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アラブ連盟監視団
アラブ連盟監視団は前日に引き続き、もっとも激しい弾圧が行われていると反体制勢力が主張してきたヒムス県ヒムス市のバーブ・アムル地区、バーブ・スィバーア地区の視察を行った。
ヒムス市バーブ・アムル地区の住民は当初、シリア軍士官が動向する連盟監視団との面談を拒否し、監視団は一旦同地区を去った。
しかしその後、監視団は同地区に入り、視察を行った。
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アラブ連盟監視団のムハンマド・アフマド・ムスタファー・ダーニー団長は、ヒムス市の状況に関して、「疲弊した状態の地区はあるが、監視団は恐ろしい状況を見ることはなかった」と述べた。
また戦車ではなく装甲車を数両見ただけだとしてうえで、「現在までの事態は落ち着いている」と付言した。
一方、ヒムス市を訪問したアラブ連盟監視団メンバー4人が逮捕されたとの一部報道に関しては、市街地での発砲を受けて、監視団が隣接する建物に退避しただけだと述べ、否定した。
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ヒムス市バーブ・アムル地区を訪問した監視団に対して、住民は、治安当局に殺害されたとされる遺体を見せ、その窮状を訴えようとした。
アラブ連盟監視団の対応(ダーニー団長の発言など)に対して、ヒムス市住民の一人は、「彼らは自分たちが見た真実を認めようとしない。おそらく感情を表に出さないよう命令されているのだ。彼らは人々の話に熱心に耳を傾けようとしていない」と批判した。
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アラブ連盟監視団は、ヒムス市に続いて、ダルアー県、イドリブ県、ハマー県の視察を開始した。
反体制運動掃討
シリア革命総合委員会によると、アラブ連盟監視団の到着に合わせてハマー市アースィー広場などでデモが発生、治安部隊が催涙ガスや実弾を用いて強制排除を試み、子供1人を含む7人が殺害されたという。
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ヒムス県では、シリア革命総合委員会によると、ヒムス市で子供1人を含む6人が殺害され、1人が拷問で死亡したという。
一方、SANA(12月28日付)によると、ヒムス市バーブ・アムル地区で当局が武装テロ集団の保有していた大量の武器・弾薬を押収した。
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アレッポ県では、シリア革命総合委員会によると、2人が殺害された。
うち1人はデモ参加者への発砲を拒否した兵士だという。
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イドリブ県では、シリア革命総合委員会によると、3歳児1人を含む4人が殺害された。
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タルトゥース県では、シリア革命総合委員会によると、バーニヤース市でゼネストを解除しようと治安部隊が商店などを攻撃したという。
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ダマスカス郊外県では、シリア革命総合委員会によると、マアダル村に50輌以上の軍車輌が展開したという。
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ダイル・ザウル県では、シリア革命総合委員会によると、ダイル・ザウル市内で激しい砲撃が行われたという。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ヒルバト・ガザーラ町・ダーイル町間で離反兵が軍・治安部隊を要撃し、軍・治安部隊4人を殺害したという。
一方、SANA(12月28日付)によると、武装テロ集団がダルアー県とスワイダー県にある発電所2カ所に爆弾を仕掛け、電力供給を停止させた。復旧までに1週間はかかる、という。
またSANA(12月28日付)によると、ヒルバト・ガザーラ町近くで武装テロ集団が軍の工科部隊を襲撃し、応援に駆けつけた治安部隊との交戦で、武装テロ集団メンバー1人が死亡、複数が負傷・逮捕された。治安治安部隊兵士1人も死亡した。
アサド政権の動き
アサド大統領は、トルコ製品に対して30%の関税を課すことを定めた2011年法律第28号(27日に人民議会で可決)を発動した。
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SANA(12月28日付)などシリアの各メディアは、「最近の事件に関与したものシリア人の血にその手を染めていない」755人が釈放されたと発表した。
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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は、国連事務局に書簡を提出し、そのなかで、「武装テロ集団によりシリア軍・治安部隊兵士が2,000人殉職したことを明らかにし、潘基文事務総長が武装テロ集団を非難しないことが、民間人、軍人に対するその攻撃と殺戮行為を助長している」と非難した。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会のアフマド・ラマダーン氏(事務局メンバー)がロンドンで記者会見を行い、アサド政権がヒムス市での「虐殺」によりアラブ連盟イニシアチブを実質的に無に帰したと批判した。
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シリア・ムスリム同胞団が声明を出し、アラブ連盟監視団の視察活動が行われているなかでのアサド政権による弾圧の継続を批判した。
レバノンの動き
北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方で、シリア軍がライダーニー通行所の54メートルレバノン両側で発砲し、レバノン人1人、シリア人2人が射殺された。
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サアド・ハリーリー前首相の事務所は、ワーディー・ハーリド地方でのシリア軍による3人の殺害に関して、「レバノン国民およびレバノン領に対するシリアの最近の侵犯」の責任はナジーブ・ミーカーティー首相にあると非難した。
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ナジーブ・ミーカーティー首相は、「アル=カーイダがアルサール地方にいるとの確固たる証拠はない」と述べ、ファーイズ・グスン国防大臣の発言内容を否定した。
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しかしワリード・ダーウーク情報大臣は、グスン国防大臣がアル=カーイダのアルサールおよびシリア領への潜入に関する情報を治安当局から得たと述べ、この問題を審議するためミーカーティー内閣に対して最高国防委員会の召集を求めた。
諸外国の動き
フランスのベルナール・ヴァレロ外務省報道官は記者会見で「(アラブ連盟)監視団の短期間の訪問では、ヒムスの状況を調査できない…。彼らの滞在は、この都市の血塗られた弾圧継続を抑えることができない」と非難し、監視団の自由な移動とすべての住民との接触を呼びかけた。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は記者会見で「シリア高官と常に接触し、アラブ連盟監視団への完全なる協力を行うよう、そして可能な限りの自由を与えるよう呼びかけている」と述べた。
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ドイツ外務省報道官は、緑の党のフェルハード・アフマー氏襲撃(12月27日)に関して、シリア大使を呼び出し事情を聴取したと発表した。
Akhbar al-Sharq, December 28, 2011、AFP, December 28, 2011、al-Hayat, December 29, 2011、Naharnet.com, December 28, 2011、Reuters, December 28,
2011、SANA, December 28, 2011などをもとに作成。
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