2011年11月20日のシリア情勢

反体制勢力の動き

ダマスカス県のイーマーン・モスクに隣接するバアス党支部に対して夜明け前に、自由シリア軍が迫撃砲で攻撃を加えた。

複数の住民によると、少なくとも迫撃砲2発が施設に撃ち込まれ、施設内にいた1名が負傷した。

目撃者の一人によると、「治安機関がある地区を閉鎖した。しかし建物から煙があがり、消防車が建物の周りに来ていた…。攻撃は夜明け前になされたが、建物はほぼ無人だった。政府への警告メッセージのようだった」という。

BBC(11月21日付)は、1台の自動車が同施設前を通過中に、施設の5階に向かって迫撃砲2発を発車したと報じた。

攻撃後に自由シリア軍が犯行声明を出した。同声明によると、政治犯釈放を拒否したことへの報復だという。

一方、『クッルナー・シュラカー』(11月20日付)は、ダマスカス県のイーマーン・モスクに隣接するバアス党支部に加えて、マイサート地区のウマイヤ病院に隣接する民族治安局が反体制武装集団の攻撃を受けたと報じた。

しかしこの攻撃にに関して、自由シリア軍は犯行声明は出さず、また上記の声明においても指摘しなかった。

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トルコ南部で反体制武装闘争を指揮する自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐はジャズィーラ(11月20日付)の取材に対して、「一発の銃弾も密輸入していない…一発も…私はそう断言する。トルコからシリア領には1発の銃弾も入っていない」と述べ、トルコから軍事支援を受けているとの一部指摘を否定した。

またアスアド大佐は同武装組織が飛行禁止区域設置以外のいかなる外国の軍事介入も望まないと述べた。

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国外で活動するシリア革命総合委員会は、アラブ連盟のアラビー事務総長に、シリア・トルコ国境に緩衝地帯を設置するよう求める書簡を提出した。

書簡は同委員会のムハンマド・イッズッディーン氏が手渡した。

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地元調整諸委員会は声明を出し、空軍情報部がハラスター市で4ヵ月の新生児を誘拐し、指名手配中の父親に投降を求めていると非難した。

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占領地ゴラン高原のシリア人住民が声明を出し、シリア政府に対するアラブ連盟の強硬な姿勢を支持した。

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ヒムス市のスンナ派およびアラウィー派の宗教関係者が連名で「ヒムス・ウラマー声明」を出し、殺戮や誘拐の停止を呼びかけた。

反体制勢力と親体制勢力の衝突

エジプトの首都カイロにあるアラブ連盟本部前でアサド政権を支持するデモ参加者と反体制活動家が衝突した。

SANA, November 20, 2011

SANA, November 20, 2011

複数の反体制活動家によると、アサド政権を支持するデモはズハイル・アブドゥルカリーム氏(芸術家)とアブドゥルカリーム・フワンダ氏(大使館文化担当官)が中心となって組織したもので、反体制活動家が座り込みを行うテントの排除を試み、テントを焼き討ちにしようとしていた、という。

しかしSANA(11月20日付)は、アラブ連盟による対シリア決議や内政干渉を拒否するシリア国民の意思を伝えるべくカイロを訪問したシリア人使節団数十人が「国外の反体制活動家」に襲撃された、と報じた。

なお『クッルナー・シュラカー』(11月20日付)はラーミー・マフルーフ氏から資金援助を受けていると断じた。

アサド政権の動き

英国の『サンデー・タイムズ』(11月20日付)はバッシャール・アサド大統領への単独インタビューを行った。

同記事におけるアサド大統領の主な発言は以下の通り。

「ほかのシリア人と同様に、私は我が国の国民の流血を目の当たりにして、もちろん痛みと悲しみを感じた…。しかし大統領としての私の役割は、言葉や悲しみではなく、行動だ。私の役割とは、さらなる流血を防ぐためにとるべき措置を考えることだ」。

「唯一の方法とは、武装した者たちを探し出し、武装集団を追い詰め、隣国からの武器の流入を阻止し、破壊活動を防ぎ、法律や秩序を執行することだ」。

「人間は時計を逆戻りさせることはできないが、この問題(女性や子供が殺害されいてる事態)に関して賢明に行動することはできる…。大統領としての私の役割は、一部の地域で生じている武装テロ行為によってもたらされるこの流血をいかに止めるかを知ることにある」。

「父親として当然、彼ら(子供を失った遺族)に同情している…。私は民間人と軍人双方の犠牲者遺族に多数面談し、彼らと席をともにして話をした」。

「闘いは続く。シリアを従属させようとする圧力も続くだろう…。しかし私はシリアが屈せず、圧力に抵抗し続けるとあなたに断言する」。

「8ヵ月を経て、我々に明らかになったのは…、問題が平和的デモに関するものではなく、武装行為に関するものだということだ」。

「我々は新たな議会を持つことになる。そしてその後に新たな内閣を持つことになる。そして我々は新たな憲法を持つことになる。この憲法が、新たな大統領をどのように選ぶかという基礎を定めるだろう」。

(自分の子供が大統領になることを望むかとの問いに対して)「私は子供たちにシリアのあらゆる階層の人々と関わるよう忠告している。そうすることで、彼らが成長したとき個人としての拡がりが出るからだ…。子供たちの将来など誰も決められない…。彼らの未来は私でなく、彼らが決めねばならない」。

