国連安保理でシリア情勢への対応を協議するための会合:米国は来年予定されているアサド政権下での大統領選挙を認めないと発言(2020年12月16日)

国連安保理ではシリア情勢への対応を協議するための会合が開かれた。

会合では、ゲイル・ペデルセン・シリア問題担当国連特別代表が2020年を振り返り、3月以降、イドリブ県一帯地域での戦況が比較的落ち着いており、制憲委員会(憲法制定委員会)も再開されたとしたうえで、2021年には全土停戦、憲法起草などでの進展をめざすと述べた。

制憲委員会については、シリア政府代表が「テロとの戦い」などを骨子とする8項目からなる「国民諸原則」を、反体制派代表が主権と領土の保全、国際法遵守などを骨子とする23項目からなる原則を、市民社会代表が難民の安全且つ自発的機関などを骨子とする数項目を提示し、協議が続けられていることが概説された。

**

一方、ケリー・クラフト米国連大使が、シリア政府の正統性を改めて否定したうえで、同政府のもとで行われる大統領選挙の結果を承認することはないと発言した。

また、国連が主催する制憲委員会(憲法制定委員会)については、シリア政府が2021年に実施が予定されている大統領選挙を準備するための時間稼ぎに利用し、国連安保理決議第2254号の履行を免れようとしていると非難、「違法な大統領選挙を通じてアサド体制がシリア国民への軍事的勝利を実現することを国際社会は許さない」と断じた。

また、ドイツのクリストフ・ホイスゲン国連大使、ロシアと中国がシリア政府を支援することで国民の殺戮や苦難に関与していると非難、責任を追及した。

**

これに対して、ロシアのワーシリー・ネベンジャ国連大使は、西側諸国が、軍事的手段、資金・武器の供与、戦闘員派遣などを通じて、シリアでの体制転換に依然としてめざしていると非難、シリアへの経済政策が「テロとの戦い」を続けるシリア軍の弱化をもたらしていると指摘した。

AFP, December 17, 2020、ANHA, December 17, 2020、al-Durar al-Shamiya, December 17, 2020、Reuters, December 17, 2020、SANA, December 17, 2020、SOHR, December 17, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.