Contents
アサド政権の動き
SANA(12月15日付)は、ダイル・ザウル県、ハサカ県、ラッカ県の部族長代表が、ダイル・ザウル市で大会を開き、アサド大統領の改革支持、挙国一致のための結束を確認したと報じた。
**
SANA(12月15日付)は、ナジャーフ・アッタール副大統領がエジプトのメディア関係者の使節団と会談し、シリアの反体制運動に関して、「改革や民主主義とは関係ない」と述べたと報じた。
**
人民議会は2012年度の予算を可決した。
SANA(12月15日付)によると、同予算は総額1,326,550,000,000シリア・ポンドで、前年度(835,000,000,000シリア・ポンド)より15.6%増。
**
ロイター通信(12月15日付)によると、西側の経済制裁により、シリア・ポンドが下落していると報じた。
同報道によると、公定レートは3月時点の1ドルあたり47シリア・ポンドから54シリア・ポンドに下落、また闇レートは1ドルあたり59~62シリア・ポンドとなっている、という。
また外貨準備高は反体制運動発生以前の170億ドルから数十億ドルとなっており、また2011年のシリアの輸入総額は19億ドルに達するという。
**
DPI(12月17日付)がカイロの複数の消息筋から得たところによると、アーディル・サファル内閣顧問のミハイル・サリーム・カースーハ氏がエジプトの著名な法律家とともに自家用ジェット機でカイロを訪問した。
『クッルナー・シュラカー』(12月17日付)によると、「ミハイル・サリーム・カースーハ」という名前は、総合上表局外務課のミシェル・カースーハ准将の外交パスポートに記載された氏名で、最近までフランスの大使館に勤務していたが、国外追放処分を受けたという。
同筋によると、カースーハ准将は、エジプトの左派やリビアのカッザーフィー政権支持者、さらにはシリア・ムスリム同胞団と接触し、アサド政権への支持強化、反体制勢力の弱体化の工作活動を行っているとされる。
反体制運動の動き
自由シリア軍のマーヒル・イスマーイール・ヌアイミー少佐は離反兵と軍・治安部隊との戦闘に関して、「軍であれ、治安機関であれ、シャッビーハであれ、民間人に対して武器を向けるあらゆる者に対して、我々は応戦し、可能な限りの損害を与える」と述べた。
また軍人への攻撃を行わないよう離反兵に呼びかけたシリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長の声明に関しては、「この体制の軍の基盤に関する情報不足」に基づく内容と非難した。
**
SANA(12月15日付)は、シリア外務省がムハンマド・バッサーム・アマーディー前大使(在スウェーデン、~2009年)を懲戒処分としたと報じた。
同報道によると、アマーディー前大使は、英『タイムズ』紙とのインタビューでアサド政権を批判、これを受けるかたちで監督検査中央委員会が2008年以降の前大使の執務状況を調査し、大使在任中の汚職と違反の事実をつきとめ、3月18日付で職務停止処分と予防的措置として資産凍結を決定したという。
これに対して、アマーディー前大使は、トルコのイスタンブールで声明を出し、アサド政権による弾圧を非難、革命諸勢力、調整者、書評議会のための「国民会合」の発足を宣言した。
前大使によると、この新組織には地元調整諸委員会などからなり、反体制勢力の多数派を代表しているという。
**
『イクティサーディー』(12月15日付)は、ヌーファル・アブドゥッラー人民議会議員が政党問題委員会に新党結成にかかる申請書を提出したと報じた。
新党の名は「民主前衛党」。「労働者人民勢力の同盟」をスローガンとし、平等、自由の実現をめざすとともに、自らを民族主義勢力と位置づけている。
新党結成にかかる申請は、シリア民主党、団結党に続いて3件目。
http://all4syria.info/web/wp-content/uploads/2011/12/Aliqtisadi.com-TaliaaPartyFounders.pdf
**
クルド国民行動憲章連立加盟組織、シリア・クルド・ムスタクバル潮流、革命運動家や調整諸委員会の代表が新たなクルド人の政治的ブロックを発足することで合意したとの声明が発表された。
この声明は、シリア・クルド民主合意によるシリア・クルド国民評議会(シリア・クルド国民大会)への参加表明に対抗した動きと見られる。
