2011年11月29日のシリア情勢

アサド政権の動き

イスラーム諸国会議機構(OIC)高官は、11月30日にサウジアラビアのジェッダで開催される執行委員会会合にシリアのワリード・ムアッリム外務大臣とイランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣が出席することを確認した。

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アドナーン・マフムード情報大臣はアーディル・サファル内閣が閣議を開き、アラブ連盟による対シリア経済制裁の「影響に対処する」施策について審議したと発表した。

SANA, November 29, 2011

SANA, November 29, 2011

情報大臣によると、閣議では、シリア国民に影響が及ばないとの連盟の主張とは裏腹に、シリア国民のさまざまな階層、集団に影響が出る点に議論が集中したという。

また閣議では経済省に対して、価格統制、一部商人による投機を抑制するよう要請がなされた。

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バアス党シリア地域指導部は声明を出し、アラブ連盟の対シリア経済制裁が国民の生活を標的とし、アラブ諸国の対話、政治・経済協力、共同行動の扉のすべてを閉ざしたと酷評した。

反体制勢力の動き

『ワタン』(11月29日付)は、国内で反体制運動をする国民民主イニシアチブ代表のムハンマド・スライマーン元情報大臣が、アサド大統領に内閣を総辞職させ、挙国一致内閣を発足するよう求めたと報じたと報じた。

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「シリア革命総合委員会クルド革命運動家」と称するグループが11月29日に声明を出し、イラク・クルディスタン地域のマスウード・バールザーニー自治政府大統領と28日に会談したと発表した。

会談したのは、シリア国内の反体制運動に直接関与してない10のクルド民族主義組織の代表からなる使節団。

会談で使節団は、①シリアの反体制運動とアサド政権の双方と等距離を保つこと、現下のシリア国内の政治勢力間の対立を踏まえ、②専制体制打倒という要求の内容を具体化すること、③憲法にクルド民族主義をシリア第2の民族主義と明記すること、そして④アサド家の支配(が続く場合)クルド人の自決権を憲法で保障すること、を求めるとの姿勢を明らかにした。

反体制運動掃討

シリア革命総合委員会によると、ダマスカス郊外県などで治安部隊の発砲により7人が殺害された。

また国内調整諸委員会によると、ダマスカス郊外県、ハマー県、ヒムス県などで少なくとも11人が治安部隊に殺害され、多数が逮捕された。

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ヒムス県では、SANA(11月29日付)によると、治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、4人を殺害、17人の指名手配者を逮捕した。

諸外国の動き

ロシアのインテルファクス通信(11月29日付)によると、セルゲイ・ラヴロフ外務大臣は、シリアへの圧力に改めて反対の意思を示し、危機正常化に努力するよう求めた。

ラブロフ外務大臣は「今重要なのは、警告行動から手を引き、事態を政治的プロセスへと回帰させる試みである」と述べた。

また「現在シリアに対して措置を講じるよう求めている国も含めたすべての国が、イエメン情勢とはまったく異なる姿勢をとってきた。そこでは数ヶ月にわたってGCCが提案する平和的な関係正常化をめぐる交渉が行われたのに」と述べる一方、「シリアの問題に関してもこのような方法をとるべきである。なぜなら一部の国、とりわけアラブ連盟が行っている警告は問題を解決しないからである」と付言し、制裁に異議を唱えた。

さらにシリアへの武器禁輸を求める動きに関しては「不公正だ…。なぜなら武器禁輸措置はバッシャール・アサド政権にだけ及び、反体制勢力には適用されないであろうから」と却下した。そのうえで「武器禁輸措置がリビア軍にだけ適用され、反体制勢力が武器を入手できるなかで、リビアに何が起きたかを我々は知っている。フランス、カタールといった国々はこうした問題を恥ずかしげもなく云々していた」と述べ、シリアへの軍事制裁に改めて疑義を呈した。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣はトルコのカナル24(11月29日付)に対して、「もし弾圧が続けば、トルコはいかなるシナリオを採用する準備ができている。シリア政府は国民と和解する手段を見つけねばならない」と述べた。

また「数十万人が、イラク、レバノン、トルコ国境に流出している…。おそらく緩衝地域設置といった措置をとることを、トルコだけでなく国際社会すべてがおそらく求めている。我々はこうした事態になって欲しくないが、このシナリオについて検討し、準備をせねばならない」と述べた。

トルコのビンアリ・ユルドゥルム運輸大臣は、「状況が悪化すれば」イラク、ヨルダン経由をした湾岸諸国への輸送経路を確保するために支援することを明らかにした。

しかし、民間航空機のシリアへの乗り入れは継続し、シリアへの電力供給も制限しない、という。

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レバノンのニコラー・ナッハース経済通商大臣はナジーブ・ミーカーティー首相との会談後、「レバノンは(アラブ連盟の対シリア制裁決議に関する)決定によっていかなる影響も被らないだろう」と述べた。

ナッハース経済通商大臣は「現在、アラブ連盟が発した決議に従うと、同決議の規定が適用される取引がないことを見出した」と述べ、対シリア制裁決議がシリア・レバノン間の通商には適用されないとの見方を示した。

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米国務省のマーク・トナー副報道官は、アラブ連盟の制裁に関して「明確なメッセージであり、地域におけるアサドの隣人たちが彼の振るまい、そして彼の政府による民間人殺戮に…うんざいりしているということだ」と述べた。

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サウジアラビア外務省は、シリア在住のサウジアラビア国民に退避を勧告した。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は「シリアは人災へと突き進んでいる。EU、アラブ連盟、トルコはともに行動し、シリア国民を支援し続けばならない」と述べた。

AFP, November 28, 2011、Akhbār al-Sharq, December 2, 2011、al-Ḥayāt, November 29, 2011、Kull-nā Shurakā’, November 28, 2011, November 30, 2011、Naharnet.com,
November 29, 2011、Reuters, November 28, 2011、SANA, November 29, 2011などをもとに作成。

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