイケル・ポスナー国務次官補(民主主義・人権・労働担当)は、アサド大統領が「正統性を失った」と繰り返し述べた。

またポスト・アサド段階への米政府の見解を明確に表現するかたちで、ポスナー国務次官補は「多元的、民主的な統一されたシリアは、地域において積極的且つ指導的役割を演じることができるが、アサド体制のもとでは、さらなる不安定要因でしかない」と述べた。

さらに「米政権はデモ開始当初から、シリアが新たな政治体制に向かっており、それはシリア国民が決することだを明言してきた」と付言した。

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フランスのフランソワ・フィヨン首相は、ダマスカスの仏大使館「襲撃」(11日)に関して、フランスは「脅しに屈することはない」と述べ、「シリア当局は自らの行為に責任を負っている」と非難した。

そのうえで「フランスは従来の路線を逸れることはなく、断固として弾圧を非難し続けるだろう」と述べ、「ダマスカスにおける深淵な政治改革の実施」を求めた。

しかし、アラン・ジュペ仏外務大臣とジェラール・ロンゲ国防大臣はいずれも「シリアとリビアの情勢は異なっている」との理由で、シリアへの軍事介入の可能性を否定した。

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国連安保理では、ダマスカス県での米仏大使館「襲撃」事件に関して、安保理議長がシリア政府を厳しく非難し、国際的な合意に従って責任を果たすよう呼びかけた。

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ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣は、ドイツと欧州諸国が「ともにシリアの体制に反対する共同決議案を提示するために行動するだろう」と述べるとともに、決議案が米仏大使館での事件に限られるものでないとしたうえで、「自由を求める数十万のデモ参加者を忘れてはならない」と述べた。

AFP, July 12, 2011、Akhbar al-Sharq, July 12, 2011、al-Hayat, July 13, 2011、Kull-na Shuraka’, July 12, 2011、Naharnet, July 12, 2011、Reuters,
July 12, 2011、SANA, July 12, 2011などをもとに作成。

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