2011年11月19日のシリア情勢

反体制勢力の動き

カイロで反体制勢力の統合をめぐって2日にわたって協議を続けてきたシリア国民評議会に属さない在外の活動家、サーディク・ジャラール・アズム(思想家)、アブドゥッラッザーク・イード(ダマスカス国民変革宣言在外代表)、アンマール・カルビー(シリア人権機構代表)らは、カイロで反体制勢力統一のためのイニシアチブを立ち上げた。

同イニシアチブは、彼らが出した声明によると、「シリア国民の要求を表現する単一・共同ビジョンの欠如、シリア人と国際社会の信頼を得るような単一の反体制勢力の主体の欠如」といった事態を受けた動きだという。

また同イニシアチブは、「バッシャール・アサドを頂点とする体制の完全な打倒、国際社会による民間人保護、飛行禁止区域などを通じた安全地帯の創出、国際社会による体制の正統性剥奪と孤立化、人権侵害の安保理、国際刑事裁判所への提訴・起訴、自由シリア軍と離反兵の支援…、体制打倒を加速させるためのアラブ・国際機関との協力」を求めた。

同イニシアチブは、26人のメンバーからなる連絡委員会を設置し、「さまざまな勢力と連絡…調整を行い、国民的大義に資する共通ビジョン、統一母体の確立」をめざす。

協議会に参加した中道党のムハンマド・アリー・ハルフ書記長は『ハヤート』(11月20日付)に対して、シリア国民評議会が反体制勢力分裂の責任を負っていると非難し、同評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長に対して「国民的責任をとり、カイロで直ちにすべての勢力との包括的・総合的会合をただちに開き、行き過ぎと疎外をやめ、評議会の組織を修正・拡大することですべてのシリア人に参加の余地を与え、国内の調整諸委員会を含んだかたちで修正拡大国民評議会として反体制勢力を統合する」よう求めた。

ハルフ書記長はまたシリア国民評議会の構成が「シリア・ムスリム同胞団とダマスカス民主変革宣言の間で配分され、若干のマイノリティが移植」されていると非難、「独占と不正に満ちた配分」と酷評した。

なお「シリア反体制勢力統一国民イニシアチブ」と名づけられたこの運動の声明は11月20日付で公開された。http://all4syria.info/web/archives/37940

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シリア・ムスリム同胞団のズハイル・サーリム報道官は声明を出し、「シリア国民が西側ではなくトルコの軍事的介入を受け入れるだろう」とのムハンマド・リヤード・シャカファ最高監督者の発言(17日)が「個人的見解であり同胞団の組織とは関係ない」と釈明した。

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シリア法律研究センターのアンワル・ブンニー弁護士は、AKI(11月19日付)に対して、アサド政権によるアラブ監視団派遣議定書への修正要求が「陰謀でアラブの要求への拒否」と非難した。

反体制運動掃討

民間人と離反兵15人、空軍情報部兵士4人が殺害された。

SANA, November 19, 2011

SANA, November 19, 2011

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ヒムス県では、ロンドンで活動するシリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、ヒムス・サラミーヤ街道沿いのムフターラ村近くで空軍情報部の車が離反兵の襲撃を受け、情報部兵士4人が殺害された。

クサイル市では離反兵と軍・治安部隊が交戦し、市民2人、離反兵2人が死亡した。

ヒムス市では治安部隊の狙撃で1人が殺害された。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カフルタハーリーム村に治安部隊が突入し、民間人7人が殺害された。

これに対し、SANA(11月19日付)は、関係当局が、ザーウィヤ山に近いカフルナブル市やカフルルーマー村などで、140人以上の指名手配者を逮捕したと報じた。

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ハマー県では、シリア人権監視団、地元調整諸委員会によると、ハルファーヤー市、シャイザル町などで軍・治安部隊による逮捕・追跡活動が行われた。

アサド政権の動き

SANA, November 19, 2011

SANA, November 19, 2011

マナール(11月19日付)は、非公式筋の話として、シリア軍が「幻想破壊」作戦の名のもとに対トルコ国境地帯全体(幅20キロ)に展開し、軍の許可のない往来を禁じる動きに出たと報じた。

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SANA(11月19日付)は、ラタキア県ジャブラ市でアサド政権の改革支持、外国の干渉反対を訴える市民数千人がデモ行進を行ったと報じた。

アラブ連盟の動き

アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、事務局でアラブ監視団派遣に関する議定書に対してシリアが求めた修正提案について審議した。

連盟高官は「問題は猶予の問題ではなく、より複雑である」と述べ、修正提案に関してアラブ諸国の意見の相違があることを示唆した。

修正提案には、人権組織メンバーの参加拒否、監視団へのシリア使節団の随行、訪問先の病院・刑務所の制限、軍・治安機関施設への立ち入り拒否、「破壊分子」との積極禁止、などが盛り込まれており、アラビーヤ(11月19日付)によると、それは18項目からなる、という。

イスラエルの動き

48年パレスチナ人(イスラエル国籍を持つパレスチナ人)およびパレスチナ人数十人が西エルサレムにある米領事館前でアサド大統領を支持するデモを行った。

アサド大統領の写真を掲げたデモ参加者は、「アラブ性の砦シリアに対する帝国主義と陰謀よ、倒れろ」、「シリアから手を離せ」などといったシュプレヒコールを上げた。

イスラエル警察・治安部隊は領事館周辺に展開したが、デモを強制排除しなかった。

SANA, November 19, 2011

SANA, November 19, 2011

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SANA(11月19日付)は、イスラエル占領下のゴラン高原にあるブクアーター村で「アラブ連盟の決定反対、レジスタンスのシリア支持」と題した集会が開かれ、地元シリア・アラブ人住民が出席したと報じた。

同集会ではギリシャ正教会のアターッラー・ハンナー大司教(エルサレム司教区)などが出席した。

レバノンの動き

レバノンの自由国民潮流代表のミシェル・アウン元国軍司令官は、欧州のカトリック教徒使節団と会談した。

会談でアウン氏は、「現地での事実と異なったレポートをする世界のメディアの報道に対応することは重要なことだ」と述べ、ジャズィーラなどの扇動放送を批判した。

そのうえで、「シリアにおける戦争が進行中だ。なぜならこの戦争の背後にある真の動機は改革要求ではないからだ」と述べ、シリアの地域における弱体化をねらった動きを牽制した。

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レバノンのフアード・スィニューラ元首相は『シャルク・アウサト』(11月19日付)に対して、「もしわたしがナジーブ・ミーカーティー首相だったら、私はアラブ連盟外相会議で(対シリア決議に関する)投票で棄権していただろう」と述べた。

 

SANA, November 19, 2011

SANA, November 19, 2011

ヨルダンの動き

ヨルダン政府は、アラブ連盟の監視団派遣が決定した場合、監視員を派遣する用意があると発表した。

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ヨルダン・ムスリム同胞団のハマーム・サイード最高監督者は、「流血を停止」するためなら、同胞団がシリアへのアラブ軍の派遣を支持する、と述べた。

AFP, November 19, 2011、AKI, November 19, 2011、Akhbār al-Sharq, November 19, 2011、Alarabia.com, November 19, 2011、al-Ḥayāt, November 20, 2011、Kull-nā Shurakā’, November 19, 2011, November 20, 2011、al-Manār,
November 19, 2011、Naharnet.com, November 19, 2011、Reuters, November 19,
2011、al-Sharq al-Awsaṭ, November 19, 2011などをもとに作成。

 

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