**
シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、アサド政権の存続に言及することは、国民の要求と革命の目的からの逸脱であるとの姿勢を示し、「マイノリティ、マジョリティといった概念を廃することをめざす」と述べた。
反体制(武装)運動掃討
ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ムサイフラ町・ジーザ町・ブスラー・シャーム市間の交差点にある軍・治安部隊検問所で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦し、軍・治安部隊の兵士が少なくとも27人殺害された。
**
ハマー県では、SANA(12月15日付)によると、ハマー市で、当局が、武装テロ集団の武器、弾薬、爆発物、電子機器などを大量に発見・押収した。
**
ヒムス県では、SANA(12月15日付)によると、ヒムス市で、ムーサー・リファーイー退役空軍准将が武装テロ集団に誘拐された。
**
ダマスカス郊外県では、SANA(12月15日付)によると、マダーヤー町で武装テロ集団がしかけようとしていた爆弾が爆発し、テロリスト1人が死亡、3人が負傷した。
**
シリア人権監視団によると、イドリブ県、ヒムス県、ハマー県で軍・治安部隊と離反兵の戦闘で民間人、軍人合わせて33人が死亡した。
**
地元調整諸委員会は、反体制運動が10ヵ月目に突入した12月15日、フェイスブック(http://ar-ar.facebook.com/LCCSy)で犠牲者数を発表した。
それによると、死者数は5,216人で、うち1,872人がヒムス県で殺害され、968人が離反兵だという。
諸外国の動き
ロシアと中国はシリア情勢に関する安保理決議案を国連安保理メンバー各国に回付、同決議を審議するための緊急会合を呼びかけた。
複数の消息筋によると、緊急会合は16日に開催される予定。
ロシアのヴィタリー・チュルキン国連代表は記者会見で決議案の内容に関して詳述しなかったが、複数の消息筋によると、それは、アサド政権による弾圧を非難し、制裁を科そうとするに西側諸国の決議に対抗するもので、アサド政権を含む「すべての当事者」の暴力を非難、その停止を呼びかける内容、だという。
なお制裁に関しては言及されていない。
西側消息筋が『ハヤート』(12月16日付)に語ったところによると、EUはロシアに対して、シリアに関する国連決議採択の必要を力説したのに対し、ロシアは外国の介入を認めないとの条件でこれを受け入れたという。
**
フランスのアラン・ジュペ外務大臣は訪問中のリビアのトリポリで、「日々行われる人道に対する犯罪」を改めて非難し、アサド大統領に退任を求めた。
フランス外務省のベルナルド・ヴァレロ報道官は、ヒムス県とレバノンのベカーア県バアルベック郡アルサール地域の間の国境地帯でのシリア軍による市民への発砲(14日)に関して、「シリアの当局はレバノンの主権と領土を尊重せねばならない」と警鐘を鳴らした。
**
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「By All Means Necessary」と題した報告書を発表した。
同報告書は軍・治安部隊の離反兵約60人へのインタビューをもとに、アサド政権による弾圧の実態を批判的に評価している。
http://www.hrw.org/sites/default/files/reports/syria1211webwcover_0.pdf
**
イラーキーヤ・ブロックのウサーマ・ヌジャイフィー代表は、テレビでのインタビューで、シリア情勢打開に向けたマーリキー首相のイニシアチブを「前向きでない」と非難、アラブ連盟のイニシアチブを支援すべきだと述べた。
AFP, December 15, 2011、Akhbar al-Sharq, December 15, 2011, December 17, 2011、DPI, December 17, 2011、al-Hayat, December 16, 2011、al-Iqtisadi, December 15, 2011、Kull-na Shuraka, December 15, 2011, December 17, 2011、Naharnet.com,
December 15, 2011、al-Quds al-‘Arabi, December 15, 2011、Reuters, December 15, 2011、SANA, December 15, 2011などをもとに作成。
(C)青山弘之All rights reserved.