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アラブ連盟監視団
アラブ連盟監視団の第1陣がミウハンマド・アフマド・ムスタファー・ダーニー団長とともに、ヒムス市のバーブ・アムル地区を視察した。
ダーニー団長は同日中にダマスカスに戻ったが、使節団は引き続き現地で調査を続ける。
バーブ・アムル地区は数日前から軍・治安部隊と離反兵(脱走兵)から構成される自由シリア軍の戦闘が激しく行われたとされる地区。
監視団が同地区に入ると、「自由シリア軍のみが民間人を護る」、「国際的保護を望む」といったシュプレヒコールが住民によって連呼された、という。
また女性が監視団に近寄り、「逮捕者(の釈放)を望んでいる」と陳情した、という。
監視団はこれに先だって、ガッサーン・アブドゥルアール・ヒムス県知事と会談し、ヒムス国立病院を訪問した。
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アラブ連盟監視団のムハンマド・アフマド・ムスタファー・ダーニー団長は『ハヤート』(12月28日付)に対して、監視団の目的が「監視であり、査察や真相究明ではない」と述べた。
ダーニー団長はまた、監視団のなかに偽名を使った人物が入り込んでいるとの一部衛星テレビ局の報道(26日)に関して、「ねつ造された情報」と否定した。
そのうえで「メディアに報告書の詳細をリークすることはない。我々はアラブ連盟に報告書を提出する」と付言した。
反体制(武装)運動
SANA(12月27日付)は、ダマスカス大学の2年生の学生アンマール・バールーシュ氏が校内で発砲し、フサイン・ガンナーム氏とハドル・ハーズィム氏が死亡、複数が負傷したと報じた。
これに関して、シリア人権監視団は当初、電気機械工学部内で親体制派の学生らの発砲により死傷者がでたと発表した。
しかしその直後、バールーシュ氏が反体制運動支持者だったと訂正したうえで、出身地のダマスカス郊外県ランクース市では、「軍部隊が11月27日に軍事作戦を行い、村人18人を殺害した」、「12月8日に同学部内で行われた反体制デモに参加した学生らに暴行・拷問を加えた親体制派の学生に発砲した」と同氏の殺人を正当化するような発表を行った。
一方、AFP(12月27日付)は、地元調整諸委員会が、タイスィール・ハーズィム氏、ハドル・ハーズィム氏、フサイン・ガンナーム氏の3人の学生が「治安部隊の無差別発砲」により、同学部内で殺害されたと報じていた。
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『ハヤート』(12月28日付)は、シリア人権監視団など複数の活動家の話として、アラブ連盟監視団のヒムス市到着と時を一にして、シリア軍・治安部隊が「撤退、ないしは政府施設に身を隠した」と報じた。
同記事はまた、シリア人権監視団の話として、約70,000人が市内(大時計広場)で反体制デモを行ったのに対して、治安部隊が催涙ガスを使用して強制排除を試みたが、「治安当局がデモ参加者に発砲しなかったのはデモ開始以降では稀なことだった」と付言した。
一方、シリア人権監視団や地元調整諸委員会によると、ヒムス県(6人)、ダマスカス郊外県(ドゥーマー市)など各地で軍・治安部隊の弾圧により35人が殺害された。
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SANA(12月27日付)によると、イドリブ県ジスル・シュグール地方のトルコ国境付近で、シリア領内への潜入を試みた武装テロ集団と治安部隊が交戦し、武装テロ集団メンバー多数が死傷し、大量の武器弾薬が押収された。
また県アリーハー市内で武装テロ集団がしかけた爆弾2発が爆発、旅客バスが巻き添えとなり、6人が死亡、4人が負傷した。
一方、ヒムス県では、ムフターリーヤ村を通るガス・パイプラインに対して、武装テロ集団が爆弾をしかけて破壊、150,000立方メートルのガスが漏出した。
またラッカ県サウラ市で当局が大量の密輸武器・弾圧を押収した。
さらにSANA(12月28日付)によると、ハマー県カフルヌブーダ町で武装テロ集団が住民8人を殺害、5人を誘拐した。
アサド政権の動き
SANA(12月27日付)は、シリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会が会合を開き、行政府、司法府に関する条項についての審議を行ったと報じた。
反体制勢力の動き
シリア情報表現の自由センターは声明を出し、2009年12月27日に逮捕された女性ブロガーのタッル・マルーヒー女史が自らの釈放を求め無期限のハンストを開始したと発表した。
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シリア国家建設潮流は声明を出し、アラブ世界および諸外国のメディアに対して、シリア国内での取材を敢行し、殺戮を停止させるよう呼びかけた。
レバノンの動き
マロン派のビシャーラ・ラーイー総大司教はビキルキーでシリアのタルトゥース市からの使節団と会談し、「あなたたちとともに、我々はシリアが必要としている憲法の抜本改革の実施を待ち望んでいる。そして私は(アサド)大統領がそれを3月に開始するということを知っている」と述べた。
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ムスタクバル・テレビ(12月27日付)は、北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方でレバノン人3人がシリア領からの発砲によって射殺されたと報じた。
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マルワーン・シルビル内務大臣は、ファーイズ・グスン国防大臣が27日の閣議で、ベカーア県バアルベック郡アルサール地方におけるアル=カーイダの潜伏に関する調査の報告を行うと述べた。
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ベカーア県バアルベック郡アルサール地方の市議会使節団がナジーブ・ミーカーティー首相と会談し、同地方の対シリア国境地帯への軍の展開を陳情した。
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『サフィール』(12月28日付)によると、アドナーン・マンスール外務大臣は、ナジーブ・ミーカーティー首相が「いかなるアラブ諸国の内政にも干渉することを避けるため」、アラブ連盟監視団にレバノン人メンバーの参加を見合わせたことを明らかにした。
諸外国の動き
ドイツの緑の党は、反体制活動を行っている党員のフェルハード・アフマー氏が自宅で2人の男に暴行を受け、負傷したと発表、事件の背後にシリアのムハーバラートがいると疑った。
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ヒューマン・ライツ・ウォッチは、アサド政権が逮捕者400人から600人を12月21、22日にアラブ連盟監視団が視察できない立ち入り禁止区域へと移送したと発表した。
http://www.hrw.org/news/2011/12/27/syria-detainees-hidden-international-monitors
AFP, December 27, 2011、Akhbar al-Sharq, December 28, 2011、al-Hayat, December 28, 2011、Kull-na Shuraka’, December 27, 2011、al-Mustaqbal Channel, December 27, 2011、Naharnet.com, December 27, 2011, December 28, 2011、Reuters, December 27, 2011、al-Safīr, December 28, 2011、SANA, December 27, 2011などをもとに作成。
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