トルコ軍がシリア政府支配地域と「決戦」作戦司令室支配地域の境界地帯で軍事防衛線の設置を終えるも、両者の砲撃戦は続く(2021年1月28日)

『シャルク・アウサト』(1月28日付)は、トルコ軍がシリア軍の進行を阻止するため、シリア政府支配地域と「決戦」作戦司令室支配下のいわゆる「解放区」の境界地帯で設置を進めていた軍事防衛線が完成したと伝えた。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

反体制派の「監視追跡ユニット」の責任者は『シャルク・アウサト』に対して、次のように述べている。

トルコ軍は、防衛戦、あるいは軍事的に言うところの「鋼の盾」を、反体制派とシリア軍・イランの民兵の接触線に沿って設置し終えた。これはイドリブ県や、反体制派の支配下にあるハマー県やアレッポ県西部の農村地帯からラタキア県北西部のクルド山地方に至る地域を防衛するためだ。これにより、トルコ軍兵士6,000人、重砲、多連装ロケット砲、レーダー、通信傍受車輌、さらには200輌以上の戦車、装甲車、兵員輸送車など軍事車輌約7,500輌が、軍事戦略拠点70カ所以上に展開した。

イドリブ県南部のザーウィヤ山地方だけでも、20のトルコ軍拠点が設置された。主要な拠点としては…、ザーウィヤ山地方とハマー県西部のガーブ平原を見渡すことができるアイユーブ丘、シャンナーン村の拠点2カ所、サルジャ村の2カ所、イドリブ市南から約30キロ離れたザーウィヤ山地方のイフスィム村、バーラ村、ルワイハ村、バルユーン村、ダイル・サンバル村、ファルカヤー村、マアッラータ丘、クークフィーン村、タルアーン村、マアッルザーフ町、ナフラヤー村の11のトルコ軍拠点がある。また、トルコ軍はこれらの軍事拠点の設置と合わせて、アレッポ市とラタキア市を結ぶ街道沿いに複数の拠点を設置した。ムウタリム村、キヤーサート村、ブサンクール村、ムハムバル村に重要な拠点がある。

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一方、スハイブ・イドリビーを名乗る活動家によると、トルコ軍はM4高速道路のタルナバ村から、ナイラブ村、ジスル・シュグール市南部を経由し、ハマー県ガーブ平原のカストゥーン村に至る地域、そしてラタキア県のアイン・フール村に至る地域に軍事拠点を設置したという。

また、ムアイイド・フサインを名乗る活動家によると、トルコ軍はさらに、アレッポ県のダーラ・イッザ市、タワーマ村、シャイフ・アキール山一帯に多連装ロケット砲や戦車を新たに配備したという。

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一方、シリア人権監視団によると、シリア軍は「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のルワイハ村一帯、カドゥーラ村を砲撃した。

対する「決戦」作戦司令室は、シリア政府の支配下にあるダーディーフ村、ミラージャ村を砲撃した。

AFP, January 28, 2021、ANHA, January 28, 2021、al-Durar al-Shamiya, January 28, 2021、Reuters, January 28, 2021、SANA, January 28, 2021、SOHR, January 28, 2021などをもとに作成。

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