北・東シリア自治局の内部治安部隊(アサーイシュ)はマンビジュ市一帯で発生したシリア民主軍の徴兵に抗議するデモを弾圧、1人を殺害、自治局に近いメディアは「シリア軍と住民が衝突した」と虚偽報道(2021年5月31日)

アレッポ県では、SNN(5月31日付)、オリエント・ニュース(5月31日付)、バス・ニュース(5月31日付)、シリア人権監視団などによると、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるマンビジュ市と周辺の農村で、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の徴兵に抗議するゼネストとデモが発生した。

バス・ニュースによると、ゼネストとデモは、シリア民主軍が徴兵と称して学生、教師、職員を不当に拘束し続けていることへの抗議行動が複数の活動家によって呼びかけたのを受けたもの。

シャーム・ネットワークが複数の地元筋の話として伝えたところによると、マンビジュ市、同市近郊のフドフード村、カルサーン村、アウン村、ジャート村、ハイヤ村、アブー・キルキル町など15カ町村以上の住民が呼びかけに応じた。

これに対して、北・東シリア自治局の内務治安部隊(アサーイシュ)が強制解除を試み、デモ参加者に対して実弾を発砲、シリア人権監視団によると、フドフード村で、若者1人が死亡、3人が負傷した。

また、バス・ニュースが複数の地元筋の話として伝えたところによると、マンビジュ市では、若者数百人が中心街のサラブ地区で抗議行動を行う一方、アウン村、ジャート村、フドフード村、カラ・クーザーク橋に至る街道を、タイヤを燃やすなどして封鎖した。

アサーイシュは同市でも、実弾を発砲して強制排除を試み、参加者多数(バス・ニュースによると6人)を拘束した。

シリア人権監視団によると、犠牲者が出たことで、過激化した一部参加者は、アサーイシュの検問所複数カ所を襲撃したという。




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一連の騒動に関して、北・東シリア自治局に近いANHA(5月31日付)は、「一部住民とシリア軍兵士が交戦し、複数の犠牲者が出た」と伝えた。

また、北・東シリア自治局傘下のマンビジュ市および同郊外民主民政評議会が声明を出し、6月1日深夜までの48時間の外出禁止令を発出した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(5月31日付)によると、ダイル・ザウル民政評議会(北・東シリア自治局)の支配下にあるカシュキーヤ村で、「人民諸派」がシリア民主軍の拠点に仕掛けた爆弾が爆発し、兵士1人が負傷した。

またヒサーン村で、「人民諸派」がシリア民主軍の車輌に仕掛けた爆弾が爆発し、兵士4人が負傷した。

さらに、シリア人権監視団によると、ジュナイナ村のモスクの前で、正体不明の武装集団が宗教関係者1人を銃で撃って殺害した。

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ハサカ県では、SANA(5月31日付)によると、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるタッル・タムル町近郊のイスカンダルーン村近くをパトロール中のシリア民主軍の部隊を「人民諸派」が襲撃し、兵士2人を殺害した。

AFP, May 31, 2021、ANHA, May 31, 2021、Basnews, May 31, 2021、al-Durar al-Shamiya, May 31, 2021、Orient News, May 31, 2021、Reuters, May 31, 2021、SANA, May 31, 2021、SNN, May 31, 2021、SOHR, May 31, 2021などをもとに作成。

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