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アサド政権の動き
SANA(12月14日付)はイラン・シリアの経済協力フォローアップ委員会会合が閉幕したと報じた。
会合では、シリアからイランへの輸出品68品目の関税率を60%引き下げる優遇措置が合意された。
会合後、アーディル・サファル首相がイランのアリー・ネクザード運輸大臣と会談し、シリア・イラン関係の維持強化を確認したと報じた。
反体制(武装)運動
ロイター通信(12月14日付)は、元政治犯でアラウィー派のムハンマド・サーリフ氏が、同氏の親戚4人がヒムス県ヒムス市で過去数週間の間に武装したスンナ派によって殺害されたと語ったと報じた。
サーリフ氏によると、親戚はアラウィー派であったために殺害されたという。
サーリフ氏はシリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長が11月に発表した宗派主義的殺戮に反対する声明の作成にあたった人物。
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ハマー県では、複数の活動家によると、軍・治安部隊の発砲で13人が殺害された。
またシリア人権機構、シリア人権監視団によると、アシャーリナ村近くで離反兵が軍のジープ4台を要撃し、兵士8人を殺害した。
この要撃は、軍がハッターブ村で市民が乗った車を攻撃し、5人を殺害したことへの報復だという。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ラジャート高原で離反兵と軍・治安部隊が交戦し、後者の兵士3人が負傷した。
また軍・治安部隊がフラーク市に侵入し、逮捕・追跡作戦を行った。
このほか、ブスル・ハリール市、ジャースィム市ではシリア革命総合委員会によると、軍・治安部隊による砲撃が行われた。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ゼネスト解除のためにルクンッディーン区に治安部隊が多数展開した。
シリア革命総合委員会によると、バルザ区で、ゼネスト解除のために治安部隊が展開した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市で電話が不通となり、総合情報部施設近くで銃声が聞こえた。
ムウダミーヤト・シャーム市では、複数の活動家によると、治安部隊が家々に発砲した。
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イドリブ県では、サラーキブ市で活動家多数が逮捕された。
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ヒムス県とレバノンのベカーア県バアルベック郡アルサール地域の間の国境地帯で軍・治安部隊が市民に発砲し、レバノン人2人(羊飼い)、シリア人5人が負傷した。負傷者たちはレバノン領内に搬送された。
MTV(12月14日付)によると、シリア軍はレバノン領内で発砲した。
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ラタキア県では、SANA(12月14日付)によると、ラタキア市で武装テロ集団がしかけた爆弾2発が発見され、爆発物処理班が撤去した。
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シリア人権監視団は、14日の死者が24人に達したと発表した。
24人中13人はハマー県で、5人はヒムス県ヒムス市、3人がイドリブ県マアッラトミスリーン市、1人がダルアー県、1人がダイル・ザウル県、1人(イラク人)がダマスカス郊外県ザバダーニー市で殺害されたという。
反体制勢力の動き
シリア・クルド民主合意は、シリア・クルド国民評議会(シリア・クルド国民大会)への参加を表明した。
シリア・クルド国民評議会(シリア・クルド国民大会)に関してはhttp://www.ac.auone-net.jp/~alsham/2011_10/27.htmlを参照。
レバノンの動き
レバノンの3月14日勢力事務局は定例会合を開き、UNIFIL(フランス軍)の攻撃に関して、アサド政権が事件の背後にいると主張するとともに、「ヒズブッラーも攻撃の責任を負っている。なぜなら同組織は南部とUNIFIL展開地域の治安を掌握しているからだ…。同組織が疑わしい活動に気づかないことなどあり得ない」と非難した。
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レバノンのヒズブッラーとアマル運動はサイダー市で幹部会合を開き、UNIFIL(フランス軍)に対する攻撃を非難するとともに、関係当局による事件の調査と容疑者逮捕を求める一方、UNIFILに対して国連安保理決議第1701号に従い、引き続きレバノン国軍の支援を行うよう強調した。
諸外国の動き
イラン外務省のアラブ・アフリカ問題担当のフセイン・ホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン次官補は、カタールのハーリド・ビン・ムハンマド・アティーヤ外務担当国務大臣と会談し、シリア情勢に関して、国民の殺戮を支持しないとしつつも、アサド政権への圧力を拒否すると述べた。
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トルコ外交筋はAFP(12月15日付)に対して、キリス市にシリア人避難民を収容するキャンプ(総面積31.5ヘクタール)を建設中で、現在国境地帯に点在するキャンプで避難生活を送るすべてのシリア人を一カ所に収容すると述べた。
同報道によると、現在トルコで避難生活を送るシリア人の数は8,525人。
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国連の潘基文事務総長は記者会見で、シリア情勢に関して、「5,000人以上がシリアで命を落とした…。現状が続くことがあってはならない」と述べ、国際社会に対して行動を呼びかけた。
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米国務省でシリア問題を担当するフレデリック・ホフ氏は米議会の公聴会で、アサド政権を「生ける屍の集団」と形容、アラブ連盟のイニシアチブが失敗した場合、国際社会が体制による弾圧からシリア国民を保護するために行動すべきだと証言した。
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ヨルダンの首都アンマンで、シリア国民支援アラブ委員会(アリー・アブー・スッカル議長)が発足した。
同委員会はシリア国内での反体制運動の支援、シリア国民への救援などを目的とする。
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『フィナンシャル・タイムズ』(12月14日付)は、中化集団公司(シノケム)の傘下にあるエメラルド・エナジー社がEUの対シリア経済制裁に従うことに同意したと報じた。
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ガレイ・ザハル(イスラエル国防軍のラジオ)のアラブ問題記者ジャッキー・ホーギー氏はグローブス(12月14日付)に寄稿し、アサド大統領の指導下での民主化を国際社会が支持すべきだと述べた。
同記事によると、ホーギー氏は「彼(アサド大統領)が去れば、整然とその権威を継承する者などいないし、誰がどのように支配するかも分からなくなる…。アサドの退任を切望する者は、アラブ世界の心臓部分にあらたな不安定地点を生み出すことを主唱しているようなもので…そこにはリアルポリティクスが考慮されていない」と述べた。
また「シリアのバッシャール・アサド大統領が支援を必要としているのなら、西側は危機解決策を案出するため真摯な外交努力を行うべきだ」と付言した。
http://www.globes.co.il/serveen/globes/docview.asp?did=1000706768&fid=4111
AFP, December 14, 2011、Akhbar al-Sharq, December 14, 2011, December 15, 2011、The Financial Times, December 14, 2011、Globes-Onlines, December 14, 2011、al-Hayat, December 15, 2011, December 16, 2011、Kull-na Shuraka, December 14, 2011、MTV,
December 14, 2011、Naharnet.com, December 14, 2011、Reuters, December 14,
2011、SANA, December 14, 2011などをもとに作成。
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