シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構に近いイバー・ネット(9月8日付)は、シャーム解放機構のアブー・ムハンマド・ジャウラーニー指導者は、9月3日に反体制派支配地域内某所でシューラー評議会とシリア救国内閣の幹部、地元名士、学術関係者と会談したことを明らかにした。
会談では、イドリブ県を中心とする反体制派支配地域の現状について意見が交わされた。
ジャウラーニー指導者が出席者からの質問に答え、「ロシアと政権の攻撃を停止させることができる政治案など存在しない。戦いは政治的側面を超えた軍事的なもので、アッラーのほかに存在する唯一の保証人がムジャーヒディーンなのだ。そして彼らの背後に住民がいる。解放区における力の源泉は、今も昔も存在し、その最たるものとは、諸派の調和と組織の維持、そして安定した活動だ」と述べた。
また「こうしたありようは、政権の制度が衰退し、解体の危機に苦しんでいるなかで敵を憤慨させるものだ。加えて、諸派と住民の社会的な結束は強く、自治を担い、大学や組織を建設できるグループもいる。このグループは自らの責任を果たすことができる。これは敵を大いに脅かすものだ」と付言した。
そのうえで「我々は最後の戦いで降伏してはならない。我々は(ハマー県北部での)敗北が闘いの終わりだと見てはいない。戦いで負けることはあるが、戦闘に勝つことが義務なのだ。過去にこだわることが敗北の始まりとなる…。戦争は大概が心理的なものだ。相手の意志を挫いたものが勝つ」と強調した。
さらに「イスラーム軍、ラフマーン軍団は、グータから(シャーム解放)機構が退去する際に救ってくれたか? (シャーム解放)機構に以前から敵意を持ち、自らの家族をトルコなど安全な場所に逃がしたこれらの組織の一部のメンバーは、革命は終わったとの憎しみの念を募らせた…。この地域(反体制派支配地域)のかたちはこの闘争の結果で変わることになるだろう…。解放区における軍事力は、諸派が糾合を続け、一致団結すれば、政権を打ち負かし、奪われた地域を奪還するのに十分だ…。民間人と軍人の区別はない。解放区のすべての住民が戦わねばならない」と述べた。
一方、ロシアについては「ロシアにもっとも痛みを与えているのが(シャーム解放)機構だ…。ロシアは大国だ…。それゆえ、我々は戦いが大規模なものであることを知るべきだ。ロシアは最小限の代価で勝利を収めたいと思っている。かつて(ソ連時代)の地位に自らを復活させるために負けたくないと考えている…。ロシアがイドリブ県での戦いに参戦するのには地政学的な目的がある。そこは地中海への玄関であり、ガスがあり、シリアに軍事基地を建設しており、これらの基地の安全を保障しようとしている」と述べた。
AFP, September 8, 2019、ANHA, September 8, 2019、AP, September 8, 2019、al-Durar al-Shamiya, September 8, 2019、Reuters, September 8, 2019、SANA, September 8, 2019Shabaka Iba’ al-Ikhbariya, September 8, 2019、SOHR, September 8, 2019、UPI, September 8, 2019などをもとに作成。
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