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SANA, November 20, 2011

SANA, November 20, 2011

SANA, November 20, 2011

SANA, November 20, 2011

SANA, November 20, 2011

SANA, November 20, 2011

ダマスカス県のヒジャーズ駅前、ユースフ・アズム広場、外務省前などでアサド政権の改革支持、外国の干渉拒否を訴える大規模な集会が開催された。

スワイダー県スワイダー市でも県庁前でアサド政権の改革支持、外国の干渉拒否を訴える大規模な集会が開催された。

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アサド大統領は、情報法の規定に基づき、2011年法令第108号を発し、国民情報会議を正式に発足した。

会議は以下のメンバーから構成されている。

ターリブ・カーディー(議長)
フアード・アブドゥルマジード・バラート(副議長)
アーディル・ヤーズジー
ナーディヤー・ハウスィト
ハサン・ムハンマド・ユースフ
ナーズィム・バッサース
ムハンマド・クッジャ
フアード・シュルバジー
アブドゥルファッターフ・アウド

同会議は、アサド政権が進める改革の一環として情報部門の整備を推進する。

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SANA(11月20日付)は、政党問題委員会がムハンマド・シャッアール内務大臣によって開催され、政党法に基づき提出された政党申請についての審議を行ったと報じた。

同報道によると、審議の結果、シリア民主党、団結党の二党が公認された。

反体制勢力掃討

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、タフタナーズ市で軍・治安部隊の戦車、兵員輸送車数十用が侵入し、市民2人を殺害した。

また同監視団によると、マアッラト・ニウマーン地方のマアッルシャムサ村、ワーディー・ダイフ地方でも軍・治安部隊が展開し、激しい発砲を行った。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市で軍・治安部隊が発砲し、2人が殺害された。

また同監視団によると、ヒムス市内の複数の地区でも軍・治安部隊が発砲した。一方、ハムラー地区では数千人が反体制デモを行ったという。

しかし、SANA(11月20日付)は当局が武装テロ集団メンバー58人を逮捕したと報じた。またカフル・アーヤー村で密輸されようとしていた灯油3,000リトルを押収したと報じた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハラスター市に兵員輸送車輌十数台が侵入し、逮捕・追跡作戦を展開し、15人を逮捕した。

しかしSANA(11月20日付)は、ハラスター市およびドゥーマー市で、当局が武装テロ集団5人を逮捕し、2人を殺害したと報じた。

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シリア・クルド国民評議会執行委員会メンバーでシリア・クルド人権一般的自由擁護機構(DAD)代表の反体制活動家ムスタファー・ウースー氏が逮捕された。

アラブ連盟の動き

アラブ連盟は声明を出し、シリアへの使節団派遣に関するシリア政府の修正提案を拒否する声明した。

シリア危機に関する閣僚委員会メンバーとナビール・アラビー事務総長の会合後に発表された声明は、「シリア側が議定書に関して提案した修正と追加は、文書の本質に抵触し、シリアの危機解決と民間人保護拡充を目的とするアラブ連盟の計画を実行しようとする使節団の任務の本質を変更する」とし、修正提案を却下した。

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複数の外交筋が『ハヤート』(11月21日付)に述べたところによると修正提案は15項目からなっていた。

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連盟による修正提案拒否を受け、ワリード・ムアッリム外務大臣は記者会見を開き、この決定を強く非難した。

ムアッリム外務大臣は「議定書は、シリアの国家としての役割を完全に無視している。シリアはこの使節団の安全に責任がある一方、使節団はシリアとの調整を無視しようとしている。この国(シリア)は、使節団との調整なしに存在している。使節団がどうやって行きたい場所に行くというのか?我々は、「行きたいところに行きなさい、しかし我々に安全を守る人材を送れるよう連絡しなさい」と言っているだけだ」と述べた。

またムアッリム外務大臣は、米国やトルコが「シリアを内戦へと追いやろうとしている」と批判した。

諸外国の動き

カナダのハリファックスで開かれた国際安全保障会議に出席したイスラエルのエフード・バラク国防大臣は、シリア情勢に関して、「この体制を終わりへと導く兆候が加速的に現れている」と指摘したうえで、アサド政権が「戻れない地点まで来てしまっている。自らの権威や正統性を回復し得る余地はない…。私にとって明らかなのは、数週間前にカッザーフィーの身に起きたこと、そしてその前にサッダーム・フセインに起きたことが彼に今置きようとしているということだ」と述べた。

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トルコのアブドゥッラー・ギュル大統領は『サンデー・テレグラフ』(11月20日付)に対して、「専制的体制、一党体制はいる場所は地中海岸にはもはやない」と述べた。

またギュル大統領は訪問中の英国で『ガーディアン』(11月20日付)のインタビューに応え、「シリアは今や袋小路に入ってしまった。それゆえ変革は必然だ」と述べつつ、「平和的な方法による変革が外国の介入を通じて実現するとは思わない。国民が変革を実行せねばならない…。内戦は誰も望んでいない」と述べた。

他方ロイター(11月20日付)によると、トルコ政府がシリアの民間人補語のための飛行禁止空域と緩衝地帯の設定を検討している、とトルコ各紙(11月20日付)が報じた。

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イスラーム諸国会議機構のエクメレッディン・イフサン・オグル事務局長は、ドーハで『ハヤート』(11月21日付)に対して、「問題を国際化する前に、シリア国内で問題解決がなされねばならない」と述べ、シリアの問題が国際化することへの危機感を表明するとともに、アサド政権に暴力の停止を求めた。

AFP, November 20, 2011、Akhbār al-Sharq, November 20, 2011, November 22, 2011、BBC, November 20 ,2011、The Guardian, November 20, 2011、al-Ḥayāt, November 21, 2011、Kull-nā Shurakā‘, November 20, 2011、Reuters, November
20, 2011、SANA, November 20, 2011、The Sunday Times, November 20, 2011などをもとに作成。

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